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05/05/10 安野光雅「散語拾語

 連休中に書棚を整理していましたら、何冊か再読したい本を見つけました。
 今回はその中の一冊安野光雅(あんの・みつまさ)さんの「散語拾語」を紹介します。

 この本は、「科学朝日」と言う科学雑誌に連載されたもので、老齢化した脳には理解できない部分も多々ありますが、ヨロヨロと紹介したいと思います。
 「科学朝日」は、その後「アイアス」と名前を変えましたが2000年12月号で休刊しています。

 安野光雅さんは、1926(大正15)年島根県津和野の生まれで、師範学校を卒業後、美術の教員として上京し、だまし絵の手法で描かれた「ふしぎなえ」 と言う絵本でデビュー。緻密な構成で、優しい雰囲気の絵が特徴です。

 また、読書家で博学な方で、特にこの本のような科学分野にも明るい画伯です。風貌は少しお腹が出て、サスペンダー姿が特徴的です。

 安野さんのアンテナに引っかかった科学的な話題を集めた本です。

◆まずは算数を。

◇495
 任意の3つの数字をイメージしてください。3つの数字の内、2つまでは同じでも良い(例えば332等)が3つとも同じ(例えば333等)はダメです。
 選んだ3つの数字を使ってできる一番大きな数から、一番小さな数を引きます。
 引き算の答えの3つの数字(2桁になった場合は「0」を加える)を用いて前記と同様の引き算を繰り返します。

 例えば、1、1、0を選んだ場合は、
 110−011=099 → 990−099=891 → 981−189=792 → 972−279=693 → 963−369=594 → 954−459=495
 こうして、最後は495になります。

 4つの数字、5つの数字の場合はどうなるのでしょうか?頭の体操のどうでしょうか?

◆懐かしい遊びについていくつかの話題を。

◇四目並べ
 碁盤を使った遊びに五目並べと言うのがあります。
 二人が、白石と黒石を交互に並べていって、縦横斜めに自分の石(白または黒)が五個並べば勝ちという遊びです。
 それを縦にしたようなゲームがあります。(下手な絵ですが、右の絵のようなもの)
 縦に6個の窓、横に7個の窓が開いたボードがあります。交互に上から白または黒のチップを落として、同じ色が4個(縦、横、斜めの何れかに)連続して並 んだ方が勝ちです。
 私は100円ショップで買ったというのを見せて貰ったことがあります。結構難しいのです。
 パソコンのゲームにもありますので興味のある方は一度やってみてください。
 重力付四目並べ(http://stardustcrown.com/game/gravityfour.html

◇竹の遊び
 私の子供の頃遊んでいた遊びが紹介されていました。
 青だけを幅1cm〜1.5cm、長さ25cmほどの竹の扁平な棒を12本作る。表は青、裏は白。
 この竹の棒を片手で握り、上に投げて手の甲に受け取り、一本ずつ落として行って全部同じ向き(表ばかり、裏ばかり)に落とせれば勝ちみたいなゲームでし た。
 手の甲から竹の棒を一本ずつ落とすのは結構難しいものでした。
 
◇露店のお絵かき道具
 私は買って貰ったことがなかったですが、プラスチックかセルロイドのおもちゃでした。
 @透明な四角い板(赤かったように記憶しています)が、円形に切り抜かれていて円の内側がギザギザのギヤ状になっています。
 Aもう一つは円形で、外側にギザギザのギヤ状になっています。
 この円盤@を、Aの切り抜かれた中に入れて、@の円盤に開けられた穴に鉛筆を立ててくるくると回していくと右図のような図形がかけていけます。
 何とも不思議な気がしていました。

◆哲学的な!?

◇惜別
 来客を駅まで送り、電車が来てお別れを言ったのに、故障か何かの理由で電車は中々発車しない。
 この別れを惜しむひとときを「寝たきり老人」の延命医療や看護に置き換えて考えると何かが見えてくると、書かれています。
 医者は「発つ人」のために、この発車を際限なく遅らせることを良いことだと信じる立場をとることになる。
 因みに安野さんは尊厳死協会に加入されているそうです。

◆雑学

◇踏み絵
 一般に「強制はしない」という言い方には「絶対に従え」という言い方にも増して脅迫の気分が感じられる。
 体重は何キロか、兄弟は何人いるかといった物理的な設問に比べて、少しでも思想的な設問は一種の「踏み絵」にあたるのである。

◇歌詞
 ”台寝 津合うべる ピン出ん 微出る バス出い 詣で 酒取れん 下駄いると・・・”
 何の歌詞か分かりますか?

 ”ダイネ ツアウベル ピンデン ヴィーデル ヴァスデイ モウデ シユトウレン ゲタイルト・・・”
 第九を歌おうとする、ドイツ語が全く分からないおばあちゃんのために、お孫さんが翻訳・音訳したものです。

 斉藤寝具店を思い出しました。

◇空港への誘導看板
 私は自動車に乗りませんので不案内ですが、安野さんは以下のように主張されています。
 空港への進路が右折なら、誘導看板の飛行機のシンボルマークも右を向いている方が分かりやすい。ヨーロッパではそうなっているが、日本では飛行機のシン ボルマークが一定の方向をむいているそうです。

◇数学を学ぶ理由
 数学者の秋山仁さんは、数学を学ばせる理由は計算ができるようになるだけではなく、次のようなものがあると言われているそうです。
 1.物事を筋道を立てて考えること(倫理的思考能力)
 2.複雑な事柄を分類・整理し、真実を見抜く(分析能力)
 3.データや観察資料を基に、結論を予測したり、結果を推理できる(推理能力)
 4.いろいろな局面で、真実と嘘とを見極められる(判断能力)

 安野さんは、
 「4の判断能力、言いかえれば一応疑ってかかる感覚と能力は、いまを生きるにあたり必須の能力ではあるまいかと愚考する。1、2、3の能力はそのために 動員されると考えてもいいくらいである」
 と言われています。

 同感ですね。もう少し柔らかい頭の内に数学を学べば良かったと後悔しています。
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