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05/07/07 安野 光雅「天は人の上に人を作らず」

 今回は、童話屋という出版社の「小さな学問の書」シリーズの一冊で、安野光雅 さんの「天は人の上に人を作らず」という本を紹介します。

 「小さな学問の書」シリーズと銘打っており、文庫版で100ページ足らずのボリュームで全編ルビが振ってありますので、小学生を対象にした本かもしれま せんが、興味を持って読んでみました。

 著者の安野光雅さんは多才な方で、このような分野でも実力発揮です。

 この本では、トマス・ジェファーソンが書いたアメリカの独立宣言(1776年)、リンカーンの南北戦争末期にゲティスバーグでの演説(1863年)、福 澤諭吉の「学問のすすめ」(1872年)の言葉、そしてワシントン大行進でのキング牧師の演説(1963年)と、自由と平等についての格式高い言葉を引用 して、自由と平等の大切さを述べられています。

◇アメリカ独立宣言
 「すべての人間は生まれながらにして平等であり、創造主によって一定の奪いがたい権利をあたえられ、そのなかには生命、自由、および幸福の追求が含まれ ていることを、われわれは自明の真理であると信じる。」(猿谷要訳)

◇リンカーンの演説
 「(前略)この国に、神のみむねのもと、新しい自由が生まれますように。そして、人民の、人民による、人民のための政体が、地上より滅びないようにしな ければなりません。」

◇学問のすすめ
 下級武士の家に次男坊として生まれた諭吉を、父は「お寺に奉公に出して坊主にしよう」と言っていたそうです。その父の心情を「察して独り泣くことがあり ます。私の為に門閥制度は親の敵で御座る」と言ったそうです。

 「天は人の上に人を作らず、人の下に人を作らずと言えり」に続いて、このように書かれているそうです。
 「しかし、現実は平等ではない。その違いは何か、それは、学問に励んで物事を知る人は上になり、学問をしない人は下になるからだ。だから、上に行きたけ れば学問をしなければならない。と言っても古文を読み、詩をつくるなどの優雅な学問はあまり意味がない。読み書き算盤のほか、地理、経済、物理など、実生 活に直接結びつく学問を身につけることが大切だ。」(引用:安野さん訳)

◇キング牧師の演説
 「私には夢がある。私の四人の小さい子ども達が、肌の色ではなく内なる人格で評価される国に住める日がいつか来ると いう夢が。」

 「私には夢がある。いつの日か、谷間という谷間は高められ、あらゆる丘や山は低められ、でこぼこしたところは平らにされ、曲がりくねったところは真直ぐ にされ、そして神の栄光が啓示されて、ひとみなともにそれをみるときがくるであろう。」

 原文(I Have a Dream)はこちらにあります。

 安野さんは、キング牧師の「私には夢がある・・」のフレーズを「わたしは、この言葉を声にだして読むことができない。読もうとすると、いつも声がふるえ てしまうのだ。」と言われています。
 人を感動させる言葉の力なのですね。

 同じように、人を感動させる文章を紹介します。

◇日本国憲法
第11条
 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に 与えられる。

第12条
 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。また、国民は、これを濫用してはならないのであっ て、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負う。

第13条
 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大 の尊重を必要とする。

第14条
 すべての国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。(以下 略)

◆この原稿を書いている時に、ロンドンで 同時多発テロが起こったと報道されています。
 被害の規模は不明ですが、大きな被害が出ませんように祈るだけです。
 テロに対するアメリカとその同盟国のもぐら叩きのような、テロ封じ込めに実効性はあるのでしょうか?叩けば叩くほど、報復のテロ行為は陰湿、大規模にな るのではないでしょうか。
 
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