松本清張さんの作品に「日本の黒い霧」と言うのがあります。
日本は1945(昭和20)年8月14日のポツダム宣言の受諾から、52(昭和27)年4月28日のサンフランシスコ条約の締結までの間、連合国軍最高
司令
官総司
令部(GHQ:General Headquarters/
Supreme Commander for the Allied
Powers)と呼ばれる実質的にはアメリカ軍人と、民間人によって占領(支配)されていました。
「日本の黒い霧」とは、そのGHQの占領時代に起こった不可解な事
件を取り上げた清張さん渾身のドキュメンタリーで
す。そ
の中の主な事件は、以下のとおりです。
◆下山国鉄総裁謀殺論
初代国鉄総裁・下山定則が、49(昭和24)年7月5日出勤途上に行方不明になり、翌6日未明、轢断死体で発見された。自殺・他殺を含め結論の出ていな
い
事件です。
公表されることのなかった「下山事件捜査最終報告書」(下山事件白
書)では、自殺と結論付けられている。
◆「もく星」号遭難事件
52(昭和27)年4月9日、羽田発福岡行きの日本航空機「もく星号」が離陸後20分で消息を絶ち、翌10日朝、米軍機が三原山」に墜落機体を発見し
た。
当時の日本の制空権はアメリカ軍に制されていた。
捜索隊が着くまでの現場に、軍服姿の白人の姿が写っている写真などもありミステリアスな事故(事件)です。
◆白鳥事件
52(昭和27)年1月21日札幌市警の白鳥警部が何者かに射殺された。共産党員の村上国冶さんたちが逮捕された。唯一の物的証拠とされた試射した弾丸
とは捏造されたものだった。
◆帝銀事件
私の生まれた2週間後の48(昭和23)年1月26日、帝国銀行椎名町支店に現れた男が「近所で集団赤痢が発生したので、予防薬を飲むように」と言葉巧
みに薬を飲ませ12人を殺害した。
画家の平沢貞道さんが逮捕された。
◆推理・松川事件
49(昭和24)年8月17日未明、福島県松川町で東北本線上り列車が脱線転覆し乗務員3名が死亡した。枕木とレールを固定する犬釘が抜かれ、レールの
継目部のボルト・ナットが緩められていたための脱線転覆だった。
国鉄の労働者と東芝松川工場の労働者が逮捕された。
この事件は最高裁まで争われ、最高裁が高裁への差し戻し判決をし、61(昭和36)年仙台高裁で全員無罪判決となり、その後の最高裁で検察側の上告が棄
却され全員無罪が確定している。
書棚を整理していて、書棚の奥から「葬られた夏−追跡・下山事件」を見つけ出し再読し、事件発生の7月6日頃に紹介しようと稿を起こしてはいたの
ですが、未だに書ききれておりません。
下山事件は50年を経ても未だに自殺か他殺かも明らかになっていません。今なお、自殺・他殺の二つの主張があります。
<他殺説>
・東大古畑教授の司法解剖による「死後轢断」鑑定〜他殺?
・捜査2課・東京地検・朝日・読売新聞が支持
<自殺説>
・慶応大中舘教授・名古屋大小宮教授・東京都監察医八十島博士(事故現場で最初に遺体を監察)による古畑鑑定への反論
・「生体轢断」=自殺説
・捜査1課・毎日新聞が支持
◆下山事件関連書籍
下山事件について書かれた書籍は下記以外にもたくさんあります。一部を紹介します。
右端のマークは私が読んだものです。
著
者
|
書
名
|
発
行元
|
発
行年
|
|
堂
場肇 |
下
山事件
の謎を解く |
六
興出版社 |
1952
|
|
大
野達三
岡崎万寿秀 |
謀
略 |
三
一新書 |
1960
|
○
|
礫
川全次 |
下
山国鉄
総裁怪死事件 |
批
評社(「戦後ニッポン犯罪史」所収) |
1995
|
|
福
田洋 |
下
山事件 |
河
出書房新社(「現代殺人事件史」所収) |
1999
|
|
佐
久間哲
夫 |
下
山事件 |
悠
飛社(「恐るべき証人−東大法医学教室の事件簿」所収) |
1991
|
|
金
井貴一 |
小説・下山事件―謀略の鉄路 |
廣
済堂 |
1999
|
|
佐
藤一 |
下山・三鷹・松川事件と日本共産党 |
三
一新書 |
1981
|
|
佐
藤一 |
下山事件全研究 |
時
事通信社 |
1976
|
○
|
下
山事件
研究会編 |
資
料 下
山事件 |
み
すず書房 |
1969
|
|
関
口由三 |
真
実を追
う 下山事件捜査官の記録 |
サ
ンケイ新聞社出版局 |
1970
|
○
|
平
正一 |
生
体れき
断 下山事件の真相 |
毎
日学生出版社 |
1964
|
|
古
畑種基 |
法
医学の
話 |
岩
波新書 |
|
○
|
松
本清張 |
日
本の黒
い霧 |
文
藝春秋 |
1960
|
○
|
錫
谷徹 |
死の法医学 下山事件再考 |
北
海道大学図書刊行会 |
1983
|
|
宮
川弘 |
下
山事件
の真相 |
東
洋書房 |
1968
|
|
宮
川弘 |
下
山事件
の真相1〜2巻 |
鎌
倉芸林 |
1977
|
|
矢
田喜美
雄 |
謀殺下山事件 日本の熱い日々 |
講
談社 |
1973
|
○
|
森
達也 |
下山事件 |
新
潮社 |
2004
|
○
|
日
下圭介 |
遠すぎた終着―下山事件四十七年目の夏 |
祥
伝社 |
1995
|
|
鈴
木市蔵 |
下山事件前後 |
五
月書房 |
2003
|
|
斎
藤茂男
|
夢追い人よ −斎藤茂男取材ノート1
|
築
地書館
|
1989
|
|
|