05/07/27 時給900円の乗務員
JR西日本の福知山線脱線事故から3ヶ月が経ちました。
JR西日本は、毎月25日を「安全の日」として事故の風化の防止に努めるとか、引き続きテレビCMを自粛するとか、殊勝なことを言っております。
しかし、その殊勝な顔の裏で、車掌の一部を契約社員にする計画を進めているようです。
新たに採用する契約社員に、在来線特急など車掌が2〜3人乗務する列車に乗務させるそうです。
ドアの開閉や非常ブレーキの操作など安全にかかわる業務はさせないとのこと。
その理由は、団塊の世代の大量退職により人員不足に備えることと、人件費の削減を図る狙いだと報道されています。
「車掌に契約社員導入を計画 安全に疑問の声も JR西日本」(asahi.com2005年07月25日)
団塊の世代が大量に退職して人員不足になることは、何十年も前から分かっていたことです。
人員の不足は、向うからやってきたのではなく自らの施策として、高齢者の首切りを進めてきた結果ではないですか。
JR西日本の01年3月期の「年次報告書」には下記のように書かれています。
「まず高齢層に偏った従業員の年齢構成に着目し、早期退職優遇制度を1996年より進めてきましたが、その結果、対象社員の60〜70%がこの制度を選
択しました。昨年には制度適用者に対する加算金額を積み増し、さらなる社員数減少を視野に入れています。」
正に確信犯です。
高齢の社員は辞めてくださいと首を切っておきながら、人員不足になるから契約社員を雇って車掌の業務をさせますとはよく言えたものです。
前掲のasahi.comの記事では、
「(前略)ノウハウのない素人をいきなり新規採用するのでは合理化の側面が強く、安全・サービスの両面で十分な効果があげられないだろう。」等言う、識
者の生ぬるいコメントを載せています。
事故直後の安全を追求する姿勢はどこにいったのでしょうか?
マスコミとはこの程度の感性しか持っていないのですね。
彼らの狙いの第一は報道のとおり、人件費の抑制でしょう。
安全を蔑ろにして、利益追求に走った結果が今回の大事故の原因だと言うことが理解できていないのでしょうか。
二つ目の狙いは、契約社員という雇用関係の不安定な物言わぬ(物言えぬ)労働者を雇うことにより、労働者全体を物言わぬ労働者に変えることにあると思い
ます。
前にも紹介しましたが、アシストの社長ビル・トッテンさんは、自身のWebサイト(Our World)の中で「脱線事故は民営化が原因」と指摘されています。
一部引用させていただきます。
「上場企業にとって一番の競争は同業の競合他社よりよい製品やサービスを安く提供することではなく、株式市場で上場している他の会社より多くの利益を早
く出すことである。製品開発には投資が必要だが、それにはお金と時間がかかる。
したがって最も短期間に利益を上げる方法は、値段を上げるか、開発投資や経費を削減するか、またはもっとも利益率の高い製品やサービスに絞ることであ
る。」
事故の犠牲者や家族に対して、また利用者に対して「安全第一」と神妙な顔をしていても、彼らの最大の関心事は、如何に利益を上げて株主に利益をもたらす
かです。
衣の下の刃が見えた報道でした。「隠すより現れる」とはこのことでしょう。
事故現場近隣の企業に謝金を持って回ろうが、慰霊祭の日程を作ろうが、経営幹部の目に映るのは犠牲者や利用者の顔ではありません。
因みに、阪急電車では駅の管理業務は子会社に委託されていますし、車掌
の一部は契約社員(子会社の)だそうです。
一時、働き先が決まっていなかった時に「パートの車掌になりませんか?」と知り合いの阪急の社員に紹介されたことがありました。たしか時給が900円台
だったと記憶しております。
ファーストフード店の店員と同じ位の時給の乗務員が乗る電車には乗りたくないものです。
京阪も同様の車掌が乗務しているようです。
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