05/09/08 JR西日本・福知山線脱線事故の中間報告
国土交通省「航空・鉄道事故調査委
員会」は9月6日にJR西日本の福知山線脱線事故の中間報告を公開しました。
正式には「西日本旅客鉄道株式会社福知山線列車脱線事故に係る鉄道事故調査について」(経過報告)という文書で、本文13ページ、付図19ページから
なっています。
早速読んでみましたので紹介します。
中間報告ということで事実関係が淡々と語られており事故原因に迫るような記述はありません。
図表は報告書から転載しています。
◆酷い損傷
脱線直前の速度は110Km/hを超えていたようです。事故車両(特に1両目、2両目)の図面を見ると、脱線そしてマンションへの激突、その衝撃の大き
さが迫ってきます。改めて亡
くなられた方のご冥福をお祈りします。
◇「死者は1両目43人、2両目45人と特定 宝塚線事故」(朝日新聞 2005年09月06日10時20分))
兵庫県警捜査本部の調べで、犠牲者107人のうち88人の方が1両目、2両目に乗っておられたとのこと。
未だに14人の方が入院治療中で、内お一人は重体だそうです。1日も早い回復をお祈りします。
◆運転士の資質
◇始発駅の宝塚駅に入線時に速度オーバーで自動列車停止装置(ATS)が2度も作動し非常ブレーキで停止していた。
・警告(停止信号現示情報)を受信しても「確認」をせずに非常ブレーキが掛かっていた。
・「絶対停止情報」を受信して、直ちに非常ブレーキが掛かっていた。
◇伊丹駅で70mのオーバーランをしていた。
70mという長さは電車の3.5両分にあたり1編成(7両)の電車の半分がホーム外に出ていたのです。
半端なオーバーランではないのです。これも図面を見て改めて驚きました。
◇このオーバーランの距離を「まけてくれ」といったという報道がありました。
車掌は70mのオーバーランを8mと報告していたそうです。
◇ブレーキ
遅れを取り戻そうとして事故現場手前の塚口駅手前で125Km/hの速度となっていた。この時普通(常用)ブレーキをかけて少し(120km/h以下ま
で)減速したが、その後脱線直前までの40秒間(1380m移動)ブレーキをかけていなかった。
直前のブレーキも何故か常用ブレーキだった。電車は110km/hで脱線している。
◆車掌の資質
◇放出駅から同じ電車に乗務していた車掌は、宝塚駅、伊丹駅でのATSの作動やオーバーランを異常な運転とは感じなかったのでしょうか?
この車掌は車掌歴15年のベテランです。
◇脱線した列車が対向線路をふさいだ場合など、対向する列車に停車を知らせるための防護無線が正しく操作されていなかった。
この電車では防護無線機の電源は「常用」から「緊急」に切り替える必要があったのですが、操作がされていなかった。
また、信号炎管なども使用していなかった。
対向してきた特急・北近畿は、防護無線機の発報信号を受信しておらず(当然ですが)、現場近くの踏み切りの特殊信号発光機の信号を確認して、およそ
100m手前で停車しています。
事故直後に「事故を目撃した近所の女性が踏み切りの非常ボタンを押した」との報道がありましたが、この女性の行動がなかったらもっと大きな事故になって
いたのです。
◆速度計
速度計の誤差は120Km/h時に4Km/h低く表示されていたそうです。
◆ATS−P
事故発生時、ATSーPがついていないと話題になっていましたが、電車にはATS−Pの車上機が積載されていて、非常ブレーキ作動などを契機にその後の
動作が記録されていました。
宝塚駅での入線前後と、伊丹駅でのオーバーランから脱線直前のスピード、位置や時刻が記録されていたそうです。
事故原因の究明には重要なデータとなるのでしょう。
上のグラフはそれを再生したものだそうです。
◆建議書
中間報告とあわせて、最終報告を待つことなく講ずるべき対策を取るようにとの建議書(西日本旅客鉄道株式会社
福知山線における列車脱線事故に関る建議)が出されています。
◇ATSの機能向上
制限速度超過時に電車を自動停止させる装置(ATS−P)を曲線区間などの取り付けるなどの機能向上を図る。
◇防護無線機の電源の「常用」から「緊急」に切り替えのマニュアル化などが必要。
◇速度計の精度確保
などが建議されています。
◆「40秒間ブレーキ操作なし 宝塚線脱線で中間報告」朝日新聞 2005年09月06日09時53分
◆「空白1.4キロ 同僚運転士が「記録」読み解く JR脱線」朝日新聞 2005年09月06日
◇正常の中に異常が交錯する「まだら運転」
◇「なぜ非常ブレーキを使わなかったのか理解できない」
◇「伊丹駅を発車後、高見運転士は車掌にオーバーランの『過少申告』を依頼した。車掌が総合指令と無線でやりとりするのに聴き入り、目の前の風景が目に入
らなくなっていたのではないか」
◇高見運転士は脱線事故の約25分前にも、始発の宝塚駅で大きなミスを起こしていた。
◇「ホームまでわずかな距離で、居眠りの可能性さえ疑われる。もし乗客がいれば、ポイント通過の衝撃で倒れる人が出て、問題になったはず」(50代運転
士)
◇伊丹駅でオーバーランを起こし、車内電話で車掌に行き過ぎた距離を「まけても
らえませんか」と依頼し、車掌は聞き入れた。
◇事故直前の高見運転士が心に「二つの隠蔽」を抱えていたことに異常運転のカギがある。
◆「JR前大阪支社長を参考人聴取 尼崎事故で兵庫県警」朝日新聞 2005年09月06日06時02分
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