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05/11/04 救いようのない・JR西日本

 昨日の休日は、天候不良との天気予報に甘えて自転車に跨らずに、マスコミ文化人や馬鹿タレントがはしゃいでいるテレ ビをダラダラと見て、深酒をして引き こもりの一日を過ごしてしまいました。
 時間があるから、整理や駄文書きが進むわけではないですね。時間に余裕があると却ってだらけてしまいます。自戒、自戒です。

 JR西日本は、5月の福知山線脱線事故を深く反省し、駅の掲示板やホー ムページに社長名の下記のような文章を掲出しています。
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 弊社は今 回の事故を踏まえ、あらためて安全を最優先する企業風土を構築す るため、5月末に策定いた しました「安全性向上計画」を着実に推し進めているところであります。(部分、アンダーラインは引用者)
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 彼らのいう「安全を最優先する」とはどういうことなのでしょうか?
 反省もなく、安全を二の次にする「企業風土」は相変わらずのような問題が発生しています。

◆速度オーバーでも止まらない所が30ヶ所
 JR西日本が「アーバンネットワーク」と呼んでいる京阪神の主要路線で自動列車停止装置(ATS―P)の設置を進めています。

 5月の脱線事故では、ATSの設置が事故を防ぐのだと全能の機械のように言われていました。
 早く、ATSを設置していればあの事故はなかったとも。

 だが、ATS−Pを設置してもかかわらず、電車は止まらないそうです。

 ATS−P設置済みの352ヶ所のうち30ヶ所で、決められた速度より早い速度で電車が進入してもATS−Pが機能せず電車は止まらないことが分かった そうです。

 逆に、低速でもブレーキがかかる箇所が66ヶ所あり、併せて96ヶ所の設定に誤りがあったそうです。

◇JR西日本が公表した不具合の箇所

路 線名
正 しい設定
高 い設定
低 い設定
合 計
東海道線(琵琶湖線)
36
0
0
36
東海道線(JR京都線)
41
2
0
43
山陽本線(JR神戸線)
64
9
1
74
大阪環状線
18
1
0
19
桜島線(JRゆめ咲線)
3
0
0
3
阪和線
22
0
0
22
関西空港線
1
1
0
2
関西線(大和路線)
18
4
12
34
片町線(学研都市線)
20
13
18
51
JR東西線
1
0
13
14
奈良線
13
0
0
13
福知山線(JR宝塚線)
19
0
22
41
合計
256
30
66
352
  *1.JR西日本のプレスリリースよ り作表しています。
  *2.発表時資料には福知山線の「低い設定」22ヶ所は「低い方に設定だから安全上問題ない」として「0」としていました。
     しかし、事故調査委員会は「低く設定されても、不要な急ブレーキがかかって乗客によくないし、運転士にも心理的に悪い影響を与える可能性があ る」との見解を示していますので「22」を掲載しています。
  *3.JR西日本は路線名に琵琶湖線などの愛称を付けていますが正式路線名を表記しました。

◇路線図
 上記表の路線を図示してみました。
 京阪神間の主要部分にいたるところのATS−Pが正しく動作しない設定になっていたのです。
 
 *1.JR西日本のプレスリリース記事より作図(路線名は正式名称で表記)

◆自主点検でなく事故調査委員会からの指摘により発覚
 9月に事故調査委員会から指摘がありミスが見つかったために、ATS−P設置路線で点検をして96ヶ所の設定ミスが発見されたそうです。

 JR西日本は、5月の事故で安全のための「総点検」を実施したのではなかったのでしょうか?

◇JR西日本のコメント
 JR西日本・広報室「運転士のミスをバックアップするべきATSの機能が正常でなかったことは重大な問題であり、申し訳ありません」

 一つも誠意の感じられないコメントです。
 5月の脱線事故の犠牲者の遺族や被害者は、この言葉をどう聴かれたのでしょうか?

  「新ATSに設定ミス、速度超過でも減速せず JR西日本」(朝日新聞 2005年11月01日15時33分)

◆JR西日本のプレスリリース
 「ATS-P地上子データの設定誤りについて」JR西日本・プレスリリース(05/11/01)

 航空・ 鉄道事故調査委員会より、JR東西線におけるATS-Pの動作記録に関して資料要求があり、当社が調査したところATS-P地上子の設定が計画値 と異なる設定となっている箇所があることが判明いたしました。このため、ATS-P整備線区全線にわたる調査を実施しました。調査が完了しましたので、計 画値と異なる設定となっていたことが判明した箇所などについてお知らせします。
 
詳細
1 調査結果
○ 調査対象箇所 2,287箇所
○ 曲線(対象箇所 129箇所)
・ 計画値より高い設定となっていた箇所
 28箇所
・ 計画値より低い設定となっていた箇所 44箇所
 
○ 分岐器(対象箇所 223箇所)
・ 計画値より高い設定となっていた箇所
 2箇所
 
○ 行止り線(対象箇所 18箇所)
・ 全箇所、正しく設定されていました。
 
○ 信号機(対象箇所 1,917箇所)
・ 全箇所、正しく設定されていました。
 
 
2 改修状況
○ 計画値より高い設定となっていることが、判明した箇所については、直ちに改修しました。
○ 計画値より低い設定となっていることが、判明した箇所については、早急に改修します。
 
3 原因と対策
(1) 原因 ・ 関係箇所間の連携不足
・ 技術継承上の問題
 
(2) 対策
・ 関係箇所の役割と責任所在を明文化するなど仕組みの構築 
・ 関係社員への教育の充実
・ 保安設備検討委員会(仮称)の設置

◆原因と対策
 いたずらを見つかって怒られた子供の反省文のようですね。
 原因は「技術継承上の問題」、対策は・・・、何度同じ言葉で釈明するのでしょうか。

 もう、JR西日本のこんな言葉を誰も信じてはいないでしょうが、私も含めて、こんな鉄道でも利用しなければならない人がたくさんおります。
 どうして自衛すればよいのでしょうか?

◆事故調査委員会
 今回の問題発覚の直接の要因となったのは、5月の脱線事故を調査している事故調査委員会の調査により、事故電車が事故現場とは別のカーブを通過時に ATS−Pが作動してブレーキが掛かっていたことにより、該当ATS−Pは速度設定が5Km低く設定されたいたことが判明したために、JR西日本に調査を 指示したそうです。

 因みに、JR東日本ではATS―Pの設置後に、設定速度が正しいかどうかを検査していて同じようなミスはおきていないという。

 「国交省がATS設定の調査を指示 JR西のミスで」(朝日新聞 2005年11月01日20時09分)

◆間違いも低いほうなら良いでしょう?!
 先に書きましたように、JR西日本のプレスリリースでは、福知山線の22ヶ所の設定ミスについて「設定が低い方に間違っていたのだから安全上問題ない」 と96ヶ所の設定誤りを、74ヶ所と発表していました。

 事故調査委員会からの指摘を受けていながら、福知山線の工事は続行していたそうです。

 「中桐宏樹・首席鉄道事故調査官は、『本来の速度より高く設定するのはもってのほかだが、低く設定されても、不要な急ブレーキがかかって乗客によくない し、運転士にも心理的に悪い影響を与える可能性がある』と指摘。『安全性に問題はないと判断した』とするJR西日本とは異なる見解を示した。」(朝日新聞 から引用)

◆怠慢?
 また、報道によりますと、福知山線の設定誤りが判明した後も他の路線の設定をチェックせず、9月上旬に事故調査委の指摘でATS−P設置路線の調査をし た後も約2カ月間にわたって公表してこなかった。

 「他線区も(誤りがある)とは思い至らずチェックしなかった。今になってみれば他もそうだったんだなと思う」
 「調査に時間がかかった」
 等と言っているようです。

 たまたま、今まで事故がなかったから良かったようなものです。

 「新ATS、宝塚線でも設計ミス 把握後も工事続行 JR西」(朝日新聞 2005年11月02日)

◆人心の刷新が必要ではないでしょうか?
 JR西日本の社長を含む幹部は、事故調査の目処が立つまで退陣しないと言って居座っていますが、このような状況では中間管理職も含めて人心の一新が必要 ではないでしょうか?

 現体制に「安全」を求めるのは無理なようです。
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