05/11/15 社員の規律違反と懲戒解雇
社員の規律違反とその処分としての懲戒解雇について二つの記事を紹介します。
◆運転士が子供を運転室に。会社は懲戒解雇の方針(東武鉄道)
東武鉄道は、運転士が子供を運転室に入れて運転していたとして、運転士を懲戒解雇する方針だそうです。
11月1日、30歳代の運転士が運転する電車の先頭車両に妻と子供が乗車しており、駅で停車中に長男(3)が騒いだために運転室のドアを開けると長男が
入り込んできたが、発車時刻が迫っていたのでそのまま一駅間運転した。
当然ですが、社内規定では運転中に第三者を運転室に入れることが禁じられているそうです。
9日、東武鉄道は事実関係を関東運輸局に報告したそうです。
「運転室に3歳の長男 東武野田線の運転士を解雇へ」(朝日新聞 2005年11月10日)
前記報道の後、東武鉄道に「処分が重過ぎる」「子供がかわいそう」などの意見が1500件近く届いているそうです。
東武鉄道は「安全運転を使命とする鉄道事業者としてあってはならない。入念な社内調査に基づいた処分」と方針を変えないそうです。
JR西日本の尼崎事故の報道でおなじみの鉄道評論家の川島令三さんは「運転室には絶対に人を入れてはいけないが、確かに処分は重いと思う」と話しておら
れるそうです。
「わが子入れた運転士解雇…同情の声殺到 東武鉄道、方針は変えず」(共同:埼玉新聞
2005年11月12日)
インターネット新聞JANJANでも議論がされています。
「運転室が『禁断の区域』になった時代」(JANJAN 05/11/13)
◇会社の懲戒解雇が厳しすぎる、懲戒権、解雇権の乱用だと言う意見が多いようですね。
◇一般的には、就業規則などの社内規定類は法律と違い、運用に幅を持たせていますから、同じ規律違反を起こしても穏便に済まされる場合もあると思います。
この運転士は他にも規律違反を犯していたのでしょうか?
或いは会社から睨まれていたのでしょうか?
◇インターネットで検索する範囲では、労働組合からの意見が見えませんが、会社が「懲戒権」を乱用しているのであれば組合員を守るために戦わねばなければ
なりません。
◇会社の手際のよさが目に付きます。
1日に発生した事案を、9日には「入念な」社内調査を終え、法務担当や労働基準監督署などとも調整した(と思われます)上で、処分を決定し監督
官庁に届け出ているとは電撃的な速さです。
懲戒解雇の解説はウィキペディアの記事を参照ください。
◇この運転士は未だ解雇はされておらず、現在自宅謹慎中とのことでした。
◇続報はこ
ちら。
◆乗務中に写真撮影、新幹線車掌を懲戒解雇に(JR東日本)
上越新幹線に乗務中に、車掌室(最後尾の運転室)で運転装置や車窓の風景を私物のデジカメで撮影し、趣味のホームページに公開していた車掌が04年3月
に解雇されていたことが、11月15日の各紙に報道されていました。
28歳の車掌は、上越新幹線に乗務中の01年から3年間に写真を撮影し、「鉄道ファン同士の情報交換を目的とした」自分のホームページに公開していたの
をJR東日本の社員が見つけ会社に通報した。
JR東日本は「職務専念義務に違反している」として、04年3月に懲戒解雇していたそうです。
「乗務中に運転台撮影、新幹線車掌を懲戒解雇 JR東日本」(朝日新聞 2005年11月15日)
◇何故一年以上前の出来事が今頃明らかになったのでしょう?
そして、何故各社が報道しているのでしょうか?
◇今、報道する意味は何なんでしょうか?
・鉄道会社はこんなにキチンと社員を処分していますよ。
・鉄道会社には未だにこんな社員がいるのですよ。
・鉄道会社の懲戒権の使用は少し問題がありますよ。
・東武鉄道の懲戒解雇事件もあったし、JR東日本も同様ですよ。
etc.
◇この車掌の場合は、3年間も継続的に業務違反をしていたのですから「懲戒解雇」に同情的な意見はないのかもしれません。
◇3年間も乗務中に、私的なことをしていたことが何故見つからなかったのでしょうか?
上越新幹線の車掌は一人乗務なのでしょうか?
車掌の日ごろの言動からは何も匂わなかったのでしょうか?
◇この車掌の上司の処分についての報道はありませんが、どうなっているのでしょうか?
3年間もこのようなことを許していた上司も同罪以上でしょう。
もっと早く発覚していれば、この車掌も懲戒解雇されるほどではなかったのかもしれません。
◇時事通信(05/11/15)によりますと、車掌のホームページを見た社員から通報を受けた会社(新潟支社)
が、このホームページを削除したと報道されています。
これは報道の誤りではないでしょうか?
会社にホームページを削除する権限はあるのでしょうか?
◆懲戒解雇
ウィキペディアには「懲戒解雇」に
ついて下記のように書かれています。
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懲戒解雇(ちょうかいかいこ)とは、事業主が労働者の責めに帰す理由で解雇することを指す。重責解雇とも言われる。例えば、長期の無断欠勤、会社の金の
横領、重大な犯罪行為を理由に解雇する場合のことである。
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紹介した二つの報道は、どちらも鉄道会社の社員の懲戒解雇に係るものでした。
懲戒解雇は会社(使用者)の伝家の宝刀であり、余りにも安易に使われているのではないかとの印象を持ちました。
極端な例では、私用電話や文房具の私的使用は、窃盗や業務上横領で告発し、有罪となれば懲戒解雇することができます。
内部告発者、戦う労働組合員や役員、労働組合を作ろうとする労働者等々、使用者の気に入らぬ人間の首を斬るために懲戒権が乱用される
ようなことは許されません。
労働組合にキチンと監視してもらいたいものですが、労使協調路線をとる労働組合には期待できないのでしょうか?
◆東武、運転士はやっぱり解雇
(05/11/16追記)
東武鉄道は15日、運転室に子供を入れて電車を運転した運転士に解雇を正式に通知したそうです。
懲戒解雇の方針が報道されてから、同社には2000件近い意見が寄せられたそうです。その殆どは「解雇は厳しすぎる」「子供が傷つく」などと運転士に同
情的な意見で「厳しい処分もやむをえない」との意見は150件程度だったそうです。
「『運転室に長男』の運転士、東武が解雇通告 意見2千件」(朝日新聞 2005年11月16日)
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