05/12/05
西村議員事件を社説に見る
西村議員の弁護士法違反などの事件を各新聞社はどのように見ているのか
と社説を見比べてみました。
社説の紹介の前に、事件の続報を紹介します。
◆民主党の危機管理能力はゼロ?
元職員の非弁活動は昨年から問題視されていて大阪府警警備部(公安?)が昨年から捜査していたようです。今年になってから西村議員側にも刑事事件として
立件すると通告があったそうです。7月には元職員らが送検されています。
民主党は4月の時点で、元職員の非弁活動の情報を得て西村議員から事情を聞き「問題なし」と判断していたそうです。
そのときに「徹底的」調査していれば、西村議員を公認するようなヘマをすることもなかったでしょうに。
危機管理能力ゼロの組織ですね。
「民主、前原代表発言を訂正 西村議員逮捕でドタバタ」(大分合同新聞 05/11/28)
◆非弁活動の「報酬」は3億円超!
元職員の非弁活動による保険金受け取り総額は10億円を上回り、元職員と西村議員に渡った「弁護士報酬」は3億円を超えるそうです。
二人(西村議員と元職員)の間で「報酬」は受け取り保険額の10%と決めていたそうですが、元職員は30〜50%を要求していて二人の間で揉めることが
あったそうです。
「報酬率」や取り分を予め決めていたとは「名義貸し」ではなく西村議員が「主犯」の事件のように思われます。
「鈴木容疑者の報酬3億超、西村真容疑者との約束破る」(読売新聞 2005年11月29日
◆議員会館で犯罪!!
西村議員は、議員会館内の議員事務所で「受任」状況の報告や現金の受け渡しを行っていたそうです。
私たちの税金で、私たちのために働くように、安くて、便利の良い環境を提供している議員会館内で、犯罪行為がされていたことは由々しきことではないで
しょうか。
覚せい剤所持・使用容疑で逮捕された民主党の小林憲司前衆議院議員も、議員会館で覚せい剤を使用していたそうです。そういえば議員会館は、警察も簡単に
は踏み込めない犯罪者にとって都合の良い「聖域」だったのですね。
「鈴木容疑者、議員会館で結果報告 西村真悟議員らに」(朝日新聞 05/11/29)
◆直筆の領収書
当初は厚顔にも「知らぬ、存ぜぬ」繰り返していた西村議員が、直筆の領収書を出していたことがわかったそうです。
「非弁活動、西村議員に3千万円余 報酬受け取り直筆領収書」(中日新聞 05/11/29)
◆社説
各紙の社説を並べてみます。(五十音順)
◇本人と民主党の責任(朝日新聞)
西村議員の犯罪は「悪徳弁護士」のやり口だと指摘し、弁護士、国会議員としての「任に堪えない」ので議員を辞職すべきだと書いています。
そして、尖閣諸島への上陸、核武装発言、暴力的団体とのつながりなど、このような資質を持つ西村議員を公認した民主党の責任を問うています。
民主党に自浄能力はあるのでしょうか?
「西村議
員逮捕 民主党の罪も深い 」(朝日新聞 05/11/29社説)
◇京都新聞
国会議員、弁護士、二つのバッジへの国民の期待を裏切った罪は深いと指摘し、元職員の逮捕時にも「(非弁活動は)まったく知らなかった」といいながら、
6年間に43回もの非弁活動をし、報酬を元社員と折半していたことにはあきれ返ると。
民主党の不祥事が一向に止まらない、そして党としての深刻さも伝わってこないとも書かれています。
西村議員は民族主義者で自分を「士(さむらい)」と思っていたことでしょう。代議「士」、弁護「士」、併せて3つの「士」を裏切っていたのですね。せめ
て、潔くお縄を受け、真実を語り、罪を償うような「士(さむらい)」であってほしいものです。
「西村議員逮捕 2つのバッジが汚れた」(京都新聞 05/11/29社説)
◇河北新報
西村議員の議員辞職は当然のことであり、潔く捜査に協力し違法な手段で得た金の流れの解明する義務がある。
右翼団体に所属していた経歴を持つ元職員に大切な弁護士印や銀行口座まで管理させていたことには驚く。
尖閣諸島への上陸、核武装関連発言や銃撃事件の主犯として逮捕されて人物との交際など曰くつきの人物を先の総選挙で公認、当選させた民主党は結果責任を
自覚しなければならない。
「西村真衆院議員逮捕/言語道断の議員が多過ぎる」(河北新報 05/11/28社説)
◇産経新聞
「『名義貸し』という形式的行為とはいいながら、法律違反を厳しく
追及する弁護士のうえ、高い品位が求められる現職の国会議員ならば、逮捕も当然であろう。」
何故か、突っ込みが弱いように読んでしまいました。「形式犯」だそうです。
北朝鮮による拉致事件の議員連盟の事務局長としての幹事長も勤めており家族会の信頼も厚いが、まずは潔く議員辞職が筋だと。
「西村議
員逮捕
まず潔く辞職するのが筋」(産経新聞 05/11/29主張)
◇中国新聞
歯に衣着せぬ物言いの国会議員の犯罪とはあきれてしまうと。
西村議員はあの小生意気な態度と発言の裏で、犯罪を仕切っていたとは本当にあきれ返りますね。
2000年以降だけでも現職の国会議員の逮捕は西村議員も含め8人だそうです。
「『政治とカネ』だけでなく、人間としての品位まで問われるような犯罪の数々。政治家の倫理観が問われている。」と。
「西村真議員の逮捕 「辞職」でけじめつけよ」(中国新聞 05/11/29社説)
◇中国新聞
身柄拘束されてもなお議員の立場に留まることを本人も民主党執行部もどう考えているのか。
政権交代可能は二大政党の片方に期待する人の期待を裏切った。
西村議員を諌めなかった、また事件発覚後の民主党の対応は本人と同等の責任がある。
「一段と厳しい民主の冬」
(中日新聞 05/11/29社説
◇日本経済新聞
西村議員は過去に国会議員・政治家としての資質を疑わせる行為をしてきた。
銃撃事件を起こしていた反社会的組織との交際、核保有是認発言、そして『おまえが強姦(ごうかん)されとってもオレは絶対に救ったらんぞ』等という、女
性蔑視以前の人間としての品位であった。
こうした人物を除籍処分だけで事足れりとする民主党は、その責任を国民に説明する必要がある。
「西村議員は辞職すべきだ」(日本経済新聞 05/11/29社説)
◇毎日新聞
構造計算書の偽造をした建築士と同様に社会が期待する職業倫理を裏切った罪は深い。
民主党が西村議員に対して除籍処分と議員辞職勧告としても「異分子」のしっぽ切りで済ませようとするのは勘違いである。
先の選挙後に不祥事が相次いでいるのは、個人の問題で済ますことができない。議席数が欲しいために当選しそうな人を安易に公認してきたからではないか。
公認に際しての審査のあり方、党員の規律も含めて総点検すべきである。
「西村議員逮捕 民主党はタガを締め直せ」(毎日新聞 2005年11月29日社説)
◇読売新聞
社会正義の実現を使命とする弁護士として許されない行為であり、非弁活動の背景にも国会議員としての信用を悪用していた。
民主党の事件に対する認識の甘さも露呈している。
犯罪で得た金が、政治資金に使われるなどあってはならないことである。
「弁護士失格だけでは済まない」(読売新聞 05/11/29社説)
各紙の社説の要約をして見ましたが、真意が伝わっていないかもしれませ
ん。詳細は原文を参照ください。
各紙の論点は概ね下記のようです。
◇国会議員、弁護士としてあるまじき犯罪である。
◇国会議員の職を辞すべきである。
◇このような人物を公認してきた民主党の責任も重大である。
◇国会議員としての資質に問題のある議員が多い。
私は上記観点は当然として、他に下記のような観点も忘れてはならないと思います。
◇選挙制度
西村議員は先の総選挙で個人名での投票する小選挙区で落選し、政党名で投票する比例区で復活当選した議員です。
そのような議員が、民主党から除籍され党籍を失ったにも関わらず議員の職に留まることができるような選挙制度に問題があると思います。比例区当選議員は
党籍を失うと自動的に失職する制度に修正する必要はないでしょうか。
◇共同正犯事件
この事件は、元職員と西村議員の関係が主従のように報じられている部分がありますが、主犯・西村、従犯・元職員或いは、共同正犯事件ではないでしょう
か。
事をあいまいにしてはいけないと思います。続報を見ていると「主犯・西村真悟」が正しいようですね。
◇マスコミの責任
このような資質の人間を煽ててマスコミ(特にテレビ)に出していたマスコ
ミの責任が問われないのは何故でしょうか?
出演していた番組で私の知っているのは、テレビ朝日系の「ビートたけしのTVタック
ル」、大阪読売テレビの「たかじんのここまで言って委員会」です。
傲慢な西村議員の発言を垂れ流していた番組の製作者や、番組の構成に口を挟むことができるのではないかと思われる冠番組の司会者の責任も大きいのではな
いかと思います。
未青年のタレントが飲酒や喫煙をしていたのとは訳が違います。番組は西村議員の政治的信条を垂れ流していたのですから。
◇大阪弁護士会
大阪弁護士会は元職員の非弁活動を昨年の大阪府警の捜査開始時には知っていたのではないかと思います。
市民からの「懲戒請求」はなかったのでしょうか?
警察が検挙してから初めて懲戒の調査に着手した印象を持つのは私だけでしょうか?
大阪弁護士会にも責任の一端があるように思います。是非調査の結果を公にして欲しいと思います。
◇除籍/除名
西村議員への民主党の処分は「除籍」だそうです。
新聞では「除籍(除名)」と表記するものもありました。
私の印象では「除籍」より「除名」の方が重い処分のように思いましたが。民主党には「除名」処分というのはないのでしょうか?
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