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06/01/15 島田 洋七「がばいばあちゃんの元気で生きんしゃい!」

 週末に滋賀の実家の母の顔を見るために 帰省して来ました。
 母は1918(大正7)年生まれで、今年、満八十八歳になります。

 足腰も弱ってきましたので、若いときから続けてきた畑仕事はできませんが、近所の友達の家をお互いに訪ねあったり、孫に時候の手紙を書いたり、本を読ん だりとそれなりに多忙な日々を送っているようです。

 親不孝を重ねてきましたので、せめてもの罪滅ぼしにとできるだけ顔を見せるようにしております。
 そして、母への手土産は、母の興味の向きそうな本です。

 今回は、漫才師の島田洋七さんが書かれた「が ばいばあちゃんの元気で生きんしゃい!」です。
 以前に持っていった島田洋七さんの前作「佐賀のがばいばあちゃん」が好評だったので、続編かと思い書店で買って持っていきました。
 自宅から実家までは電車で大よそ1時間30分の電車の旅、ゆっくりと読んでいきました。

 島田洋七さんは広島市出身で幼い頃にお父さんを原爆症で亡くしておられます。お母さんが居酒屋を開いて子供達を育てていたそうです。
 小学生の洋七少年が母が恋しくて母の働く居酒屋まで物騒な夜道を出歩くことを心配した母が、洋七少年を騙すようにして佐賀の実家の祖母に預けます。
 佐賀のおばあちゃんと洋七少年のほほえましく、たくましい貧乏生活が綴られています。

 前作の「佐賀のがばいばあちゃん」はフィクション風の作品、今作「が ばいばあちゃんの元気で生きんしゃい!」はエッセイ風です。

 おばあさんの名前はサノさん、おサノばあちゃんと呼ばれていたそうです。
 サノさんは、長女(洋七さんの母)が17歳のときに夫を亡くし、その後は佐賀大学等の掃除婦として女手一つで5女2男の7人の子供も育ててこられまし た。

 何でもプラス思考で考える明るくがばい(すごい)ばあちゃんです。
 大方の子育てが終わった頃に洋七少年を引き取ることになります。
 家には、三歳のときに事故にあい傷害を持った新(あらた)さんというお兄さん(叔父)がいます。
 新さんを弱いものとして懸命に守ろうとする洋七少年、二人の交流も心温まります。

◆サノばあちゃん語録
 私の気になった、おサノばあちゃん語録をいくつか紹介します。

◇世間に見栄はるから死ぬ。うちはうちでよか。
 自分自身にも自殺願望があります。
 先日、親しいの方の友人お二人が、お一人はご主人を、もうお一人は弟さんを、相次いで自殺で亡くされ、逝った人たちのことを思い自分達を責めておられる とお聞きしました。

 おサノばあちゃんは「見栄をはるな」ときっぱりと言っています。
 見栄をはるから自分を追い込んで「死」を選択してしまう。
 あるがままに生きろと言われています。

 私の心のしんどさも、みんな見栄をはっているからしんどいのですね。
 でも、裸になって自分を曝け出すのは怖いものです。

 逝ってはならないと思います。
 残されたものがどんな傷ついているのかを考えねばなりません。

 気楽に読み始めた本でしたが、この言葉が一番印象に残りました。

◇自分が一番わからない、ひとのことはよくわかる。
 最近、人との付き合う中で、人間の気侭さに少々うんざり、少々キレそうになったりします。
 他人の鼻につきそうに嫌なことには敏感です。
 何故、他人はこんなに我が侭なのだろうと思ってしまいます。

 翻って「私は?」と思うとまったく自信がありません。と、いうよりも私も相当な我が侭です。
 自戒、自戒。
 「他人の振り見て、我が振り直せ」ですね。

◇2、3人に嫌われても、反対向けば一億人いる。
 見栄はりの私は、他人の評価が気になります。
 そんなことを気にしてきたから「なにくそ」という思いで頑張ってこられたこともありますが、自分自身を苦しい立場に追い込んできたことも事実のようで す。

 これからは、いくらかでも残る1億2千万人の人を思うことにしましょう。

◇1万人生まれてきたら、何人か故障すると。
 昭和30年代には、貧しかったサノばあちゃんの家にも物乞いの乞食が来たそうです。
 おサノばあちゃんは、自分達の食べるご飯をおにぎりにして食べさせていたそうです。
 そんな人たちに「自分達の食べ物を何故やるのだ」と聞いた洋七少年におサノばあちゃんが言った言葉だそうです。
 知能傷害を持つ新さんのことも言っておられるのでしょうか?

◇金、金と、言うんじゃなか。一億円あったって金魚一匹つくれんばい。
 額に汗しない不労所得で何億円も稼ぐ人たちが人生の勝者であるような最近の風潮を見ていますと、おサノばあちゃんの言葉は胸元一杯のスピードボールがズ ドンと決まります。

 いくら金があっても金魚一匹の命は作れない。

 おサノばあちゃんの元気になる語録は、前作にも豊富に書かれています。
 洋七さんは漫才のネタにもされています。
 是非、お読みください。

◆模型飛行機
 終盤に佐賀に移住した洋七さんが、街中の商店でゴム動力の模型飛行機を買い求める場面があります。
 洋七少年がおサノばあちゃんに「学校の友達が模型飛行機を飛ばそうと言っているから、買って欲しい」というとおばあちゃんは「任せなさい」と言い、夜中 に折り紙の紙飛行機を作っておいていたそうです。
 洋七少年は、みんながゴム動力の飛行機を飛ばすのに自分は紙飛行機を投げていたそうです。

 子供の頃に模型飛行機を何機か作った思い出があります。
 一人でできることが好きな子供でした。
 竹ひごを削り、障子紙のような紙を貼り、サンドペーパーで磨き上げて、田圃で飛ばしていました。

◆映画化
 「佐賀のがばいばあちゃん」が映画化されます。
 今春の公開の予定だそうです。
 サノばあちゃんは吉行和子さんです。楽しみですね。
 私も母を連れて行ってみたいです。
 公式サイトのURL:http://www.gabai-baachan.com/index.html
 
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