Google
WWW を検索 残日録内 を検索
←Back  Haiku  Home Mail Archives Twitter  Next→

06/04/03 井上 ひさし「太鼓たたいて笛ふいて」

わ たしは日本を愛してる
わ たしは日本をはなれられない
滅 びるにはこの国が
あ まりにもすばらしすぎるから

例 えば
め ぐりめぐる四季の美しさ
春  氷がとけて 野原が花いっぱい
夏  青空にわきあがる入道雲
雨 上がりの あの虹(にじ)の美しさ

そ してまた
黄 金色(こがねいろ)のみのりの秋
夜 ふけの月の冴(さ)えた美しさ

そ れから冬
雪 がしんしん銀世界
な にもかも白く生まれ変わる冬

そ してどこかで そっと生きてる
平 凡だけど こころやさしい人びと
ま ずしくとも こころゆたかなひと

わ たしは日本を愛している
わ たしは日本をはなれられない
滅 びるにはこの国が
あ まりにもすばらしすぎるから

 この詩は、井上ひさしさんの戯曲「太鼓たたいて笛ふいて」の挿入 歌「滅びるにはこの日本、あまりにすばらしすぎる」の歌詞です。

 私もこの国が好きです。四季の移ろいを肌に感じながらサイクリングなどを楽しんでいます。

 今回は「放浪記」で有名な林芙美子の1935(昭和10)年から1951(昭和26)年までの16年間を描いた「太鼓たたいて笛ふいて」を紹介し ます。

 放浪記などで人気作家となっていた林芙美子は、内容が暗いと言う理由から自著の重版が禁止されてしまいます。
 日本が戦争への道をはじめる時期です。
 1936(昭和11)年には2・26事件が、1937(昭和12)年7月には日中戦争がはじまり、12月には南京大虐殺が起きています。
 芙美子は、中国戦線に従軍して戦争賛美の文章を書いていきます。
 殆どの学者、文筆家や芸能人等が戦争賛美の輪の中に組み込まれていきました。

 昭和20年3月、芙美子は「一昨昨年(いっさくさくねん)から一昨年(いっさくねん)にかけて八ヵ月間、わたしは内閣情報局と陸軍省から派遣されてシン ガポールやジャワやボルネオなど、わが国が占領した大東亜(だいとうあ)の東南部をくわしく見てまいりました。その目で見ると、もうどんなことをしても、 こんどの戦さに勝つ見込みはありません。こうなったらキレイに負けるしかないでしょう。しかし、この国を上から下まで見渡しても、キレイに負けることがで きるだけの器量と度量を備えた人間はいないようです」と厭戦的な発言をするようになります。

 「都会から疎開(そかい)してきた子どもたちは休み時間に田んぼや原っぱに行って蛙(かえる)や蛇をつかまえて食べている。その親たちは空襲で一晩に十 万人も焼け死んで行く。前線には餓死した兵隊さんたちの死体が山積みになっている。恋することも知らずに少年たちが爆弾抱えて敵艦にぶつかって行 く・・・・・・どこにもうかっている日本人がいるの。苦しんでいる人たちばかりじゃないの」

 知り合いの憲兵から「先生は、日本が嫌いなんだ。日本のやることなすこと、何もかも気に入らないんだ。そういう日本人ているんだよな。・・・・・非国 民」 と罵ります。

 その時に歌われたのが冒頭の「わたしは日本を愛している・・・・」です。

 今も「戦争反対」「憲法を守ろう」等という人たちに「嫌なら日本を出て行け」等という輩がおります。
 戦争反対と叫ぶ人たちが本当の愛国者ではないでしょうか。

 娘の小説を読みたいと読み書きを習った芙美子の母・キクは知り合いの青年の戦死の知らせの葉書をみて、
 「・・・なひて、こげん葉書、この目で読まなならんのかいの」と嘆きます。

◆こまつ座公演
 「太鼓たたいて笛ふいて」はこまつ座が大竹しのぶさん主演で02年に初演、04年に再演されています。
 http://www.komatsuza.co.jp/kouen_kako/chirashi/taiko_s.html

◆記念館など
 新宿区中井にある「林芙美子記念館」は、この芝居の舞台となっている元林芙美子邸だそうです。
 2場の舞台となった、長野県山内町角間温泉には林芙美子が疎開していた旧宅が「林芙美子文学館」として公開されているようです。

◆林芙美子略歴
 ▽1903(明治36)年:福岡県門司市生まれ
  幼少期には行商で生計を立てる両親に従って各地を転々としていたそうです。
 ▽1916(大正5)年:一家で尾道に移り住む。
 ▽1922(大正11)年:尾道高等女学校を卒業し、上京する。
 ▽1926(昭和元)年:手塚緑敏と結婚する。
 ▽1943(昭和18)年:生後間もない男の子を養子とする。
 ▽1944(昭和19)年:長野県下高井郡穂波村角間温泉へ疎開。
 ▽1951(昭和26)年:死去

◆今週 のベランダ園芸

 ラ ディッシュは元気にドシリと腰を据えて成長しています。
 法蓮草は 弱々しく、ヒョロヒョロと日陰のモヤシのような状態です。いつになったらしっかりするのでしょうか?
 遅まきに 出てきた人参は無精ひげのような状態です。
 法蓮草の 間引き菜はサラダでいただきました。しゃきしゃきでした。



ラ ディッシュ
法 蓮草
人 参
法 蓮草の間引き菜
inserted by FC2 system