06/04/25 格差の拡大、都市と地方の命の格差
107人の死者を出したJR西日本の福
知山線脱線事故から一年が過ぎました。
JR西日本を含む鉄道事業者の利益よりも安全を優先する意識は向上しているのでしょうか?
107人の命を犠牲にして、国土交通省が鉄道事業者に義務付けた安全施策に対するアンケートの結果が報道されています。
朝日新聞が全国の136社にアンケートを送付し121社から回答を得たそうです。
「鉄道121社、半数『安全投資は負担』 本社調査」(朝日新聞 2006年04月24日)
◇半数近くが「安全投資は経営の負担だと回答
Q.安全対策コストの増額が経営に与えた影響
・経営に影響が生じた :23社(19.0%)
・将来、経営に影響が出る:35社(28.9%)
・影響は無い : (17.4%)
・よくわからない : ( 7.4%)
・無回答 : (27.3%)
◇地方の中小事業者は
「会社を倒産させても安全を確保するということはできない」(土佐くろしお鉄道)
「本来計画していた安全のための設備投資が後回しになる」(中四国の三セク)
「(新しい設備の)維持管理経費が経営に影響してくる」(肥薩おれんじ鉄道)
「非常に厳しい経営状況。補助金の拡充がなければ経営ができない」(中部の私鉄)
◇安全投資か? 会社の存続か?
びっくりする回答です。でも、考えさせられる回答です。
都市圏の大手事業者は利用者が多く収入も多いので安全投資もそれほどの負担ではないのでしょうが、地方鉄道では国土交通省が義務付ける安全基準が死活問
題になっているようです。
ここにも「格差の拡大」が現れています。
国鉄を民営化し、採算の取れないローカル線を切り捨ててきた結果、都市部の人間の命の価値と地方の人間の命の価値に格差が生じているのではないでしょう
か。
国土交通省は事故の原因が「国鉄民営化 → 利益優先の経営 → 安全の軽視 → 事故」という連鎖にあることに目をつむり、小手先の安全対策を義務付
けただけで国民の命と生活が守れると思っているのでしょうか?
以前(残日録:05/07/02)に紹介し
た日本経済新聞の吉野論説委員の記事を思い出させるものです。
◇JR各社は多くの赤字ローカル線を抱えており、都市部の稼ぎをローカル線の維持につぎ込んでいる。
◇安全のためには、巨額の投資が必要となる。
◇そのためには、赤字ローカル線を切り捨てるべきだ。
◇赤字ローカル線を廃止しても、これだけ自動車交通が普及した社会では地域生活や経済に影響がない。
◆小泉改革に「聖域」はあった
額賀防衛庁長官が訪米し、アメリカのラムズフェルド国防長官と会談し沖縄に駐留するアメリカ軍のグアム移転費用のうち7000億円を負担することで合意
したそうです。
傀儡政権の姿を明らかにしたニュースです。
◇アメリカは移転費用を100億ドルと試算し、75%(約8600億円)の負担を日本に要求していた。
◇今回の決着は移転費用(1兆1900億円)の59%(約7000億円)を負担することで合意した。
アメリカは移転費用の根拠を示していません。
日本には海外のアメリカ軍に財政支出できる法律がありません。
居直った用心棒にお引取り願うのに、小遣いを与え移転先に家を建てやるようなものです。
「小泉改革に声域は無い」と声高に叫んでいた男にもご主人様の要求は無条件に飲むしかない「聖域」だったのです。
「米軍グアム移転費で合意 日本側負担は59%」(朝日新聞 2006年04月24日)
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