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06/08/25 犯罪報道の犯罪
 事件や事故での被害者や加害者の氏名等 は匿名で報道すべきだと思っています。権力を持った人の権力を使った犯罪は例外ですが。

 8月25日のGoogleNewsの社会ネタから拾った報道内容です。


◇少年などの犯罪の場合は家族(被害者の場合も)を含めて匿名となっています。
◇精神障害の疑いのある被疑者は匿名となっています。
◇汚職事件では実名報道です。当然だと思います。
◇軽微な暴行事件の被疑者を産経新聞は実名で報道していますが、どんな意味があるのでしょうか?

◆警察のコントロール
 実名報道をしないと警察の密室性を監視することができないとの議論がありますが、報道を匿名にすべきであって警察の発表は実名であるべきだと思います。
 警察は犯罪被害者等基本法が成立したことで被害者の実名を発表しない方針だそうですが、これは問題のすり替えであり警察等の公権力を監視できなくなって しまいます。
 実名で発表されたものをマスコミが匿名報道をすればよいのです。

◆犯罪報道の犯罪
 実名報道が新たな被害者を作っているという例を紹介します。

◇ひき逃げ事件・誤認逮捕
 昨年6月東京で起きたひき逃げ事件の容疑者として逮捕・起訴され、約10ヶ月間も拘留された男性の裁判で「求刑どおり無罪」が言い渡され裁判官は「大変 なご苦労をお掛けしました」と詫びたそうです。

 今年年3月に加害車両が発見されて捜査が再開された結果、真犯人が特定されたためこの男性が無罪判決となったそうです。

 東京地検は裁判中に誤認逮捕が明らかになったために「無罪の求刑」をしていたそうです。検察が「無罪の求刑」などどう考えてもおかしいことです。裁判を 止めることは出来なかったのでしょうか?

 朝日新聞には東京地検次席検事の「無罪判決を真摯に受け止め・・・」という紋切り型の談話が掲載されていますが、朝日新聞は当初実名報道をしていなかっ たのでしょうか?
 もし実名報道をしたいたのなら新聞社としてこの男性に対する謝罪記事があっても良いように思います。
 無実の人を犯罪者呼ばわりをしておいて「警察の発表をそのまま印刷して配布しただけ」などという言い訳は通用しないのではないでしょうか?

 いずれ、朝日新聞の縮刷版から当時の報道を紹介したいと思います。
 
▽朝日新聞大阪本社の閲覧コーナーで縮刷版などで当時の記事を探しましたが、第一報と見られる下記の記事しか見つかりませんでした。(06/08/27追 記)
---転載始め---
 逃走中の車が男性をひき逃げ 世田谷
 27日午前2時50分ごろ東京都世田谷区用賀1丁目の国道交差点で、バイクに乗っていた近くの新聞販売所従業員○○さん(25)が、パトカーに追跡され ていた乗用車にはねられ、○○さんは頭の骨が折れるなどの重体。乗用車は逃走した。警視庁はひき逃げ事件として捜査している。
 玉川署の調べでは、現場から約1.5キロ離れた別の交差点で、この乗用車が信号無視をするのをパトカーが発見、赤色灯を点灯させ、サイレンを鳴らして追 跡していた。(朝日新聞夕刊 05/06/27)
---転載終り---

 「誤認逮捕の男性に無罪 裁判官『ご苦労おかけしました』」(朝日新聞 06/08/23)

 冤罪事件はこのようにして作られていくのですね。
 大阪府警堺南警察署が拾得物を届けた善意の女性を、拾得物横領犯に仕立てていく事件でも普通の市民があれよあれよという間に犯人にでっち上げられていき ました。「残日録」(05/11/05)に紹 介しています。

◇転落事故で逮捕されていた男性が不起訴
 今年5月、名古屋市の名鉄・山王駅ホームから2人が転落し、1人が死亡した事件で生き残った男性が傷害致死で逮捕され、その後処分保留で釈放されていま したが、名古屋地検は不起訴にしたと発表したそうです。

 この男性のことは「愛知県西尾市の会社員の男性(58)」と匿名報道しておりますが、朝日新聞のコメントはありません。

 「処分保留の男性、嫌疑不十分で不起訴 名鉄ホーム転落死」(朝日新聞 06/08/23)

 この記事も当時の報道を見てみたいものですが、ネット上で中日新聞の記事を見ることができました。
 元記事:「もみ合った相手、逮捕〜名鉄・山王駅ホーム死亡事故」(中日新聞 06/05/12)は、Webサイトから消されていますが、「おたく鍋」というサイトに全 文が転載されていましたので孫引きさせていただきました。

 当時の中日新聞のこの男性に関する表現は以下のとおりです。
 「中川署は十二日朝、傷害致死の疑いで、軽傷だった愛知県西尾市△△町、会社員○○容疑者(58)を逮捕した」
 まさに犯罪者としての報道です。

▽当時の朝日新聞の記事(部分引用)
 「・・中川署は12日午前、つかみあった男性を転落、死亡させたとして、軽傷を負った愛知県西尾市△△町、会社員○○容疑者(58)を傷害致死の疑いで 逮捕した。」(朝日新聞 06/05/12)(06/08/27追記)

 因みにこの男性が不起訴となった報道は地元紙中日新聞に見当たらないのは何故でしょう?

 図らずも中日新聞は8月24日の社説(誤った捜査への叱責だ)で東京のひき逃げ誤認逮捕事件を取り上げています。

 以下は中日新聞社説(06/06/24)からの部分抜粋です。
◇裁判官が男性にかけた言葉の重さを捜査当局は厳粛に受け止めてほしい。
◇警察、検察の責任は大きい。あらためて反省し、捜査の検証に取り組むべ きであろう。
◇(男性は)一貫して具体的なアリバイと無罪を訴えていた。それなのに警察も検察もなぜ過ちを犯したのか。
◇証拠は男性を犯人にでっち上げた知人ら二人の証言しかなかった・・
◇・・唯一の物証である事故車両を見つけずに逮捕、起訴をしたのは、捜査のプロとしてお粗末すぎる。
◇最近は秋田の連続児童殺人事件や大阪の女性監禁事件など、不適切な捜査が目立つ。
◇予断と偏見、見込み捜査、長期拘置などは、冤罪(えんざい)を生む共通の土壌だ。

 警察・検察のいい加減さはそのとおりです。
 でも、新聞社は自らを「外」において物が言えるのでしょうか?
 事件発生から判決まで、誰の立場で記事を垂れ流していたのでしょうか?
 新聞などのマスコミには「有罪判決を受けるまでは無罪と推定される」という常識が通用しないのでしょうか?
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