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06/11/16 与党の横暴に抗議します
 教育基本法改悪案は、15日夕、衆議院・教育基本法特別委員会で野党 (民主、共産、社民、国民新)欠席の中、与党単独で可決されました。
 タウンミーティングでのやらせ質問や、いじめによる子供たちの自殺など緊急の課題に答えないで審議時間が100時間を超えたということだけで、審議は尽 くされたとの強行採決は許されません。

 今後の選挙で、彼らに思い知らせましょう。
 選挙に行きましょう。
 自民党、公明党の公認、推薦候補者以外に投票しましょう。
 彼らへの投票は彼らの横暴を追認することになります。


 強行採決直前の15日になって、新聞各紙は「拙速に教育基本法改悪をするな」との論調になってきました。

◆壊れていない車は修理するな
 立花隆さんは日経関連のWebサイトで「立花隆の『メディア ソシオ-ポリティクス』」という連載に「憲法第9条を死守して『崇高な理想』を貫け」というコラムの中で「壊れていない車を修理するな」という比喩を 引用されています。

 この言葉は1999年のオーストラリアでの憲法改正の国民投票に「NO」の投票を呼びかけた保守派のスローガンだったそうです。
 形骸化した「イギリス王室を君主と仰ぐ君主制」から、選挙で大統領を選ぶ「共和制」に移行するかどうかの国民投票で、君主制と共和制のメリット・デメ リットも明確でなく、どうしても共和制に移行する必要もないのなら無理をして社会システムを変えない方がよいとのことだったのです。

 議論されている教育基本法改悪も、憲法改悪も積極的に変えなければならないに要件はないように思います。
 安倍首相がいう憲法改正の理由は「壊れていない車を修理する」ことではないでしょうか。

◆教育基本法改悪に関する各紙の社説(主張、論説)
 15日になって、各紙の社説は積極的に教育基本法改悪を急ぐべきでないとの論調になってきています。

◇中国新聞「教育基本法改正 当面の課題解決が先だ
 教育基本法の改正案採決より「その前に現場の課題(いじめ、自殺、やらせ、未履修など)に取り組むべきではないか」と書いています。

 「現場が直面する問題を切り離して理念の手直しを先行させる意味があるだろうか。現行法が一連の問題を引き起こしたとも言えまい。そもそも、今なぜ改正 が必要か―との疑問にも答えが出たとも言い難い。だとすれば、むしろ時間を十分取って論議するのが筋であろう」(引用)
 壊れていない車を修理する必要はありません。

◇岩手日報:「教育基本法の改正 仕切り直しが筋だろう
 「教育にかかわる問題に、即効的な対応が強く求められている状況で、なぜ教育基本法はバタバタと全面改正されなければならないのだろうか」(引用)
 まったくそのとおりです。
 なぜ、今、全面「改正」なのでしょう。

 「まさか、改正そのものが目的とは言うまい。教育は政治の具ではない。仕切り直しを望む」(引用)
 良いとこ突いているように見えます。
 憲法を変えるためには、憲法の精神に則っている教育基本法を変えておく必要があるからです。

 「日本国憲法の精神に則り、教育の目的を明示して、新しい日本の教育の基本を確立するため、この法律を制定する」(教育基本法・前文より)

 岩手日報の論説は改悪の本質を突いています。少し長いですが箇条書きにして引用させていただきます。

 ▽教育基本法は「教育の憲法」だ。その理念の下に、学校教育法や社会教育法といった個別法が整備される。
 ▽教育基本法が実際の教育施策に直接的に影響しているわけではない。
 ▽「愛国心」の扱いにしても、それに類した教育は、学習指導要領により既に学校現場で実践されている。
 ▽乱暴な言い方をすれば、教育基本法を変えなくても「教育」を変えることはできる。
 ▽小泉前政権の方針を踏襲する「改革」は、大都市圏を中心に粛々と進んでいる。
 ▽個人の思想信条にかかわる問題を「教育」することの是非、経済格差と直結する教育格差の顕在化など、「改革」は既に種々の課題を提示してもいる。
 ▽先行する「改革」を追認すべく理念法たる基本法の改正を急ぐことに、果たしてどれほどの国民が納得できるだろうか。
 ▽八戸市などで明らかになったタウンミーティングでの「やらせ質問」は、国民的議論のでっち上げ。
 ▽何をそんなに焦るのか。その理由が、どうにも理解できない。
 ▽現行法は「教育は…国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきもの」と一般行政からの独立を規定する。
  この部分が、改正案では削られ、新たに「教育は…この法律および他の法律の定めるところにより行われるべきもの」との文言が加えられた。
 ▽(「改正」案は)政府に教育振興基本計画の策定を義務付けており、政治が表立って教育内容に介入する根拠になるだろう。

 他紙の論調より2歩も3歩も踏み込んでいるように思います。
 遠藤泉記者の署名記事です。

◇秋田魁新報:「教育基本法改正 なぜこんなに急ぐのか
 境域に難問が山積しているが「だからといって、何でも改正すればいいというわけではない」

◇福島民友新聞:「教育基本法/改正案より優先課題解決を
 「基本法改正より、噴出している諸問題の解決を優先すべきではないか」(引用)

 「国を愛する態度とは、国を憂い反政府運動をすることも含むのか」(引用)

 そうです。
 国の愛し方って、個人の心の問題であって誰かに決めてもらうものではありません。

 「基本法を今、なぜ、見直さなければならないのか、いまだに説得力ある説明はない。論点は既に出尽くしたなどとは決して言えないはずだ」(引用)

 「100時間近くも審議したからもう採決」などという論理は通用しません。

◇北日本新聞:「教育基本法改正/国民的論議の成熟待て
 「国民的論議は一向に盛り上がらない。そもそも、なぜ変えなければならないのかがあいまいであり、変えれば日本の教育が良くなるという根拠も示されない からだ」(引用)

 改悪ための改悪です。
 政府与党の馬鹿さがこうして明らかになっていきます。

 「政府案には三十以上もの規範や徳目が列挙されているが、近代の立憲主義では個人の心の内にかかわる事柄は規定しないことが常識だ」(引用)
 「政治や行政が教育内容に介入できるようになるのだ。こんな教育が果たしていいのか、国民一人一人よく考えたい」(引用)

◇京都新聞:「教育基本法改正 拙速避け慎重に審議を
 「『我が国と郷土を愛する』と明記した『愛国心』の規定が最大の焦点である」(引用)

 そうなのでしょうか?
 教育基本法の改悪の争点が「愛国心」だとは思いません。
 もっと、根源的なところにあるのです。

 「日本国憲法とともに歩み、戦後の平和的繁栄の基礎となった『教育基本法』を、『日本国憲法改定の先触れ』とするために変えようとしているに過ぎないの です」(マガジン9条「『教育基本法改定』についての呼びかけ」より抜粋)

◇宮崎日日新聞:「教育基本法改正案の蹉跌(さてつ)
 「現行法に『教育の目的』『教育の方針』など極めて普遍的な価値観が名文としてある。なのに、この教育現場の荒廃ぶり」(引用)

 「政府案には、能力格差と管理強化を進める文言がある。研究機関の調べでは校長の66%が改正案に反対する。『国民の多数意思を無視した少数の横暴』。 野党をこう切り捨てた中川秀直自民党幹事長と小説の(石川達三さんの小説「青春の蹉跌」の)主人公が少なからず重なった」(引用)

◇産経新聞:「教育基本法改正 今国会で早期成立を図れ
 昨日の読売新聞に続いて真打・産経新聞の論旨は明快です。

 「審議は先の通常国会の50時間に、今国会の46時間を加えると100時間近い。既に政府案は3年に及ぶ与党協議会での議論を踏まえ、民主党案も2年近 い検討を重ねてきた」(引用)

 政府与党の説明と軌を一にします。

 「学校でのいじめや家庭での虐待など、荒廃する教育現場を根本から再生することだ。政府案は完璧(かんぺき)ではないが、戦後教育のゆがみを正し、健全 な国家意識や家族観をはぐくもうという改革案である。今国会で速やかに成立を期すべきだ」(引用)

 執筆者の見識が疑われます。
 「改正」案で、いじめや虐待が改善されるというのでしょうか?

 「政府案と民主党案が提案された前国会以来、より良い案にすることを促してきた」(引用)
 よりよい案はありません。
 参議院で審議を尽くし、廃案するしかないと思います。
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