07/01/16 声なき声を、
「国境なき医師団」は「2006
年、10の最も報じられなかった人道的危機」として、「世界で最も注目を浴びず、報道されることの少なかった人道的危機のワースト10」の項目を
報じています。
◆中央アフリカ共和国◆武力衝突からの逃走
05年11月以来政府軍と反政府勢力の戦闘が発生し一般市民が標的にされている。
◆結核◆人的犠牲の増加
結核による犠牲者は世界的に増加(年間200万人)しておりHIV感染率の高い途上国では顕著である。
◆チェチェン共和国◆悲惨な紛争の影響
12年間にわたる戦争に翻弄され生きてきた多くの人びとの身体的・精神的な傷跡は未だに癒えていない。
◆スリランカ◆援助が限定される中、攻撃にさらされる一般市民
スリランカ国民は、政府軍と反政府勢力の大規模な戦闘の矢面に立たされている。
◆栄養失調◆治療のための有効な戦略は実施されず
世界各地で、常に6千万人の子どもたちが急性栄養失調の兆候を示しており、毎年、数百万人の子どもたちが急性栄養失調で死んでいる。
◆コンゴ民主共和国◆極度の貧困と暴力に耐え忍ぶ人びと
数十年ぶりの民主的な議会及び大統領選挙の後も、数百万のコンゴ国民が極度の貧困と暴力に耐え忍んでいる。
◆ソマリア◆戦争と災害に見舞われ、苦境に陥る人びと
15年もの内戦は国民の健康に破滅的な影響を及ぼしている。平
均寿命は47才、子どもの4人に1人以上は5才の誕生日を迎えられない。
◆コロンビア◆恐怖の中に生きる
コロンビアの内戦は40年以上にわたっている。
戦闘地域に暮らす国民の日常生活は虐殺、処刑、脅迫、恐怖などが避けられない。
◆ハイチ◆一触即発の状況にある首都における暴力の蔓延
政府軍と反政府武装勢力の衝突から、誘拐や性的暴力が多発している。
◆インド◆中部における衝突
インド中部では毛沢東主義派の反政府勢力、インド治安部隊、毛沢東主義派と対抗する民兵組織の間の衝突が25年以上も続いている。
15日付けの朝日新聞のコラム・天声人語は、この
国境なき医師団の「10の人道的危機」を取り上げています。
「人々の命を脅かすものに対して、メディアは常に敏感であらねば。声なき声を、ニュースを追う者にとっての戒めと受け止めたい」(引用)
そのとおりです。
でも、朝日新聞をはじめとした日本のマスコミは「敏感に」「声なき声を」報道しているでしょうか?
食品添加物による健康被害の可能性がある、コンビニや外食店の残飯を豚に食べさせて、その肉を再びコンビニや外食店で使う政府の方針を無批判に報道して
いました。(残日録06/12/26)
健康への影響があると指摘されているトランス脂肪酸を、コーヒーチェーン・スターバックスがアメリカ国内での使用を取りやめたとの報道は、日本国内での
トランス脂肪酸の使用を公言している業界への取材もないままです。(残日録
07/01/06)
「人々の命を脅かす」最大の暴力である戦争、日本が戦争をする国へと進んでいることに反対する人たちの「声なき声」も正しく報道されていません。
天声人語の全文を転載します。
「どんなに悲惨なことが起きていても、メディアで報じられない限り、世界の多くの人々にとってはないに等しい。助けも届かない。/NPOの『国境なき医
師団』が『06年、最も報じられなかった10の人道的危機』を挙げている。まず、毎年何百万もの命を奪っている結核、栄養失調がある。それに、人々を生命
の危機と恐怖に陥れているスリランカ、中央アフリカ、ハイチなど八つの国での紛争を加えた。/米国の3大テレビネットワークの夜のニュースは昨年、このう
ち5カ国での紛争は全く取り上げず、残りも合わせて7・2分間報じただけという。まさに忘れられた危機だ。栄養失調の新しい治療食ができても、やせ衰えた
子供たちに届かない。/英国BBCテレビの記者が報道の量に関して調べた興味深い結果がある。健康へのリスクなどについてのBBCニュースの1年間の本数
で、そのリスクによると見られる年間の死者数を割り、記事1本あたりの死者数を概算した。多いほど、危険の割に報道が少ないことになる。/筆頭は喫煙で約
8600人、次が肥満で約7500人だった。牛海綿状脳症(BSE)に感染した牛肉を食べることによる変異型クロイツフェルトヤコブ病は0・5人、エイズ
は20人だった。喫煙や肥満はBSEに比べるとニュースになりにくい。しかし、健康への影響を考えれば、もっと報じられていい、というのが結論だった。/
人々の命を脅かすものに対して、メディアは常に敏感であらねば。声なき声を、ニュースを追う者にとっての戒めと受け止めたい。」 |
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