08/02/02 鎌
田實「なげださない」
◆価値と価格
ビル・トッテンさんのコラム(Our World)に「食料使って人間支配」と題するコラムがありました。
ビル・ゲイツ氏が、儲けすぎた金で作った慈善団体「ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ基金」が、モンサントやロックフェラー財団らとともに北極圏の山の中
に「種子(タネ)の銀行」というプロジェクトを進めています。
核戦争や地球温暖化などで種子が絶滅しても再生できるように保存するというのが目的だそうです。
ノアの方舟のように、種の保存をするのかと思いましたが、保存される種子は「ターミネーター」と呼ばれる特許で作られていて、この種を育てて収穫した種
を蒔いても発芽しないので、また種を買う必要があるのです。
人類の「終わりの日」もまた、金儲けのタネにしようとする人たちの話です。
日本の農家が使っている野菜の種も、既に「ターミネーター」で毎年種を買わされています。
「種子の銀行」の正式名は「あらゆる危険に耐えうるよう設計された世の終わりの日の北極種子金庫」(Doomsday
Arctic Seed Vault Designed to Withstand All Perils)」です。
ビル・トッテンさんは、ビル・ゲイツ氏について下記のように評されています。
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ゲイツ氏が富を築いたのは、利益を独占するために知的所有権を行使してすぐに陳腐化するバグのある製品を消費者に高い値
で提供したか、社員
に十分な給料を払わなかったからだというのが私の持論である。そして巨額の利益が特定の人に集まる仕組みそのものよりも、結局は倫理、道理の問題なのだと
思っている。
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カネを儲けるということは、不当に高い価格で販売したか、労働者から不当に収奪したからだといわれています。
さて、数日来ニュースとなっている中国産ギョーザへの農薬混入問題も、同様の根っこに問題があるように思います。
消費者の命や健康よりも、利益を優先する企業の犯罪ではないでしょうか?
中国産の製品だけでなく、映画「いのちの食べか
た」を観る限り、食の安全が担保されているとは思えません。
輸入元ジェイティフーズの親会社ジェイティ(JT)のホームページには「食品事業」の事業紹介を下記のように書いています。
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JTの食品事業は、「一番大切な人に食べてもらいたい」という想いのもと、多様化するお客様のニーズに応える商品やサービスの提供に努めています。
今後も、飲料・加工食品・調味料の三つの事業を柱とする綜合食品メーカーとして、くらしの源である「食」の世界を通じて、常に世の中が求める新しい価値
を生み出していきます。
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「安全」に対する言葉がないのは、この会社の姿勢でしょうか?
「消費者が価格の安いものを望んでいるから」との論理で、品質や安全性を蔑ろにすることは許せません。
購入する物を、価格だけで選ぶのを止めましょう。
いくら購入価格が安くても、化石燃料を使いCO2やNOxを撒き散らして運ばれてきた商品を買わないことにしましょう。
諏訪
中央病院名誉院長・鎌田實さんの「なげださない」を紹介します。
10人の「投げ出さなかった人」の人生が書かれています。
自分のための人生を投げ出し、誰かのために人生を投げ出さなかった人たちです。
◆アルコール依存症
アルコール依存症のために家族も無くし、命を落とすまで飲みつづけるヒロさん。
今は、傷ついた子供たちのために力を尽くしています。
ヒロさんの言葉から。
「子どもたちとつきあっていくとき自分に言い聞かせているのは、『この子たちを変えようなんて絶対思うな』ということ。『この子は今、自分の中のウミみ
たいなものを出そうとしているだけだから、それが出ちゃえば大丈夫。無理に変えよう、直そうとするな』とね」
わたしもアルコール依存症、何かに「依存」しなければ生きていけないのは「心の病気」、病気は治さねばなりません。
◆飛行機おじさん
チェルノブイリ原発事故で放射能汚染により閉鎖されたベラルーシ共和国のドゥヂチ村に残ったニコライおじさんは、スクラップ同然の飛行機を使えそうな部
品と交換しながら、やがて大空に飛び立つことを夢みていた。
ある時、村の教会が不審火で焼け落ちた。
ニコライおじさんは、大事な飛行機を売り払い教会の再建に取り組んでいる。
鎌田實さんの詩の一部を引用します。
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けれど、いつか、森の放射能が消えるときが来るだろう。
ある日、若者が「地図から消えた村」にやってくる。
豊かな森に囲まれた廃村に、小さな教会が残っている。
若者は驚く。
驚きと喜びが、ちりちりバラバラになった、昔、ドゥヂチ村に住んでいた人々に伝わる。
代が変わっているかもしれない。何世代も後の子孫かもしれない。
村に人々が戻ってくる。
村にお店ができる。
かつてあった小学校に、子どもの声が響く。
飛行機おじさんは夢をなげださなかったのだ。
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◆ヒロシマ・ガールズ シゲコさん
13歳の夏、爆心地から1.5Kmの場所で被爆したシゲコさんは、全身の三分の一の皮膚を焼かれた。
日本での20数回に渡る皮膚移植手術、アメリカ人ジャーナリストノーマン・カズンズらの尽力で、整形手術を受けるためにヒロシマ・ガールズの
一人として渡米し治療を受けた。
そして、やがてアメリカで看護師として働くことになります。
被爆の体験をかっての敵国アメリカで訴えつづけておられます。
鎌田實さんの詩の一部を引用します。
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大きな流れに巻き込まれず
一つの色に染められず
自分の意見を信じて
正しいと思ったとおりに生きる。
自分の生き方や、感じ方や、考え方をなげださないで
ぶれないで生きていこう。
シゲコさんのように。
そう自分に言い聞かせた。
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自分のオリジナリティを持ちましょう。
シゲコさん=笹森恵子(ささもり・しげこ)=は、映画「ヒロシ
マナガサキ」で被爆体験を証言されています。
この映画はよい映画でした。是非、ご覧ください。
◆寧楽(ねいらく)共働学舎
北海道の小平町寧楽にある共働学舎には25人のメンバーが暮らしている。
豚を飼い、鶏を飼い、肉を売り、ソーセージを売り、卵を売って暮らしている。
非行歴を持つ人、心の傷を持つ人、てきぱきと仕事をこなす人、ゆっくりとマイペースで仕事をする人、外の世界で働くことが難しい人たち。
寧楽共働学舎の創立時のメンバー・福澤副理事長のことば。
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共働学舎のめざすところは、自分の中に弱さをみつけ、それを認めるこ
とでもあるんです。今、これだけ凶暴でおかしな事件が起きているのは、弱さを隠さねければならない社会だからじゃないでしょうか。
弱いものは笑われ、いじめられるから、自分の弱さを隠して人の弱さを突っつく。これはどう考えても心理的荒廃をもたらす状況ですよね。自分の弱さを見つ
けられないよう、いつも気張っていなきゃならない。周囲を気にしてキョロキョロしていなきゃならない・・・・。その反動がきて当然でしょう。
自分の弱さを認められれば、人の弱さも許せる。人の弱さを許せば、自分の弱さも許してもらえる。共働学舎ではこの三〇年で、お互いを許しあう幅が大きく
なってきました。それこそが、この集団の財産だとぼくは思っています」
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自分の弱さを隠して生きているわたし、だから強がっているわたし、自分の弱さをなげだしているのです。
NPO法人共働学舎(きょうどうがくしゃ)は、寧楽の他にも、新得共働学舎(北海道)、信州/南沢共働学舎(長野県)が
あるそです。 |