08/04/03 歴史認識
準備をしていても、中々書けず
にいることの多い毎日です。
飲酒癖は治らず酒毒と、気の張りのなさと、老化の所為でしょうか。
大江健三郎さんの著書「沖縄ノート」などの沖縄戦での「集団自決」にかかる判決が出ました。
28日大阪地裁は、沖縄戦での「集団自決」で旧日本軍が深く関与した
との判
決を下しました。
高校の社会化教科書で「日本軍の強制」との表現に削除を求めた文科省の責任も問われなけらばなりません。
各紙の社説を読んでみると、教科書問題でも跋扈した人たちが、歴史を捻じ曲げ自分たちに都合の良い未来をつくろうとして
いる
ことが浮き彫りになってきます。
「新聞コラム社説リンク」というサイトのメジャー、中堅、地方紙の社説を拾い読みしました。
下記に紹介のない新聞はこの問題を取り上げていませんでした。全国紙では日本経済新聞が取り上げていませんでした。
◆判決に肯定的な社説を書いた新聞(順不同)
◆毎日
新聞
「軍の関与認定にまで踏み込んだことは、歴史認識や沖縄の心、極限状況における軍と国民の関係を考える議論に一石を投じるもので、その意味は大きい。」
(引
用)
「裁判は、06年度の高校日本史教科書の検定にも影響を与えた。文部科学省は、原告らの主張を根拠の一つとして、軍の「強制」があったという趣旨の記述
に
対して検定意見を付け、これを受けていったんは修正、削除された。」(引用)
この裁判が提訴されたことは裁判の結果よりも「集団自決が日本軍の強制ではなかったという意見もある」という意見もあり、一方の意見を取り上げない
(「強制」の削除)という国(文科省)にとって都合の良い行為でした。
「しかし、客観的な事実の検証なくして、歴史の教訓を導き出すことはできない。判決はそうした点で、一つ一つの事実を冷静に判断することの重要性を示し
た
ものと受け止めたい。」(引用)
客観的な事実の積み重ねにより物事を検証することは、私たちの生活レベルの問題にとっても重要なことです。
科学的な検証こそが、真実を浮かび上がらせます。
「沖縄ノート判決 軍の関与認めた意味は大きい」(毎日新聞 08/03/29)
◆朝日
新聞
「集団自決が起きた場所にはすべて
日本軍が駐屯しており、日本軍のいなかった所では起きていない。」(引用)
日本軍の命令があったと「信じるに相当な理由があった」とする判断は「沖縄戦の体験者の証言や学問研究を踏まえたもので
あり、納得できる。高く評価したい。」(引用)
「さらに驚かされたのは、元隊
長の法廷での発言である。『沖縄ノート』を読んだのは裁判を起こした後だった、と述べたのだ。」(引用)
茶番ではないでしょうか。
どうしても、誰を相手にしても「集団自決に日本軍の関与はなかった」と史実を捻じ曲げたかったようです。
「それにしても罪深いのは、この裁判が起きたことを理由に、昨年度の教科書検定で『日本軍に強いられた』という表現を削らせた文部科学省である。元隊長
ら
の一方的な主張をよりどころにした文科省は、深く反省しなければいけない。」(引用)
そのとおりです。原告と御用学者が大きな力に利用されているのではないでしょうか?
「集団自決判決―司法も認めた軍の関与」(朝日新聞 08/03/29)
地元沖縄の新聞は?
沖縄タイムス、琉球新報の社説は是非お読みください。
◆沖縄タイムス
「判決は、体験者の証言を踏まえた穏当な内容であり、今後この問題を考える上で里程標になるだろう。」(引用)
多くの「体験者」の証言が歴史を形作るものだと思います。
「今回の判決でもう一つ注目したいのは、体験者の証言の重みを理解し、さまざまな証言や資料から、島空間で起きた悲劇の因果関係を解きほぐそうと試みた
点
だ。」(引用)
さすが地元紙、住民の怒りや哀しみを十分知っています。
私たちは「集団自決」という言葉を使いますが、沖縄戦では一般に使われていたのは「玉砕」という言葉だったそうです。
国は、日本軍は「捕虜の辱めを受けずに玉砕せよ」と投降を許さない死生観を植え付けていた。それは軍の機密漏洩を心配したためであり、投降を呼びかけた
人や投降途中の人が、背後から狙撃され殺されています。
沖縄の新聞はそんな意味もこめて「集団自決」を括弧付きで表現してい
ます。
「『集団自決』と『日本軍による住民殺害』は、実は、同じ一つの根から出たものだ。」(引用)
「大江健三郎さんの『沖縄ノート』が発行されたのは復帰前の一九七〇年のことである。なぜ、今ごろになって訴訟が提起されたのだろうか。私たちはここ
に、
昨年の教科書検定と今回の訴訟の政治的つながりを感じないわけにはいかない。」
指摘どおりです。
闇の力を感じます。
最後に原告らに対して犠牲者に対してどう向き合おうとしているのかと厳しく問うています。
「ところで、名誉回復を求めて提訴した元戦隊長や遺族は、黙して語らない『集団自決』の犠牲者にどのように向き合おうとしているのだろうか。今回の訴訟
で
気になるのはその点である。」(引用)
「[『集団自決』訴訟] 史実に沿う穏当な判断 日本軍の関与を認める」(沖縄タイムス 08/03/29)
◆琉球
新報
「この日(3月28日)は63年前に渡嘉敷島で『集団自決』が起きた日である。同島では慰霊祭が行われ、島は深い悲しみに包まれた。惨劇を証言した体験
者は、証言を重
視した判決に報われた思いを抱いて
いるに違いない。座間味・渡嘉敷両村長も判決を納得し、評価しており、『沖縄戦』の本質を理解した妥当な判決だといえよう。」(引用)
日本軍の関与について判決を引きながらその「明白」な理由がかかれています。
@多くの体験者が、兵士から自決用に手榴弾
(しゅりゅうだん)を配られた
A沖縄で『集団自決』が発生したすべての場所に日本軍が駐屯していた
B日本軍が駐屯しなかった渡嘉敷村前島では「集団自決」が発
生しなかった
「戦争の体験者は『人が人でなくなる』と繰り返し語る。国家の思想が浸透され、個人の意思を圧倒する。タテの構造により命令が徹底され、住民は『軍
官民
共
生共死』を強要される。
この裁判によって、沖縄戦史実継承の重要性がいっそう増した。生き残った体験者の証言は何物にも替え難い。生の声として録音し、さらに文字として記録す
ることがいかに重要であるか。つらい体験であろう。しかし、語ってもらわねばならない。『人が人でなくなる』むごたらしい戦争を二度と起こさないため
に。」(引用)
「人が人でなくなる」戦争、その
「大江訴訟判決 体験者の証言は重い/教科書検定意見も撤回を」(琉球新報 08/03/29)
そして地方紙から一言ずつ引いていきます。
◆中日新聞
この判決を機に「今年で戦後六十三年。あらためて沖縄で起きた悲劇と向き合いたい。」としている。
そして、判決を下記のように評価しています。
「判決を何よりも評価すべきは『集団自決に軍が深くかかわった』とあらためて認定したことだろう。多角的な証拠検討が行われ『軍が自決用の手榴弾(しゅ
りゅうだん)を配った』という住民の話の信用性を評価し、軍が駐屯した島で集団自決が起きたことも理由に挙げている。沖縄戦を知るうえでこれらは欠かせな
い事実であり、適切な歴史認識といえよう。」(引用)
「原告は、遺族年金を受けるために住民らが隊長命令説をねつ造したと主張したが、判決は住民の証言は年金適用以前から存在したとして退けた。住民の集団
自
決に軍の強制があったことは沖縄では常識となっている。沖縄戦の本質を見つめていくべきだ。」(引用)
時間軸を変えてまで、人間の心まで貶めてまで変えなければならない歴史のようです。
そして教科書問題での文科省の責任も問うています。
「沖縄ノート訴訟 過去と向き合いたい」(中日新聞2008年3月29日)
◆神戸
新聞
「元守備隊長らは『耐えがたい苦痛』を提訴の理由にしている。発刊から三十年以上たって法廷に持ち込まれた背景に、二〇〇三年の有事法制や、昨年の教科
書
検定意見での『軍の強制』排除など、右傾化の動きと結びつける指摘がある。」(引用)
日本の右傾化の象徴のような裁判の提起です。
「道を踏み誤らないためにも、歴史と向き合う勇気を持つことが重要だ。今回の判決の重みをよくかみしめたい。」(引用)
歴史の事実を忘れないこと、歴史と向き合うことが平和のために大切なことと思います。
「集団自決判決/「関与」認定の意味は重い」(神戸新聞 08/03/29)
◆中国
新聞
「沖縄は、太平洋戦争で唯一の地上戦を体験し多くの尊い命を失った。住民の証言などで集団自決に軍がかかわってきたことは共通の歴史認識となっていた
が、
あらためて判決はそれを確認した形だ。」(引用)
「集団自決」は「共通の歴史認識」だったのです。
歴史認識を捻じ曲げようとする勢力には痛い判決だったことでしょう。
「『集団自決』判決 軍のかかわり重い判断」(中国新聞 08/3/29)
◆西日
本新聞
「『集団自決は軍の強制や誘導なしには起こり得なかった』とする沖縄の人々の事実認識を裏づける判決といえる。」(引用)
「歴史に多様な見方があるのは当然であり、史実を絶えず検証することは重要である。その結果、事実に誤りがあれば正す。それは歴史認識を誤らせないため
に
欠かせない作業であろう。
しかし、多くの事実や証言を経て、ほぼ国民の共通認識となっている歴史認識を見直すには、説得力ある根拠と慎重さが要る。明確な根拠と慎重さを欠いた昨
年の教科書検定の混乱と迷走が、その難しさを浮き彫りにした。」(引用)
「ほぼ国民の共通認識」をひっくり返すには、それなりの根拠を示す必要があったとの指摘です。
「歴史の状況見つめた判決 沖縄ノート訴訟」(西日本新聞 08/03/29)
◆信濃
毎日新聞
「沖縄の人々が語り継いできた多くの事実とも合致する。説得力ある判決だ。」(引用)
@米軍に捕まったときの自決用に手榴(しゅりゅう)弾を渡された、と体験者の多くが話している
A手榴弾は極めて貴重な武器だった
B集団自決が起きたすべ
ての場所に日本軍が駐屯し、駐屯しなかった島では自決は起きていない−。
「集団自決」の日本軍の関与を認定した以上の点について「無理なく胸に落ちる判断だ。」と評しています。
「今度の裁判は沖縄戦の歴史が日本人全体のものとして共有されていないことをあらためて浮き彫りにした。戦争の歴史を清算するために、やり残したことは
多
い。」(引用)
「集団自決判決 「軍の関与」を明快に」(信濃毎日新聞 08/03/29)
◆熊本
日日新聞
「沖縄戦では戦闘で、約十二万人の県民が犠牲になった。座間味、渡嘉敷両島での集団自決した人数ははっきりしないが、六百人前後といわれる。ほかに読谷
村
や伊江村など各地で集団自決が起きた。
せい惨な体験は、生存者の記憶に生きており裁判を機に貴重な証言が語られた。史実を検証し、誤りを正すことは重要だが、その大前提は歴史に誠実に向き合
うことだ。」(引用)
自分たちに都合の悪い「歴史」を無かったことにしようには「歴史に誠実にむきあう」誠実なしても、生存者がいる「歴史それには無理があります。
「沖縄集団自決訴
訟 「軍の関与」で一歩踏み込む」(熊本日日新聞 08/03/29)
◆南日
本新聞
「『沖縄ノート』がこれまでに30万部売れたのは、歴史を検証する中で過ちを繰り返すまいとの願いと、戦後民主主義への問い掛けが支持されたからだろ
う。
くしくも判決は、渡嘉敷島で惨劇が起きた日から63年目に下された。反戦の誓いを新たにするとともに、基地の島・沖縄の現状を見詰め直す契機としたい。」
(引用)
基地の島・沖縄の現状をもっと学びたいと思います。
「[集団自決判決]
軍の関与を明確に認定」(南日本新聞 08/03/29)
◆高知
新聞
「この裁判は沖縄戦をめぐる史実論争に波紋を広げたが、見逃せないのは教科書検定に与えた影響だ。
裁判が始まった二〇〇五年ごろまでは『軍の強制』を明記した教科書は検定に合格していた。軍の命令も集団自決の一因だったとの認識に学界でもほぼ異論が
なかったことをうかがわせる。
しかし、昨春の検定では日本軍が強制したとの記述に修正を求める意見が付いた。方針転換について文部科学省は今回の訴訟を論拠の一つに挙げたが、沖縄県
民から強い抗議を受けると、『関与』は認める方向に軌道修正した。」(引用)
裁判の提起と教科書検定のつながりには深い関係がありそうです。
「【集団自決判決】歴史の深さ検定にも」
(高知新聞 08/03/29)
◇愛媛
新聞
「この訴訟は文部科学省の教科書検定にも大きく影響した。訴訟が起こされるまでは『軍の強制』を明記した日本史教科書は検定に合格しており、命令説はい
わ
ば『通説』だった。
ところが、昨年三月に公表された検定審議会の意見は「軍が強制」という記述を誤解を生む表現として否定した。この裁判が係争中だったことも理由の一つと
された。沖縄の戦争体験者たちが反発し、島ぐるみの抗議に発展したのも当然だ。」(引用)
多くの新聞が、この裁判と教科書検定のふしぎな関係を取り上げています。
(渡嘉敷島での63回目の慰霊祭のこの日)「元隊長ら
の主張は腹立たしいものだっただろう。あの日沖縄であったことを、ありのまま後世に伝えていかなければならない。」(引用)
「集団自決訴訟 軍の深い関与認めた妥当な判決」(愛媛新聞 08/03/29)
◆新潟
日報
この判決は二つの重要な問題を含んでいたとし、一つ目は強化諸問題、そして「二つ目は、出版物と名誉棄損の関係である。表現の自由とも絡む問題だ。記載
された事柄が真実と断定できなくても、著者が真実と信ずる理由が認められれば
名誉棄損は成立しないとの判示は、説得力がある。」(引用)
「集団自決訴訟 『軍関与』は当然の判断だ」(新潟日報 08/03/29)
◆北海道新聞
「裁判で真に問われたのは、集団自決の悲劇を招いた軍国主義の異常さであろう。軍命の有無や個人の言動に目を奪われては、沖縄戦の真実を見逃すのではな
い
か」
「沖縄戦の真実」を、ヒロシマ・ナガサキの悲劇と同じように忘れてはなりません。
軍隊は国民を守るものではありません。彼らが守るのは「国家」という組織を守るものです。
「集団自決判決 歴史を見る『冷静な目』」(北海道新聞 08/03/29)
◆判決
に否定的な社説を書いた新聞
読売、産経は相変わらず、彼らが代弁すべき人たちのために歴史を捻じ曲げようとしています。
◆読売
新聞
「軍の『強制』の有無については必ずしも明らかではないという状況の
下では、断定的な記述は避けるべきだというのが、検定意見が付いた理由だった。
史実の認定をめぐる状況が変わらない以上、『日本軍による集団自決の強制』の記述は認めないという検定意見の立場は、妥当なものということになるだろ
う。」(引用)
なんとしても、「集団自決」への日本軍の強制はなかったとしたい姿勢です。
「しかし、渡嘉敷島の集団自決の生存者を取材した作家の曽野綾子氏が1973年に出した著書によって、隊長『命令』説は根拠に乏しいことが明らかになっ
た。」(引用)
◇1970年:大江健三郎「沖縄ノート」初版
◇1973年:曽野綾子「ある神話の背景」初版
◇2003年:元守備隊長などによる名誉毀損の提訴
◇2007年:教科書検定で「集団自決」への「日本軍の強制」を「修正」するよう検定意見が出される
大江健三郎の著作から33年、曽野綾子の著作から30年も経て提訴された裁判、世の中の右傾化がこのような主張を許しています。
「集団自決判決 『軍命令』は認定されなかった」(読売新聞 08/03/29)
◆産経
新聞(主張)
「この訴訟で争われた最大の論点は、沖縄県の渡嘉敷・座間味両島に駐屯した日本軍の隊長が住民に集団自決を命じたか否かだった。だが、判決はその点をあ
い
まいにしたまま、『集団自決に日本軍が深くかかわったと認められる』『隊長が関与したことは十分に推認できる』などとした。」(引用)
「日本軍の関与の有無は、訴訟の大きな争点ではない。軍命令の有無という肝心な論点をぼかした分かりにくい判決といえる。」(引用)
他紙が引用している判決の中には「集団自決には軍が深くかかわったと認められ、隊長だった原告の関与が十分に推認でき
る」とあります。
軍の関与はあるが軍命は認定されなかった。即ち元隊長らの命令はなかったとの論理は判決を読めば解るように思います。
牽強付会というのでしょうか。
「沖縄集団自決訴訟 論点ぼかした問題判決だ」(産経新聞 08/03/29)
◆北國
新聞
「集団自決について、三十数年前に現地で取材した作家の曽野綾子さんが原告の主張を裏付ける話を月刊雑誌に連載し、書物にしたほか、沖縄出身のルポライ
ターによって発表されている。それらによると、集団自決をだれが命じたのか、自決に使われた手りゅう弾がどうして住民の手に渡ったのかなどがはっきりしな
いことに加え、生き残った人たちが相談して次の二つの理由から軍のせいにすることにしたという内証の話があったそうだ。一つは島から出征した人が復員して
くると、肉親を死なせた者はだれかとの追及が始まり、人間関係が崩壊するとの心配であり、もう一つは軍の命令にしてしまえば、多少なりとも援護法に基づく
お金がもらえることだったという。」(引用)
原告の主張を書き写したような論理は、歴史を誠実に見ようとしない不誠実な態度のように
思います。
「集
団
自決訴訟判決 真実分かったといえぬ」(北國新聞 08/03/29) |