08/08/08
数字に騙されない。世論調査の怪
テレビや新聞で報道されている
ことは、まず
疑って見なければならないと思っています。
帰省ラッシュの新幹線ホームはローアングルの望遠カメラで写すと混雑さが強調されます。定休日の商店街を映せば客のいないシャッター通りの寂しさが強調
できます。
確かに報道されていることは「事実」の一部ですが、そこには報道する側の例えば「帰省ラッシュは混雑するもの」「商店街
は潰れそう」との意志が働いています。
福田内閣が改造され何人かの顔ぶれが変わりました。新聞各紙は内閣支持率などの世論調査をしその結果を報道しています。
その各紙の調査結果には「天の声」が働いているような数字となっています。
内閣支持率、不支持率などをまとめると下表のようになります。
|
支
持率
|
不
支持率
|
今
回
|
前
回比
|
今
回
|
前
回比
|
朝
日新聞
|
24%
|
±0%
|
55%
|
-3%
|
毎
日新聞
|
25%
|
+3%
|
52%
|
-2%
|
読
売新聞
|
41.5%
|
+14.7%
|
47%
|
-14.3%
|
日
経新聞
|
38%
|
+12%
|
49%
|
-14% |
産
経新聞
|
29.3%
|
+7.6%
|
51.5%
|
-9.7%
|
共
同通信
|
31.5%
|
+4.7%
|
48.1%
|
-5.4%
|
◇内閣支持率は最大41.5%(読売)から最小24%(朝日)までの開きがあります。
◇不支持率は夫々47%(読売)、55%(朝日)とあまり差はありませんが、前回比は読売では14.3%とも改善したのに、毎日では2%しか改善していま
せん。
◇支持でも不支持でも無い人(どちらでもない人)の割合は以下のようになります。
朝日:21.0ポイント
毎日:23.0ポイント
読売:11.5ポイント
日経:13.0ポイント
産経:19.2ポイント
共同:20.4ポイント
どちらでもない人の割合の低い新聞(読売、日経、産経)では支持率が高くなり、どちら
でもない人の割合の高い新聞(毎日、朝日、共同)では支持率が低くなっています。
設問に差があることが伺えます。態度(意志)を明確に示さない人にも、更に「どちらかというと・・」と追い込むのと曖昧な回答は曖昧とするのでは大きな
違いがあります。
各紙の内閣支持率と前回比をグラフで表すと朝日、毎日のグループと、
読売、日経、産経のグループに二分されることがはっきりします。
世論調査は誰かの「意志」に基づいて形成されていると思うのは臍の曲がりすぎでしょうか?
◆他のメディアはこの結果をどう見ているのでしょう?
◇「マガジン9条」の指摘
(引用)「ね、おかしいと思うでしょ? どんなに読者層が違うといったって、別に読者だけに限定して調査を行っているわ
けじゃない。それなのに、こんなに支持率が
違う。上昇ぶりも、0%から14.7%と天地ほどの差。やはりヘンです。」
そうですよね。世論調査は新聞社が自社の読者に対して行っている「読者意識調査」とは違いますから。
(引用)「となれば、これはどういうことなんだろう。質問の仕方に、ある種の仕掛けがあったのか。そうとでも考えるしかないですね。世論調査なんか信じ
ちゃいけな
い、のかもしれません。」
素直に考えれば「ある種の仕掛けが」あると思うのが普通の感覚です。「信じちゃいけ」ません。
「世にも不思議な世論調査」(マガ
ジ
ン9条 08/08/13)
◆JCASTの指摘
新聞によって、支持率、不支持率が大幅にばらついていることを指摘し、「閣僚からも『いったい、世論調査ってなんだろうか』と皮肉も聞こえてくる」(引
用)と報じています。
また、民主党の鳩山由紀夫幹事長と、町村官房長官のコメントを紹介しています。
(鳩山)「早晩、『福田政権はダメだ』と、世論が烙印を押すときが来るだろう」
鳩山さんは、支持率が回復した新聞の立場に立っているようで、「一時的なもの」との印象を与えたかったようですね。
「支持率は回復していない」との立場もあったのでしょうが。
(町村)「読売新聞は(支持率が)大幅に上がってますよねー。各社によってこれだけ数字が違うと、いったい世論調査って何なんだろうかと、いささかの不
信感を持ちますね。うーん、わからないですねー」/「だから、『あまり数字を気にして政治をしてはいけない』ということの戒めだと思っています」
こういう人が、数字を自分たちの都合の良いように使うのです。
「改
造内閣支持率バラバラ マスコミ世論調査信用できるのか」(JCAST 08/08/04)
◇産経新聞の指摘
産経新聞はこの数字のばらつきをどう見て居るのでしょうか。
各紙の調査結果のばらつきを指摘したあと、埼玉大の松本正生教授に二つの要因があると指摘させています。
▽福田内閣に明確なイメージが無いので支持、不支持のどちらかの明確な意見をもっていないからぶれる。
そうでしょうか?
福田内閣に明確なイメージがないので、支持、不支持のどちらでもない人が多いことは同感です。
でも、それは調査するメディアによって差が出ることの根拠ではないように思いますが。
▽明確な意見をもっていない人に支持、不支持のどちらかに「追い込んで」で回答を得るかどうかでぶれる。
前項のように、どちらでもない人を「どっちかに決めろ」と迫った結果というのは一理あります。
支持率が24%と41.5%と1.7倍も違うことの説明にはなりません。
(引用)「松本氏が『同じ回答者が調査している報道機関によって、回答を変えることはまずないし、報道機関名を聞いて回答を使い分けることはないだろ
う』とも語り、報道機関の『政治色』が調査結果に反映するという『うわさ』を否定した。」
産経新聞は、松本教授に「報道機関に政治色がない」ことを言わせたかったようですが、松本教授は回答者が報道機関の名前で回答を変えることは「まずな
い」と述べており、「報道機関に政治色がない」とは言っていません。
「改造の効果あった? 内閣支持率 調査結果まちまち」(産経新聞 08/08/04)
◆各紙に世論調査結果報道
◇朝日新聞
内閣支持横ばい24% 麻生幹事長高評価 本社世論調査
◇毎日新聞
毎日新聞世論調査:どちらが首相にふさわしい? 小差ながら…福田さん小沢氏を再逆転
◇読売新聞
内閣支持41%に好転、「麻生幹事長」評価66%…読売調査
◇日経新聞
内閣「支持」38%に上昇 日経世論調査
◇産経新聞
福田改造内閣支持率29・3% 政権発足後初の上昇 産経・FNN合同世論調査
◇共同通信
改造内閣支持31%、やや回復 全国電話世論調査
◆世論調査結果の使い方
町村官房長官のコメントの項で書きましたが、自分たちの都合によって数字を「客観性の高い民意」であるかのように言ったり、都合の悪い数字は無視したり
します。
現役閣僚までも応援に投入した知事選での敗北は「地方政治のこと」と知らぬ顔、当選すれば「民意」だと言うのに似ています。
◇産経新聞の場合
さて、産経新聞は「主張」(社説)で「内閣支持率を政策遂行のテコにしろ」と激を飛ばしています。
(引用)「昨秋の政権発足から下落、低迷を続けてきた内閣支持率が、ようやく上向きに転じた形だ。国政の停滞や将来への
不透明感が増す中で、内閣改造を政策遂行のテコにしてほしいという期待がうかがえる。」
自作自演の様相です。
(引用)「『消費者の目線に立った行政』はだれもが歓迎する。では、具体的にどんなメリットがもたらされるのか。消費者には漠然としすぎていて、まだよ
く分からない。」
そのとおりです。「消費者の目線に立った行政」の意味が消費者にはよく分かりません。
彼らの言う「消費者」ってだれでしょうか?是非、社会弱者を「消費者」の中に入れて欲しいものです。
「内閣支持率 政策遂行へのテコにせよ」(産経新聞「主張」 08/08/05)
※日経リサーチ社が「日経電話世論調査」の方法をWebサ
イトに公開しています。
標本の抽出方法や電話での調査方法、集計方法にかかる技術的なことだけで、世論調査の内容まで踏み込んだものではありません。
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