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08/11/24 他人の不幸は蜜の味
 マスコミにとって他人の不幸は蜜の味、生活の糧のようで す。
 さいたま市と中野区の元厚生事務次官宅襲撃事件で「自分がやった」と男が出頭したら、今度は容疑者の身辺などをほじくり出して弄んでいます。

◆テロはどこに行った?
 マスコミは、男が出頭し「動機は3数年前に保険所に犬を殺されたこと」などと訳のわからぬことを言っていると発表されると、今まで大騒ぎしてきた「テロ 騒動」はどこへやら、容疑者の精神状態だとか、経歴だとかを引っ張り出して侃々諤々と他人の不幸を弄んでいます。

 この男の出頭してきた様子を見聞きすれば、この男(あるいはこの男一人)の犯行ではなく背後関係があるような気がします。深くて複雑な動機が隠されてい るのかもしれません。

◆容疑者の父親
 4数歳にもなった子どもの犯した犯罪の責任が親にあるのでしょうか?
 マスコミは容疑者の実家に押しかけ、父親を引きずりだし「死んでお詫びする」的な発言を引き出し報道しています。

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 ○○容疑者の出頭から6時間近くが過ぎた23日午前3時ごろ、山口県柳井市の自宅前で取材に応じた
○○容疑者の父親(77)は「我が子がこんなことをす るとは。遺族に命をささげたいぐらい」と肩を落とし、「息子には自分で腹を切れ、のうのうと
生きているな、と言ってやりたい」と
悄然として話した。
---------------------(読 売新聞 08/11/24 )※引用者が実名を
○○表記とした。

 わが子が犯した事件の発覚後6時間あまり、興奮して尋常ではなかったであろう父親の言葉をそのまま垂れ流すのはいかがな見識でしょうか?

 何歳になっても、子どもは親の所有物であり、子どもを監督責任する義務が親にあるということ。一人の人間である前に「
○○さんの息子」であるとい うことのようです。

 いつも引き合いに出す、円地文子さんの小説「食卓のない家 」では、犯罪を犯した息子に対して「成人に達した息子の犯罪は本人の問題で家族は一切関係ない」と社会に対して謝罪しなかった父親とその家族を描いていま す。

◆マスコミの思い上がり
 権力犯罪などを除き、事件報道は被害者も加害者も匿名で報道される方が良いと思っています。
 この事件報道をテレビで見ていた時、身柄を移送される容疑者に対して「○○〜」と呼び捨てで叫んでいました。野次馬なのかマスコミの人間なのかわかりま せんが。
  誰が人を呼び捨てで呼んで良いのでしょうか?

 マスコミ村の住人に対しては容疑者となっても「容疑者の○○プロデューサー」などと遠慮がちに呼んでいます。
 JR西日本の尼崎脱線事故に関わる記者会見の席上、新聞記者がJR西日本の幹部に暴言を吐いたことを思い出しました。
 「『記 者がJR西日本幹部に暴言』 読売新聞が謝罪 」(朝日新聞 08/05/13)


 マスコミは何様のつもりなのでしょうか?
 こんな人たちに、庶民の立場に立って政治や事件を論じることはできないでしょう。

◆権力からの独立
 マスコミの報じる事件報道の殆どは警察の発表情報です。
 警察がマスコミを通じて行う情報コントロールに私たちも毒されているのです。
 警察発表だけで報道が作られていると悟られるのが嫌なのか、警察署の前に記者を立たせて原稿を読ませるような
「生中継」が演じられています。

 ジャーナリズムの使命の一つである権力の監視機能は警察も対象であるべきです。
 ANNの警察裏金事件や読売新聞の警察官ネコババ事件などはジャーナリズム健全な姿だと思います。

 今日(24日)の朝日俳壇、朝日歌壇から素人 の気に入った句や歌をいくつか紹介します。

◆枯芒一群残しビル迫る(白河市・飯村微光:大串章選)
 大阪や京都でも市街地には高層のビルやマンションが林立しています。
 そんなビルの間の空き地には背高泡立草や芒などの雑草が勢いよく生息しています。

◆水平線崩し沖より時雨れけり(熊本市・山澄陽子:稲畑汀子選)
 どんな光景なのか想像してみました。
 遠くの水面を叩くように時雨が海上を進んでいるのでしょうか?
 時間の経過が「絵」に表されているような感じがしました。

◆紅葉に不満発する突如なり(熊谷市・内野修:金子兜太選)
 金子兜太さんは「突如不満爆発。紅葉に触発されたか。」と評されています。
 私の駄句は<裏切りの血に染まりたる紅葉かな>です。
 紅葉の「紅」が不満を爆発させたり、血や裏切りを連想させるのでしょうか?
 ※素人俳句ブログに参加しています。よろしければ「17音の残日録 」を。

◆猫嫌ひ猫背もきらひ冬に入る(四日市市・盛野たね弘:金子兜太選)
 参加している俳句のブログには猫好きの方が多く、猫の写真と句が毎日のように掲載されています。
 猫嫌いで猫背の老人には、猫可愛がりの句には共感し難い句もありますが。

◆長崎を路面電車が走りいてあやとりのごと電線わたる(調布市・水上香葉:佐佐木幸綱選、高野公彦選)
 街中の空中に張られた電線を材にして一句できないかと想を練っていましたが中々できずにおりました。
 「綾取り」との着想はありませんでした。

◆朝霧の白き魔物の忍び寄る未明の獄舎は古城のごとし(アメリカ・郷隼人:高野公彦選)
 アメリカで獄にある郷隼人さんの歌です。
 一読時にはヨーロッパの古城を想いましたが、歌に詠まれたのは日本のお城でしょうね。

◆呆けしと云はずに置かう老い夫が少年の日を語るかがやき(南魚沼市・五十嵐とみ:永田和宏選)
 老いてきて一番の心配は呆けることです。
 呆けてしまえば、周りに迷惑をかけ、人としての誇りにも思い至らず生きながらえねばなりません。
 自ら死を選ぶ道もありません。
 呆けた夫に連れ添う優しい妻の目ですね。

◆難しい言葉
 相変わらず難しい日本語が多いこと、自分の物知らずにあきれています。

◇寒柝(かんたく)
 夜回りの拍子木のことだそうです。冬の夜に子ども会で夜回りをしたことがありました。
▽風の玉ねらひ寒柝(かんたく)放ちけり(羽村市・寺尾善三:長谷川櫂選)

◇邯鄲(かんたん)
 鈴虫に似たコオロギのなかまの昆虫だそうです。
▽邯鄲(かんたん)の音(ね)の絶えし宵電話よりこぼれる幼のまんまるい声(東京都・狩集祥子:高野公彦選)
 
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