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08/12/15 朝 日俳壇、朝日歌壇より
 今週(12月14日付)の朝日俳壇、歌壇より気になった 句や歌を紹介します。

◆朝日俳壇
◇毛糸あむ愛の賛歌をききながら(東久留米市・立沢文江:長谷川櫂選、大串章選)
 エディット・ピアフの「愛の賛歌」を聴きながら手編みをする女性の姿、暖炉でも燃えているのでしょうか?
 私もクミコさんの「愛の賛歌」(岩谷時子訳)を聴きながら。。
 
 ♪固く抱きあい 燃える指に髪を
  からませながら いとしみながら
  口づけをかわすの 愛こそ燃える火よ
  私を燃やす火 心溶かす恋よ

◇トンネルを抜けて全山秋の中(多摩市・田中久幸:長谷川櫂選)
 旧道の峠を貫通したトンネルの先は別の国、標高ごとの紅葉のグラデーションとは違った彩りなのでしょうね。「紅葉」という言葉が使われていないのに「秋 の中」で紅葉を連想しました。うまい。
 私は、トンネルの暗さ、狭さ、先の世界と心象風景を詠むには便利?で、トンネルの写真を写真俳句ブログ によく使っています。

◇時雨てはすぐに昏れゆく山泊まり(北見市・藤瀬正美:稲畑汀子選)
 どんな山の宿なのでしょう。
 鄙びた山の温泉宿に時雨に濡れて着いたと思えばもう昏れてきた。こんな旅がしてみたいですね。

◇冬日差雲の去来に従ひぬ(香川県・三宅久美子:稲畑汀子選)
 舞台の照明が明るくなったり暗くなったりしているのは、光の所為ではなく光を遮るものの所為だと発見する。
 照るも曇るも太陽の所為ではなく、雲の所為だったのですね。

◇郷土紙にくるんでありぬ泥の葱(久慈市・和城弘志:金子兜太選)
 知人からでしょうか、故郷の肉親からでしょうか、宅配便で届いた箱の中には地方紙に包まれた泥葱が、同じような経験は多くの人がしていることでしょう。 ああ、こんな風に詠むんだと思い知らされました。

◇柴刈りも洗濯もせで紅葉狩り(柏崎市・須田久男:金子兜太選)
 里山あたりで薪用の柴を刈り集めることも洗濯もせずに紅葉狩りとは、家事をおいての遊山かと読みましたが、詠み人は男性のようです。
 柴刈りはともかく洗濯とは一人住まいの方でしょうか?気になりました。

◆朝日歌壇
◇皺深くまで生きてきて知る惚(ぼ)けと惚(とぼ)けが同じ字のこと(八王子市・相原法則:馬場あき子選)
 確かに。ぼけるも、とぼけるも「惚」という字です。
 因みにほれる(惚れる)も、こうこつ(恍惚)も同じ字ですね。
 私の一番の心配は「惚ける」こと。

◇駅の裏文房具売る蛍雪堂ちいさき灯りともりて日暮れぬ(豊中市・佐伯久光子:馬場あき子選)
 日本中、どこに行っても郊外に大型のショッピングセンターができて、街中の商店は壊滅状態です。
 これも「改革」のおかげです。
 今ではもう見ることも難しくなった昭和30年、40年代のセピア色した風景を見るようです。灯りは金属の傘に裸電球でしょう。

◇五位さぎは己が孤独を愛(かな)しむかカモメの群に背を向けて立つ(萩市・斉藤定:馬場あき子選)
 ゴイサギは昼間はあまり活発に行動しない夜行性の鳥のようですね。
 群舞するカモメに背を向けて孤高の姿で、沈思黙考している様子。

◇まなかいにひとりごちつつキーを打つ夫の孤独を見ている孤独(新発田市・和田桃:佐佐木幸綱選)
 「まなかい」という言葉がわかりませんでした。「目交い」、目の先、目の前の意味だそうです。
 同じ部屋で夫はパソコンに向かってキーを打っている、「私」はそれをぼんやりと見ている。どちらも「孤独」とあります。
 夫は孤独に見えるだけ、パソコンの画面の向こうに誰かが居る。「私」の孤独は深い、パソコンウィドー(Personal Computer Widow)ですね。

◇せうぢよきをすごしたるまちひきふねを まどろみのなかつうくわしてゆく(佐倉市・横山鈴子:高野公彦選)
 平仮名ばかりの歌です。仮名漢字混じり分にするとこんな風でしょうか・
 <少女期を過ごしたる町曳船を 微睡みの中通過してゆく>
 選者は「少女期を思い出しつつ曳船の町を通過するという甘やかな歌。平仮名表記が読者を緩やかな読み方にいざなう。」と評されています。
 一見、何?と思いましたが、仮名漢字交じりの歌でもよいのではと思うのは素人の所以ですね。

◇松代(まつしろ)の大地下壕の岩壁に誰が書きしか都市の名の「大邱(テグ)」(兵庫県・北林稔:高野公彦選)
 「松代大本営」跡の地下壕の「大邱」の文字が刻まれていた。悲しい歴史の事実をしっかりと見なければなりません。
 敗色濃厚だった先の大戦末期、長野県松代町(現長野市)に「松代大本営」という地下シェルターが作られていました。その工事には強制連行などで連れてこ られた7000人もの朝鮮人が働かされていました。
 また、工事を監督する人たちのための「慰安所」が作られ若い朝鮮人の女性が性の奴隷として働かされていました。
 また、行ってみたい町が一つできました。歴史や見学についてはこちらのサイト(松代大本営と「慰安所」 )に詳しく掲載されています。

◇車椅子押せば押さるるままとなりこんなに素直な妻だったのか(東京都・太田良作:永田和宏選)
 今回、一番魅かれた歌でした。
 病気か怪我か、老いた妻の乗る車椅子を押している。車椅子の妻は自分の気持ちを表すことに疲れ果てたのか?妻の「素直」さが寂しい風景です。もっとゆっ くり、右に左に、、、と我侭を言ってくれれば罪滅ぼしにもなるのにと私は思います。

◆郷隼人さん
 アメリカで獄中にある郷隼人さんの歌は日本への郷愁が歌われることが多いです。
 先週の歌は風呂吹きと藷粥でした。
風呂吹に藷粥(いもがゆ)、鮟鱇鍋などを想い浮かべる時雨るる夜は
 それに応えて、今週の俳壇に下記の句が入選していました。
◇焼薯も食べてみたかろ郷隼人(広島市・安永達生:長谷川櫂選)
 今週の歌は。
◇ハロウィーンの夜(よ)に独房の格子越しにキャンディーをねだるおかまの囚友(とも)は(アメリカ・郷隼人:馬場あき子選、佐佐木幸綱選)

◆女性句
 先週、稲畑汀子さんの選には女性句が多いようだと書きましたが、今週も入選10句中6句が女性と思われる方の句でした。
 因みに、他の選者(男性)が選ぶ女性句は2、3句でした。
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