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09/01/05 朝日俳壇、歌壇から
  5日付け朝日新聞の俳壇、歌壇より気になった句や歌を紹介します。
 今週は気になるにもかかわらず、呆けた脳ではよく理解できない句や歌ばかりでした。

◆朝日俳壇
◇熱燗や屋台に名乗ることもなく(長崎市・石川玄能:稲畑汀子選)
 屋台の飲み屋も行政の規制によってだんだん少なくなってきました。

 私の知る屋台?は有楽町のガード下や福岡の天神界隈などほんの少しですが、
居酒屋、立ち飲みと読み替える と句の雰囲気はよく分かります。何軒かの居酒屋に通っていますが氏素性を明かすことはありません。氏素性を明かさずに肩を張らずに飲める場所は男には必要 かもしれません。

◇仰ぐたび人は老いゆく冬桜(たつの市・正田子温:稲畑汀子選)
 狂い咲きや返り花なら見たことはありますが、
冬桜というのを見たことがありません。
 毎年時期を決めて咲く花を見る度にひとつずつ歳を重ね老いていきます。確 実に。
 老いを楽しむ気になるときもありますが、老いをネガティ ブなものに感じることの多いこの頃です。

◇群れないで歌える人の雪の舟(福井県・下向良子:金子兜太選)
 十分に理解できませんが心に残る句です。
 私は、群れることが好きでなく、群れることができなくて人との付き合いも薄く浅いものしか作れません。
 群れないでいることは辛いことです。

◇気がつけば枯蟷螂のごとき我(豊田市・小澤光洋:金子兜太選)
 電車の窓に映る老いた己を見て驚くことがあります。
 自身の健康状態や光の具合などによってボロボロの自分が浮かび上がります。
 老いは汚らしくおぞましいと思う一瞬です。
 ところで「枯蟷螂」をネットで探してみると「交尾の終わった雌は雄を食べ、冬になり周囲が枯れ色になってくると緑色から枯葉色に変色(保護色)した蟷 螂」だそうです。
 枯蟷螂が雄を食い殺した雌の姿とすれば少し違和感がありました。

◇着膨れという幸せのなかにゐる(盛岡市・小野穣:長谷川櫂選)
 「着膨れ」で一句作りたいなと思わせる句でした。
 寒さを凌ぐために重ね着をする、重ね着ができる幸せとい うことでしょうね。
 時々、垢にまみれた服を重ね着したホームレスを見かけることがあります。

◇次々に大根の葉の流れゆく(宮崎市・飯島忠夫:大串章選)
 選者の評に「虚子の代表作<流れ行く大根の葉の早さかな>が胸中にある。この句、虚子の句に和してくれるのだろうか。」とありました。
 この句の大根の葉が流れていくのは大きくて速い流れではなく、水面が近くゆったりと流れる運河のような流れをイメージしました。
 島田洋七さんの「がばいばあちゃん」で、がばいばあちゃん(洋七さんの祖母)がクリークを流れてくる野菜を拾っていた佐賀市のクリークを思い浮かべまし た。

◇日記買う己の中に敵の居て(山形県・新野裕子:大串章選)
 この句も難しい句です。選者の評に「己の中の敵が買わせる。その鋭い言葉を聞きたい気持ちもあり、毎年日記を買う」とありました。
 日記をつける習慣を持っていません。手帳にメモをする程度の毎日で、今年は旧暦の手帳を使い始めました。

◇熱燗や母美しく歳重ね(東京都・蜂巣厚子:大串章選)
 難しい句が続きます。
 歳を重ねた母が「私」のために熱燗をつけてくれたのでしょうか?その母を美しく老いたと「私」は見ている。
 未だ母が台所の主権を持っていた頃に帰省すると「酒は飲み過ぎるな」と言いながら繰り返し燗をつけてくれたことを思い出しました。

◆朝日歌壇
◇一片(ひとひら)の赤い紙来て往きし人ら思えばなんの栗鼠虎如き(秩父市・高橋秀文:高野公彦選)
 選者の評は「悲しい自嘲の歌。作者自身が栗鼠虎(リストラ)されたのである」とありました。「栗鼠虎」を「リスとら」即ちリストラと読むのだそうです ね。こういう使い方を知りませんでした。
 私も失業者、徴兵されて白木の箱で返された人たちに比ぶれば、失業ごときは何のこともないということでしょうが、両者は違う次元の悲しみであり不幸で す。

◇ひとりずつ増えひとりずつ欠けてゆき満ちていし日は過去形の家族(筑紫野市・岩石敏子:佐佐木幸綱選)
 日本の多数の家庭はこの歌のように一組の男女が愛し合い一家を成し、子をもうけ、子は長じては家を出て一家を成していく、やがて老いた夫婦は二人だけに なっていきます。
 そして、二人きりの老々介護、独居老人となっていきます。
 我が家も同様の状況です。

◇公田耕一さん(住所:ホームレス)の歌
 住所欄に「ホームレス」と書かれた公田耕一さんの歌が2首掲載されていました。

 パンのみで生きるにあらず配給のパンのみみにて一日生きる(高野公彦選、馬場あき子選)

 行政やホームレスを支援する人たちが配る食料にパンのみみがあるのでしょうか?
 どういう比喩なのでしょうか?

 水葬に物語などあるならばわれの最期は水葬で良し(永田和宏選)

 選者の評には「前衛短歌の幕開けとなった塚本邦雄の記念碑的な歌集『水葬物語』を下敷きにしている」とありました。無教養ものには理解できませんでし た。

◆第25回朝日俳壇賞
 08年の入選歌から4人の選者がそれぞれ1首を選ればれています。

◇高野公彦選
 おひさまとコブクロの歌と子の笑顔私の心のサプリと思う(赤穂市・内波志保)

◇永田和宏選
 宙に浮く力士のむこうの観客の大口とじることなき写真(仙台市・坂本捷子)

◇馬場あき子選
 クマと絵本置かれてそこだけ色を持つハローワークのマザーズコーナー(沼津市・森田小夜子)

◇佐佐木幸綱選
 寸寸を何と読むかと娘(こ)の問いぬ秋葉原悲しずたずたと読めば(名古屋市・諏訪兼位)

 森田小夜子さんのハローワークの歌は、行政の欺瞞性を歌っていて記憶に残っていた歌でした。
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