09/03/07
「自動車絶望工場」と現代
老いてからの肉体
労働はなんともきついものです。
筋肉痛の治まることはなく、飲酒後はすぐに爆睡しサイトの更新も進みません。
▼ワールドベースボールクラシック(WBC)でメディアは大騒ぎ、考えない国民を作り出すプロパガンダが進んでいます。ぼんやりしていると搾りつくされて
しまいます。
▼民主党の小沢代表にかかる西松建設からの不正献金疑惑に強制捜査が始まりました。
少なくとも6ヶ月以内に総選挙が予定され、不人気の自公・麻生内閣に代わって民主党が政権に就くのではと予想されるこの時期の強制調査は、政権党の謀略
の匂いもプンプンです。
民主党をはじめ、自民、改革クラブ、国民新党にも及ぶ全容の解明を期待したいものです。
金権政治の温床であるとして企業献金を禁止し、税金で政党を養うという政党助成金という制度を作ったにもかかわらず、政党助成金は受け取る、企業献金も
受け取るでは開いた口がふさがりません。
一切の企業献金は禁止とすべきではないでしょうか。
西松建設の社員の個人献金を装った企業献金がされていたと報じられていましたが、私の経験を少し書きおきます。
NTTグループの会社の下級管理職に昇進した時、総務課長から自由民主党の党員になるようにと半ば強制的に依頼されました。3ヶ月に一度程度数千円の
「党費」を
総務課長が集めていましたが、いつの間にか何の通知もなく集金もなくなりました。
「党費」に相当される金員が給与として補填されていたことはありませんでしたが。
▼日立製作所が無給休日を儲け賃金カットを労使で協議に始めたと報じられています。
メディアはこの賃金引下げを、日立の言い分どおり「ワークシェアリング」だと報じています。
「首を斬るか、賃下げか、二者択一だ」と迫る経営者の脅しです。
雇用の機会を増やすためと提唱されている「ワークシェアリング」を賃下げの口実に使うと
は
敵なが
ら天晴れなことです。
▼定額給付金の至急が始まっているようです。
ニュース番組を見ると紅白の金封に入れられていました。なんか変?!
公平性はともかく、支払った税金が返されているだけのこと、めでたいことなど何もないと思いますが。
36年前、トヨタ
自動車で季節工として働いた経験をまとめたルポルタージュ「自動車絶望工場」の著
者・鎌田慧さんのインタビュー記事(鎌
田慧さんに聞いた)が「マガジン9条」に掲
載されていましたので紹介します。
◆多重層化する労働現場
鎌田さんは「絶望工場」の時代は、本工(社員労働者)の下に期間工がいただけの構造だったのが現在は多重層化していると言われています。
社員労働者 > 期間工 > 派遣労働者 > 外国人「研修生」
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ただ、あのころはその期間工の「下」には誰もいなかったんです。それが、今はその下にもう一つ「層」が作られて、そこに派遣労働者が入ってくるというこ
とになった。僕が現場にいたときよりも、もっとひどい状況に置かれた労働者が現れてきたというわけです。さらにその下に、ブラジルなどの日系労働者や、中
国やベトナムなどから来た「研修生」もいるわけで、日本の労働構造全体がものすごく多重化して、重層構造になったと言えると思います。
--------------(引用)
このような雇用の多層化、複雑化はは、労働者に「自分より下がいる」と思わせることと、搾取している相手が明確になり難いという側面があります。経営側
にはありがたいことでしょう。
◆賃金の格差
インタビューの文章から36年前の「絶望工場」の時代と現代の労働者の賃金を比べてみると以下のようになります。
社員労働者と期間工(現代は派遣労働者)の格差は1.4倍から4倍にまで拡大しています。
|
「絶
望工場」の時代
|
現
代
|
収入
|
正
規雇用者
|
10
万円/月
|
800
万円/年
|
非
正規労働者
|
7
万〜7万5千円/月
|
200
万円/年
|
格差
|
1.
3倍〜1.4倍
|
4
倍
|
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それ(工場のロボット化:引用者注)によって、労働者の存在自体がすごく軽いものになっちゃったんですね。それに伴って、期間工のさらに「下」に、ロ
ボット代わりのより身分の不安定な派遣労働者がどんどん増やされるということになったわけです。
--------------(引用)
人間は物言わぬロボット以下の存在となっているのですね。
◆ヤクザ稼業が正業に
労働者を雇用主に紹介する江戸時代は合法であったようで、藤沢周平さんの「用心棒日月抄」で、主人公の浪人・青江又八郎は口入屋の相模屋吉蔵の斡旋で用
心棒の仕事を引き受けます。
1947(昭和22)年に成立した職業安定法では労働者の間接雇用を禁止していました。1985(昭和60)年に成立した労働者派遣法は非合法の労働者
の供給を合法化してしまいました。
ヤクザの稼業が表稼業となったのです。
◆かんばん方式
トヨタ自動車は、必要な部品を必要な時刻に必要な数だけ納入させる部品の在庫を持たない方式生産システム(かんばん方式)で大幅な利益を上げています。
決められた時刻に納入しなければならい納入業者のトラックが周辺の道路に待機し、トヨタは「道路を倉庫代わり」に使って儲けていたのです。
このかんばん方式が労働力の調達にも応用されたのが労働者派遣法なのです。
誰が儲け、誰が犠牲になったのかは明らかです。
◆派遣労働はチャンス
雇止めに抵抗して闘っている知人が、派遣労働者となったのは裁判で「当時テレビでは『派遣制度は経験のない労働者でもチャンスをもら
える。頑張れば派遣先の正社員にもなれるすばらしい制度です。』と言われていました。遠回しなやり方ですが,今の自分にはこの方法を使って正社員になるし
かないと思いました。そこで派遣会社に登録し、、」と述べています。
世の中が、労働者を部品程度にしか扱わない大企業と政府の口車に乗って、労働者を部品へと追いやっていたのです。
アメリカ軍が、兵士を募集するのに「軍に入れば奨学金で
大学へもいける」と誘う手口と同様です。
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(日雇派遣労働者の派遣法の大賛成派である国際基督教大学の八代尚宏教授
なんかは、「雇用の多様化だ。多くの派遣業者に登録することで雇用の機会が増え、いろいろな仕事を経験するチャンスができる」なんてフザケたことを言って
います。
--------------(引用)
どこにも、いつの世にも御用学者はいるものです。労働者派遣法の生みの一
人信州大学の高梨昌教授は、1994年の改正を「ようやくここまで来た、最初に思ったとおりの法律になった」と言っていたそうです。
◆派遣業は儲かる
秋葉原での無差別殺傷事件をおこした男性は、日研総業からトヨタ自動車系列の関東自動車工業に派遣されていました。
日野自動車で働く派遣労働者の時給1150円くらいで、日野自動車が日研総業に払うのは1750円くらいだといわれています。つまり日研総業は600円
/時/人ピンはねしていることになります。粗利益率34%です。
一人の労働者が月に150時間働けば9万円の利益が生まれます。100人の労働者を派遣すれば毎月900万円の利益となります。電話代など間接経費はそ
んな
に掛からない商売ですから人さえ集まれば丸儲けの商売だと思います。
◆労働者派遣法の廃止を
労働者派遣法は廃止しなければならないと思っています。
鎌田さんは「派遣法を潰せ」と言っておられます。
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最近、派遣労働者の集会があちこちであって、僕もそこに行ってアジっている
んです(笑)。社民党や共産党は「派遣法改正、(職種が限定されていた)1999年当時に戻せ」で、僕は「派遣法を潰せ」だから、僕のほうが過激なんだけ
ど、まあ一緒にやっています。
--------------(引用)
雇止めや派遣切りにあった非正規の労働者たちは、地域合
同労組などに結集して新たな労働運動のひとつの流れができつつあります。
運動には色々な課題もありますが、労働者の要求を正しく汲み上げて欲しいものです。
◆憲法9条と死刑
先日見た映画「チェンジリング」に、80
年前のアメリカでの遺族が見守る中での死刑執行のシーンがありました。
西部劇の吊るし首と変わりませんでした。
死刑は国家の殺人、戦争と変わらないのではとの思いがありました。鎌田さんは次のように話されています。
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逆にいえば、「最低限度の生活」のために人を殺さない、ということです。
それから、さらに言えば、僕は死刑の問題も9条に絡めて考えています。9条というのは国が人を殺さないということ。死刑もまた、「国が人を殺す」中に入
るというのが僕の主張なんです。9条をつくったときに、どうして死刑廃止にも踏み切れなかったのかと思う。
そんなふうに、9条というのは本当に人間として生きるすべての源泉だと思います。9条から発して9条に帰ってくる、というか。それをもし失ってしまった
ら、取り返すのは大変です。その意味でも今、「マガジン9条」のようないろんな運動が出てきて、9条を支えているというのはとてもいいなと思います。
--------------(引用)
◆社会不安
09年1月の完全失業率は4.1%、完全失業者は277万人(前年同月比21万人増)となったそうです。
失業者が増えれば犯罪が増えることは2006(平成18)年の「犯罪白書」も指摘しているとおりです。
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一般刑法犯の認知件数の推移と同様に,完全失業率は第II期の初め前後から上昇し,平成14年に近年で最も高水準を記録したが,15年以降は低下傾向に
ある。
認知件数や失業率の推移を見ると,不況の影響による失業率の上昇が一般刑法犯の認知件数の大部分を占める財産犯を増加させるなどの影響を与え,同様に,
失業率の低下が,犯罪を減少させる方向で影響を与えたものとうかがうことができる。
失業率の推移が財産犯の増減に影響を与えている蓋然性はかなり高いとの指摘もあり,これを前提とすれば,犯罪を犯した者等,特定の対象者に対する就労支
援等の雇用対策は,犯罪抑止のための有効な施策の一つであるということができよう。
---------------「平成18年度版犯罪白書 第3節 社会的背景と国民の意識」
失業により、経済的にも窮し心も荒廃した人が増えないためにも、本当のワークシェアリングが求められています。
ワークシェアリングに関して、こんな話があります。(確かビル・トッテンさんのコラムだったような?)
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来日したアメリカ人の「日本のガソリンスタンドは、窓を拭いたりして過剰サービスでガソリン代が高くなっている」と指摘に対する反論です。
しかし、サービスをしないガソリンスタンドでは働く人の機会を奪い、安いガソリンを買う代わりに失業した人が犯した犯罪にかかわる捜査、裁判、矯正など
の費用を社会全体が負担しなければならず、結局は高いガソリンを買っていることになる。
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相変わらず纏まりのない文章でした。
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