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09/04/20 佐野洋「雀の宴」

 最近の大型書店の嫌なことは閲覧?用の椅子が 置かれていることです。「立ち読み」ならぬ「座り読み」を店が公認しているのです。
 良いところは、書籍の検索端末が置かれているところでしょうか。在庫の有無、書棚などが検索・印刷でき、初めての書店でも目的の本を探すことができま す。

 頭の回転はよくありませんが読書だけは支障が なさそうです。
 今日は佐野洋さんの「雀の宴」を紹介します。

◆ストーリー
 元高校の国語教師の経営する雀荘・雀宴(じゃ んえん)を舞台に、雀荘の主人・鈴木明夫と市民病院に勤める妻・加奈江、アルバイト学生・篠田尚美、牧野康武それにタウン誌の編集長・沢井が探偵役となっ て「事件」を解決していきます。
 「事件」は佐野洋さんお得意の艶っぽいおしゃ れなものばかりです。殺人事件の出てくるのは1件だけです。

 麻雀は佐野洋さんの趣味のひとつです。私は麻雀をまったく知りませんので麻雀のルール絡みの話なら読み辛いと思いましたが稀有でした。
 尚美と康武の微妙な恋心の変化も読みどころです。

 
「小説宝石」に2005年から2008年に連載 された9話から構成されています。

◇男の期限
 男の賞味期限とは何歳なのでしょう。
 入院していた老人が若い女性看護師に1万円札を出して胸を触らせろと要求します。

◇犬の写真
 バス停の掲示板に「迷子犬を預かっています」という写真入の貼り紙があった。
 アルバイトの尚美は写真の犬を見たことがあるようだという。連絡先に書かれたところに連絡してみると。

◇金色の水
 女性麻雀教室の参加者の一人が「今月、私は還暦になるの」という。
 どう見ても50代半ばにしか見えない。その女性は金色のラベルの貼られたボトルの飲み物を飲んでいる。
 その飲み物は不老の薬だろうか?

◇眼鏡と髭
 アルバイトの尚美は、ちょび髭に眼鏡を掛けた客の声が大学の聴講生に似ているようだという。気味悪がる尚美のために正体を探すストーリー。

◇似顔絵
 女性麻雀教室の例会の成績表を見た客は、ある参加者について聞いてきた。プライバシーに関することは答えられないというと、男はサラサラと似顔絵を描き 「こんな感じじゃないか?」と言って帰っていった。
 若作りではあるが本人にそっくりである。この男は誰だろう?女性客との関係は?

◇細長い顎
 ある日、アルバイトの康武は客の一人から「君は顎が細いね。握手してくれないか」と頼まれる。客が言うには新聞の占い欄に「顎の細い人と握手すると良い ことがある」と書いてあったのだという。
 そして帰り際に「おかげで一人勝ちした。記念に写真を撮らせてくれ」と写真を撮って帰った。
 康武の縁談だろうか?犯罪絡みの調査だろうか?

◇仁と愛とに
 康武の同級生が骨折で入院した病院の看護師と付き合っているという。その同級生を訪ねた折に「看護師はいいぞ、何しろ<仁と愛とに富む婦人>だから」と 自慢げに話した。
 「やがて十字の旗を立て/天幕(テント)をさして担ひ行く/天幕に待つは日の本の/仁と愛とに富む婦人」(婦人従軍歌)
 同級生がいう「仁と愛とに富む婦人」の意味とは?

◇靄(もや)った記憶
 ある日の客がアルバイトの尚美のことを「昔、教育実習で行った小学校で骨折した子がいて近くの医院まで負ぶって行った。尚美がその時の子どもだと気がつ いた。携帯の番号を教 えてくれないか」という。
 尚美には曖昧な記憶しかない。客の目的は?

◇美談の謎
 「公園で甥っ子と遊んでくれたお礼に」と康武を女性が訪ねてきて、携帯の番号を置いて帰ります。
 康武にはまったく心当たりがありません。真相を探るために本人と会って見ると。

◆佐野洋さんは若い
 佐野洋さんは1928(昭和3)年生れで今年81歳になられます。
 早くからワープロで原稿を書かれるなど、時代に敏感な方です。この作品でも随所に佐野洋さんらしさがでてきます。

◇午後十二時
 「雀宴」の閉店時刻は午後十二時です。鈴木明夫に午前零時といわず午後十二時と拘らせています。

◇シチョウ
 看護婦長を看護「師長」と呼ぶそうです。アルバイトの二人は加奈江のことを「シチョウ」さんと敬意を込めて呼んでいます。
 私の入院していた病院でも男性の看護師が多くいました。

◇ナンバーディスプレー
 電話のことも詳しいです。電話を架ければ相手に自分の番号が知られてしまうため公衆電話を使わせたりしています。
 普通の電話でもナンバーディスプレー機能があり、ない場合でも136をダイアルするとNTTが教えてくれるそうです。
 また、電話機のハンドセットを「受話器」と言わず「送受話器」と厳格に表現される佐野洋さんは携帯電話も「携帯電話機」と書かれています。

◇休講情報
 大学に通う尚美が休講情報を携帯のメールで受け取る場面がありました。
 私はそんなシステムをある大学に提案したことがあり、今は普通になっているのだと懐かしく思いました。

◆「宴」の料理
 一人暮らしのアルバイトの二人を慰労するためにと、加奈江の手料理でもてなす食事会(店名から宴と呼ばれている)がおよそ月に一度催される。
 出される料理は「宴」とは違い家庭料理で質素なものでした。
◇サラダ、さしみ、焼き魚、肉ジャガ
◇ポークのジンジャー焼き
◇すき焼き
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