09/06/05 足
利事件とマスコミと裁判員制度
90年5月、当時4歳の少女が行方不明になり、翌朝死体で見つかった事件(足利事件)の犯人とされ無期懲役刑で服役中の男性が再審での無罪が確定的である
と昨日(6月4日)釈放されました。
91年12月1日朝、任意同行で逮捕同然に身柄を拘束されてから17年6ヶ月、無実の人が獄にあったのです。
◆マスコミ
釈放後の男性は「当時の警察官、検察官を絶対に許さない」と警察や検察を
厳しく批判しました。
身柄を拘束されてからは、自身の関連する報道に接することは無かったから
か、マスコミの取材だからでしょうか、マスコミ批判は聞こえませんでした。
マスコミはいつものように逮捕イコール犯人とのスタンスでの報道を繰り返しています。
◇任意同行された91年12月1日の朝刊で「重要参考人 近く聴取」と報じています。
◇2日の朝刊では、「○○容疑者を任意同行して調べていたが、深夜になって『手で首を絞めて殺した』と自供したため、二日未明、殺人と死体遺棄の疑いで逮
捕した」と、予め自供を想定していたかのような手際の良さです。
◇千分の一と百万分の一
この事件当時使われていたDNAの鑑定方法は、MCT118型鑑定といい血液型と合わせ
ると別人と誤る確率が1000人に1・2人の精度と言われていた。
にもかかわらず、血液型と合わせれば同一人でない確率は百万分の一だと(多分)警察発表そのままに報じています。
(引用)「捜査本部は、○○ちゃんの衣服に残されていた犯人のものとみられる残留物のDNAを、内偵捜査中に入手した同容疑者のDNAと照合、逮捕の決
め手の一つにした。同容疑者周辺から入手した残留物はごくわずかだったため、一致する確率は、『千分の九百九十九』だという。/今
回の正式鑑定でDNAが一致すれば、血液型(B型)の一致と合わせ、○○ちゃんの衣類の残留物が同容疑者のものである確率は『百万分の九十九万九千九百九
十九』と、約千倍の確度に高まるという。」(再度DNA鑑定へ 血液使い確度高める) 朝日新聞 91/12/03)
(引用)「100万人から一人絞り込む能力」(スゴ腕DNA鑑定へ 園児殺害、捜査の決め手 朝日新聞 91/12/03)
◇犯人視
下の記事は、マスコミが如何に権力の手先かが良くわかります。
「推定無罪」の原則などどこ吹く風、警察発表を垂れ流しているだけなのです。
「捜査本部の二日までの調べや関係者の証言で、○○容疑者のさまざまな顔が明らかになってきた。/捜査本部は足利市△△の同容疑者の借家の捜索で、ビデ
オテープ二百四本、レーザーディスク十七本などを押収した。テープは七割は市販のもので、中身は成人女性のアダルトビデオだった。(「変なおじさん」園児
に”人気” ○○容疑者の素顔 91/12/03)
アダルトビデオを何本持っていようが関係ないこと、異常な人格を描いて犯人を作り出したい警察の思惑のままに報道しているのではないでしょうか。
逮捕されても有罪が確定するまでは「無罪」です。プライバシーを穿り出される謂れはありません。
◆裁判員制度
この事件では警察の取調べで「自供」がされていました。
当時は画期的と思われていたDNA鑑定の結果も黒でした。
マスコミは連日「○○は犯人」との報道を繰り返していました。
こんな裁判で、裁判員が正しく無罪の表決を出せるのでしょうか?
私みたいなへそ曲がり、天邪鬼でも、無罪の判断はできないでしょう。
少しでも疑問なところがあれば、「疑わしきは被告人の利益に」したいものです。
17年も身柄を拘束するようなことは、絶対あってはなりません。
◆謝罪の弁なし
「彼以外に犯人はあり得ない。彼が犯人ではないと思ったことは一度もない」「彼は自ら犯行を再現した。本人しか再現できないような迫力があり、何ら疑い
を持たれたことはない」(男性の取調べにも関わった元捜査幹部)
◆裁判官にも17年拘留の責任
「慎重に判断した結果だった」(元裁判官)
「当時の証拠や全体の審理を踏まえた上で慎重に出した決定だったという思いは変わらない。新しく出てきた証拠で劇的に状況が変化し、検察が対応したとい
うことは理解できる」(上告を棄却した元最高裁判事)
「当時の判断は判決理由に書いてある。それ以上のことは言うべきではない」(別の元判事)
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