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09/06/11 足利事件と飯塚事件

 足利事件の報道が 続いています。

◆検察の「謝罪」
 昨日は最高検察庁の次長検事の伊藤鉄男氏が「真犯人とは思われない人を起訴し、服役させたことについて、大変申し訳ないことをしたと思っている」と話し たそうです。

 伊藤鉄男氏は検事総長の次に「偉い」最高検察庁のナンバー2だそうですが、何とも誠意のない「謝罪」姿勢です。
 この人は17年半も拘束された人間のことがわからないのでしょう。人の気持ちを斟酌する想像力がない人です。
 マスコミはこの「謝罪」を「異例」だと「好意的」に報じています。

◇検察幹部がこうした形で謝罪するのは極めて異例(朝日新聞)
◇再審開始決定前に、検察側が元受刑者に謝罪するのは異例(東京新聞)
◇再審前に検察が無罪を前提として謝罪するのは極めて異例(日経新聞)
◇再審前に検察が無罪を前提として謝罪するのは極めて異例(産経新聞)
◇再審開始前に検察が謝罪するのは極めて異例(読売新聞)
◇最高検によると、最高検幹部が謝罪した例はないという(毎日新聞)

 しかし、当事者である17年半も拘束されていた男性らは、この「謝罪」に怒りを露わにしています。
 「謝罪に対し、○○さんは同日会見し『警察、検察は私の目の前でちゃんと謝罪することです。裁判官も同じです。絶対に許さない』と語った。同席した佐藤 博史弁護士は『なぜ誤ったかを明らかにすることが大切だ』と語った。」(毎日新聞 09/06/11

 なぜこのような冤罪が起きたのか、足利事件だけの特別な問題なのか、検察のシステム・体質に問題はないのか、検察の責任を明確にした上での謝罪でなけれ ばなりま せん。

◆飯塚事件
 伊藤氏は
「服役させたことについて・・・」と言っていますが、死刑にしてしまった人にはどのように「謝罪」するのでしょ うか?

 足利事件(90/05発生)と同じ時期に発生した福岡県飯塚市の少女殺害事件(飯塚事件 91/02発生)でも、DNA鑑定が唯一の物証として男性の死刑が確定しています。

 弁護側がDNA鑑定に疑義があると再審請求の準備中であった08年10月28日死刑が執行されてしまいました。
 この死刑執行を決裁したのは麻生内閣の森英介法務大臣です。死刑確定(再審請求準備中)から2年弱での「異例」のスピードでの死刑執行でした。科捜研の DNA鑑定の精度に疑いが明らかになっていた時期に何を慌てて執行したのでしょう。急ぐ必要があったのでしょうか?
残 日録 08/10/29

 警察・検察、裁判所、森英介法相は、次のように「謝罪」するのでしょうか?
 「
真犯人とは思われない人を起訴し、死刑執行したことについて、大変申し訳ないことをしたと思っている」

 逮捕イコール有罪と思わせる報道を繰り返しているマスコミも糾弾されなければならないと思います。

◆事件報道の検証
 毎日新聞は6月11日付けで「
足利事件:毎日新聞記事検証 事件報道、重い課題 『犯人』前提の表現も」と事件報道を検証しています。

 「捜査幹部は『自供内容は一貫している』と話し、毎日新 聞も『真犯人は菅家容疑者』を前提に報道を続け、疑問をはさむ記事はなかった。」(引用)

 最近では「捜査幹部によると・・・」とか「独自取材によ ると・・・」と情報の出所を明らかになりつつあります。
 警察の小出しにする情報に乗せられて、容疑者=真犯人と世論を導いています。

◇当時の報道(引用)

▽足利署捜査本部の会見や県警幹部への取材を基に「かわいかったので誘い出し た」「連れ出した時は殺すつもりはなかった」などと続報を展開した
▽未解決だった別の2女児殺害事件を巡り、県警への取材を基に「2女児殺害も自供」と報じた
▽以前の勤務先の幼稚園 関係者の話として「事件のことが話題になっていたのに、(○○さんは)無関心だった」との談話を掲載
▽女児が通っていた保育園の話として「これで成 仏できるだろう」との一文を入れた
▽いたいけな幼女の命を次々に奪った疑いの○○被告
▽あまりにもケロッとしているその素顔
▽(幼稚園での)「まじめな勤務態度」の裏には、「幼女の近くを離れたくない」という意識が働いていたようだ
▽心の 亀裂に病理が潜んでいるようだ

 当時の朝日新聞(91/12/03付け)にも「容疑者の素顔」と題して「(幼稚園児の前で)わざと内またで歩いたり、体をくねらせるようなしぐさをして 見せたため、園児たちから『変なおじさん』と呼ばれ、人気者だった。」と、男性を変質者のように表現しています。

◇DNA鑑定過信
 DNA鑑定は、犯人を特定するよりも「犯人でない人」を排除するための技術です。
 科学偏重、権力偏重は陥りやすい過ちです。自戒、自戒です。

 「取材班は、当時のDNA鑑定の証拠能力を過信し、容疑者特定の決め手ととらえていた。精度を巡る議論 は十分ではなかった。」(引用)

事件・事故報道のガイドライン
 毎日新聞は裁判員制度を意識して08年12月のガイドラインを設けたそうです。
 足利事件報道を、このガイドラインに照らしてみると、@捜査段階の容疑者の供述について、情報の出所を明らかにしないまま断定的な表 記をしている、A容疑者を犯人視するような表現が目立つ、などの問題があったそうです。

 「当時の報道には反省すべき点がありました。このことを厳粛に受け止め、既に運用しているガイドラインに基づく適切な報道を徹底し、事件・事故報道や裁 判 にかかわる記事の質を一層高めていきます。」(引用)

 報道被害防止のためにも、匿名報道も検討してもらいたいものです。
 他のマスコミも、検察を批判するだけでなく、自らも反省、謝罪してほしいものです。

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