09/07/27
朝日俳壇、歌壇より
今週も朝
日新聞の俳壇、歌壇には、格調高く難しい句や歌が多くて、選者の評を読んでもよくわからないものもありました。その程度の
読者である私が理解できた句や歌の中からいくつかを紹介します。
◆朝日俳壇
◇梅雨深くこだはる一事ありにけり(福井県・永谷春水:長谷川櫂選)
「こだはる一事」は鬱陶しい梅雨の時期には一層のものと心を乱します。
◇香水の敵意あらはにすれ違ふ(岡山県・丸山敏幸:大串章選)
作者は女性で、すれ違った女の香水の匂いに敵意を感じたのでしょうか?
女の敵意とは侮れないものと思っていましたが作者は男性のよう、女性心理に精通された方でしょうか?
◇百名山七つ数ふる帰省かな(塩尻市・古厩林生:大串章選、稲畑汀子選)
帰省の足は列車でしょうか?高速道でしょうか?中部地方には百名山のうち三十数座があります。右を見ても左を見ても名山ばかりの帰省の途でしょう。
稲畑汀子さんの評の中に「原句は『百名山の』だが、この
助詞は省略した方がよい。」とありました。
投稿句は添削されることがあるのですね。
作者の古厩さんの句を以前に紹介した折に、視覚障害者用にテープを作られ
ている方から「古厩林生」さんの読み方を知らないかとお尋ねを受けたことがありました。未だに正確な読みはわかりません。
◇泳ぐ子を追うてゐし目も岸に着く(八千代市・山下接穂:大串章選)
泳いでいる子どもは自分の子でしょうか?まったく知らない子どもでしょうか?
泳いでいた子どもが岸にたどり着いた、見知らぬ子でもホッとする「私」に共感しました。
◇せせらぎを結界として杜凉し(大阪市・山田天:稲畑汀子選)
せせらぎが暑い世界と涼しい世界の結界のように思われたのでしょうか?
先日、雨あがりの裏山を登った時に、いつもはほんの僅か
な水量の流れが雨を集めて滝となって落ちていました。
山道から一歩谷川に下りると、ミスト状の冷気に当たり別世界のような神聖
な気分になったことがあります。
◆朝日歌壇
◇歩行虫(オサムシ)か塵芥虫(ゴミムシ)かはた埋葬虫(シデムシ)か雨あがりを行く子細ありげに(新潟市・太田千鶴子:馬場あき子選、永田和宏選)
いろんな名前の虫がいるのですね。
ややこしい名前を連ねたあとに「雨あがりを行く子細ありげに」とはうまいですね。
馬場あき子さんの評を。
「蒸し暑い季節に繁殖する歩行虫や塵芥虫、埋葬虫たちのうごめきが目につく頃だ。夏のいのちのいぶせさもあるが、第一首
の結句『子細ありげに』が面白い。どんな虫にもその動きには理由がある。」
◇廃屋と見違ふ程に年経れど人に住むらし玻璃戸みがかれ(鹿嶋市・和田山可扇:馬場あき子選)
廃屋と見間違うほどの家だが、ガラス窓はきれいに磨かれていて住んでいる人の品が伺えるようです。
◇プランターのきゅうりのコストを計算す経済学を学びし妻は(石川県・吉川明彦:佐佐木幸綱選)
家庭菜園の作物のコスト計算をすると合わなくなります。
温室での栽培、ビニールなどの農業資材、輸送などと石油を消費した市場に並ぶ農産物に比べ高いものになりますが、野菜を育て食べる喜びを感じたり、地球
にやさしい行為のひとつと考えたりする「大きな経済学」で計りたいものです。
◇八月はわが生まれ月原爆忌敗戦忌ありひと死にし月(むつ市・福原弘之:高野公彦選)
三月の大空襲忌、六月の沖縄忌、、多くの人びとの死の上に私たちが生まれ生きていることを忌日に思い返す。
とりわけ8月は原爆忌、「ひと死にし月」であります。二度と戦争をしない国に、今が「戦前」となることのないように、8月の選挙で示しましょう。
◇天空に迷いこんだる終着の越美北線九頭竜湖駅(東京都・玉置憲一:永田和宏選)
鉄道の旅は楽しいものです。とりわけ終着駅の行く先のないレールは旅の気分を盛り上げてくれます。
越美北線(JR西日本は「九頭竜湖線」と呼んでいるそうです)は、福井から足羽川、九頭龍川を遡る「山岳」列車の趣があります。
04年の豪雨で不通になっていましたが07年に全線開通しています。廃線にならずによかったです。
◆中央市
入選歌に住所が「中央市」と書かれた方がおられました。
四国中央市は知っていましたが、中央市は知りませんでした。Googleで検索すると山梨県玉穂町、田富町、豊富村が06年に合併して生まれた町のよう
です。
何とも品のない名前だと思いました。市民の方は恥ずかしい思いをされていないのでしょうか?
平成の大合併では東西南北を冠した名前や、ひらがな、カタカナ名前を初めとして、珍名の続出です。
住みたくなるような名前の自治体名であってほしいですね。
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