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09/09/23 朝日俳壇、歌壇より

 敬老の日を含む秋 の連休を「シルバーウィーク」と称するそうです。
 シルバーシート、シルバー人材センターなどの呼称と同様になんとも嫌なネーミングです。なぜ年寄りがシルバーなのでしょう?

 「清水哲夫『新・増殖する俳句歳時記』」の9月21付けの今日の一句は下記の句でした。

 反逆す敬老の日を出歩きて  
大川俊江

 句の解説を清水哲夫さんが書いておられます。引用させていただきます。


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 作者は「敬老の日」の偽善臭に怒っている。口では「敬老」と言いつつも、本音は老人を疎んじる社会のありようは、年寄りになってみれば誰にもわかること だ。おじいちゃんおばあちゃんと、人としてまともに向き合うのは、いつも幼児だけという現実は哀しい。つい先日も新聞を読んでいたら、こんな記述に出会っ た。年寄りには「枯れた味」こそが似合うし好ましい。でも、最近は枯れ損なった老人が増えてきた。原因は、このところのギスギスした社会のせいだ‥、と言 うのである。一見もっともらしいけれど、「ふざけるな」と私は思った。この記事を書いた記者は、自分が偽善の片棒を担いでいることに気がついていない。あ るいは気がついていても、知らん顔をしているのだ。彼が書いているのは「年寄りは年寄りらしく大人しくすっこんでろ」という本音の偽善的表現に他ならない からである。
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 老人に限らず「○○な人たちはこうあるべき」と一括りにしてしまうような論理はあちこちに存在します。
 個を見ない、尊重しない、横柄なものの考え方のように思います。
 世の老人に「反逆?」を呼びかけておられます。

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 今年も「敬老の日」を季題に多くの句が詠まれるのだろうが、ユメユメ「私、枯れてますよ」みたいな句を、わざわざこちらから世間に提供してはなりませぬ ぞ。自分で自分のクビを締めることになるのですぞ。

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  21日付けの朝日新聞の俳壇、歌壇より気になった句や歌を紹介します。
◆朝日俳壇
 私には中々難しい句の多い俳壇でした。

◇顔なきは吾とぞ思ふ案山子かな(茨木市・瀬戸順治:金子兜太選)
 顔が描かれていない、名を持たない案山子に自分を投影しての一句でしょう。

◇帰省子の止めある大型バイクかな(京都市・林達男:長谷川櫂選)
 夏休みに帰省した学生でしょうか?
 大型バイクでツーリングを楽しみながらの帰省、「青春」という2文字が思い浮かぶ句でした。

◇平らげて骨美しき秋刀魚かな(芦屋市・田中節夫:稲畑汀子選)
 健康のためには肉より魚を食べろと医師は言います。なるべく魚を食べるようにしていますが、食べるのが下手です。食後の皿は魚の骨格標本のように綺麗に 食べられる人が羨ましい。

◆朝日歌壇
 今週の歌壇には先の総選挙を詠んだ歌が12首もありました。
 選者別には馬場あき子さん:0、佐佐木幸綱さん:4首、高野公彦さん:3首、永田和宏さん:7首でした。
 政権交代を過大に評価する歌もありましたが、一票の大切さ、一票の力を詠んだ歌が多くありました。

◇慎重に点字投票する我に投票箱が寄せられてあり(都留市・長田美智子:佐佐木幸綱、永田和宏選)

◇期日前投票に人足(ひとあし)多くして何やら国に変事あるらし(松山市・豊田里恵:佐佐木幸綱選)

◇幼児(おさなご)を連れし人々たむろする投票所祭りの様に(四街道市・菅原静江:佐佐木幸綱選)

◇投票所の壁際に亀立ち上がりひっくり返ってまた立ち上がる(東京都・白石瑞紀:佐佐木幸綱、永田和宏選)

◇八月は史実が一つ加わりぬ暴力の無き平成維新(名古屋市・木村久子選)

◇五十四年少数派に票入れて来て此の度やうやく意趣を晴らしつ(鹿児島県・押勇次:高野公彦選)

◇投票の出来ぬ人らと投票権なき人思い投票に行く(鳥取県・中村麗子:高野公彦選)
 12首の中では一番気に入った歌です。
 弱き人に思いを馳せることは大切なことですね。選挙権を獲得するための先人の努力にも思いを馳せて一票を大事に行使したいものです。

◇置かれたる消毒液に手をもみて受け付けをして投票をする(稚内市・藤林正則:永田和宏選)

◇議事堂に見合(みあ)ふ議員を待つと言ひし咢堂(がくどう)偲び投票に行く(市川市・平川喜代:永田和宏選)

◇恐らくはこれが最後の一票を迷わず決めて投票にゆく(埼玉県・岩下竹由:永田和宏選)
 「最後の一票」とは、病気でしょうか?老人でしょうか?

◇一票がこんなに力があるんだとつくづく思うまたしも思う(山形市・黒沼智:永田和宏選)
 「またしも思う」、本当ですね。
 これからの政治の動きで益々実感することでしょう。

◇決めたのはわたしたちです覚悟して四年の間観ていきましょう(青森県・一ノ渡綮:永田和宏選)
 これぐらいの大らかさが大事ですね。

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