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09/11/16 朝 日俳壇、歌壇より

 日に日に気温が下 がっています。
 熱燗が恋しくなる季節となりました。「冬」を感じる毎日です。

 民主党は一つの理念で束ねられた政党ではなさそうですから、民主党政府の閣僚の意見が違うのも当たり前といえばそれまでですが、普天間基地の移設問題で 首相、外相、防衛相の発言が三者三様なのは困ったことです。

 鳩山首相は閣僚級メンバーによる作業部会を設置し検討すると問題を先送りしました。また作業部会で検討することは「日米合意を前提としたらすべて答えが 決まっている。最初から答えが一つしかないのに日米で議論する必要がない。議論をする意味をオバマ大統領も実際にはよく分かっている」と、この部分では筋 の通った話をしています。
普天間問題 首相、『日米合意の前提』を改めて否定」(朝日新聞 09/11/16)

 この鳩山首相発言にまたぞろ日米関係が悪化すると危機感を煽る馬鹿がいます。
 自民党の石破茂政調会長は「米国への背信行為だ。日米関係に重大な影響を及ぼすことを懸念する」と批判しています。「
在日米軍再編:普天間移設 首相発言に批判と擁護」(毎日新聞 09/11/16)

 岡田外相は嘉手納基地と の統合をといっていたのが、「(普天間移設を含む)在日米軍再編合意を白紙に戻すのは難しい。政府として合意した以上、前提としないといけない」と変 化して来ました。「首相現 行案前提とせず 外相は『白紙は困難」 (神戸新聞 09/11/16)
 北澤防衛相は既定の方針どおりとキャンプシュワブを容認している。

  11月16日付の朝日新聞の俳壇、歌壇より気になったものを紹介します。

◆朝日俳壇
◇よき男よき裸木でありにけり(京都市・川端通代:金子兜太、長谷川櫂選)

 苔むした幹は妖艶な女性の身体のようですが、遠くから望む
裸木はドンと落ち着いて雄雄しい男のように見えます。

◇牧水の歌のとほりに秋の酒(佐賀県・池田覚:長谷川櫂選)
 牧水の歌<白玉の歯にしみとほる秋の夜の酒はしづかに飲むべかりけり>そのままです。
 秋は日本酒が美味しい季節です。私は過飲気味です。

◇デジタルの時計に秋思なかりけり(高萩市・小林紀彦:大串章選)
 思ったこともありませんでした。確かにデジタル表示では愁いに乏しいと思います。
 時計の針の動きが愁いを生むのでしょうか?

◇言訳をせぬ子がひとり返り花(茅ヶ崎市・川村敏夫:大串章選)
 句意が十分に理解できていません。でも何か気になる句でした。
 「言訳をせぬ子」がいいのでしょうね。

◇口ほどに動かざる手で障子貼る(川西市・上村敏夫:稲畑汀子選)
 選者は「障子を貼りながらおしゃべりが弾む人を見ている作者。手より口が動くとは妙」と評されていますが、私は作者そのものが障子を貼っていて、おしゃ べりばかりで捗らない仕事を自嘲的に読まれているのかと思いました。
 手も口も動かない私には羨ましい歌でした。

◆朝日歌壇
◇鳥獣の側から見れば人界は戯画のごとくに生気満てるや(下野市・若島安子:馬場あき子選)
 先日観た映画
沈まぬ太陽」の後半、主人公の恩地がニューヨークの動物園を訪れたシーンで「The most dangerous animal in the world.(世界で最も危険な動物)」と書いた看板があり ました。動物園に飼われている動物たちからみれば人間ほど危険な動物はないのでしょう。

◇生きていて果たせなかった父の背を流すがごとく墓洗いけり(西海市・前田一揆:馬場あき子選)
 父とは一度も一緒に風呂に入った記憶はありません。まして背中を流すなどありませんでした。この歌のように父の背中を流すように墓石をごしごしと洗えば いいのですね。次に墓参りをするときには丹念に洗いましょう。

◇新嘗の朝餉の膳の杉の箸ふるさと吉野下市(しもいち)にほふ(東京都・民辻善史郎:馬場あき子選)
 杉の割り箸の香りはいいものです。特に香り高い新米にはよく合います。吉野杉の箸は格別に良品です。
 最近は外食店でエコロジーとかを理由に割り箸の代わりに樹脂製の箸を出すところが増えています。
 割り箸は間伐材を使っていて使った後も土に返ることができて、化石燃料からできた樹脂製の箸よりずっとエコロジーだと思うのですが。

◇新蕎麦に銚子一本注文し古本市の収穫確かむ(吉川市・鈴木征夫:馬場あき子選)
 薄緑がかった新蕎麦は香りのいい食べ物です。古本市の帰り、掘り出しものを手に入れた興奮のままに蕎麦屋に座られたのでしょうか。銚子一本を飲みながら 喜びを反芻されるのでしょう。

◇十割の常陸秋蕎麦陽の香りつゆつけず食むはじめの一口 (水戸市・菊池和子:高野公彦選)
 蕎麦の歌が続きます。
 「ひたちあきそばひのかおり」がよいリズムですね。
 蕎麦の一口目はツユをつけないで香りを楽しみたいですね。二口目は塩を付けてでしょうか。おいしい蕎麦が食べたくなりました。でも何故あんなに高いので しょう。

◇バレンタイン氏ロッテを去れどあの笑顔愁ひ顔また忘れが たかり(藤沢市・安田明子:佐佐木幸綱選)
 マリーンズの前監督ボビー・バレンタインさんはファンや選手を大事にする人でした。あの無邪気な笑顔と、対象的に落ち着いた思慮深そうな顔は忘れがたい ものです。好きな人でした。
 それに引き換えイーグルスの前監督野村克也さんの評判はスポーツ紙の記者の評判は芳しくありませんでした。佐佐木幸綱さんの選で野村克也さんの前監督の 去就についての歌が2首ありました。
 同日の「声」欄にも「政治家は野村さんの人生哲学に学べ」という趣旨の投書が掲載されていました。
野村さんってそんなに 立派な人だったのでしょうか。

◇折(へ)ぎ折りのふたにつきたる飯つぶをかき寄せ食ぶる癖の直らず(群馬県・眞庭義夫:永田和宏選)
 折り詰めの弁当が好きです。コンビニの弁当のようにプラスチックの容器でない折ぎ折り(へぎおり)の容器は食材の水分を吸収してくれます。また杉材で しょうかご飯にほのかな木の香りが良いものです。
 歌と同じように蓋を取るとまず蓋の裏側のご飯粒を一つ残らず摘んで食べます。本番はその後の楽しみです。
 駅弁にもプラスチック容器が増えて興醒めなこの頃です。

◇加藤和彦さん追悼歌
 先日、自死した元ザ・フォーククル・セダーズの加藤和彦さんの死を悼む歌が3首入選していました。

▽折々にあなたの歌をくちずさみ生きてきたのに加藤さん逝く(山形市・渋間悦子:佐佐木幸綱選)
▽分断の国を憂えし歌手逝きぬ「イムジン河(ガン)」を歌い広めて(大阪府・金忠亀:高野公彦選)
▽そんなにも急がなくてもいいものを加藤和彦振り向かざりき(安中市・入沢正夫:永田和宏選)

 どれもジーンとくる歌ばかりです。彼には急がなければならない事情があったのでしょう。土に帰っていきました。

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