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09/12/09 反戦イラク帰還兵の会他「冬の兵士」@

 昨日(12月8 日)は太平洋戦争の68回目の開戦忌、先の戦争を美化してはなりません、風化させてもなりません。

 09年度の補正予算(正確には「明日の安心と成長のための緊急経済対策」というそうですが)、その「明日の安心・・・」が閣議決定されました。予算総額 は7兆2千億円だそうです。

 その内訳は下記のとおり。重複があるため合計額は一致しない。
◇雇用対策:6000億円
◇環境対策:8000億円(家電エコポイント、エコカー補助を延長するそうです)
◇景気対策:1兆7000億円
◇生活の安心確保:8000億円(「新型」インフルエンザ対策など)
◇地方支援:3兆5000億円
◇「国民潜在力」の発揮
 
政府 7.2兆円追加対策決定」(東京新聞 09/12/08)

 これらの予算案は事業仕分けしないのでしょうか?先の事業仕分けが茶番に見えてしようがありません。

 「(辺野古への移設を決めた)日米合意を進めないと日米同盟に悪影響がでる」などの岡田外相の最近の普天間移設にかんする言動を見ているとアメリカの圧 力に負けて、沖縄県民、日本国民の方を向いていずアメリカの代理人に成り下がったようにみえます。
 ルース駐日アメリカ大使も「在日米軍再編のロードマップ(行程表)に悪影響を及ぼす」などと日本国民を恫喝し岡田外相ら日本政府に援護射撃をしてきてい ます。

 先日、岡田外相が沖縄に行って、住民との対話集会に出て意見を聞いたと思っていましたが、住民との対話集会でなく民主党の支持者だけの非公開の集会だっ たようです。
 出席者からは「アリバイつくりだ」「皆さんの意見は聞きましたと言うことだろう」など批判続出だったそうです。
 「外相、民意より同盟 名護・住民対話集会」(琉球タイムス 09/12/06)

 誰のために政治をしているのでしょう。民主党も自民党と同じ対米従属の外交では沖縄の基地問題の真の解決はないと思います。

  オバマ・アメリカ大統領は新しいアフガニスタン戦略を発表し、その中でアフガニスタンへの3万人の増派を決めました。
 その理由は「最高司令官として、アフガニスタンへの3万人の増派はわが国の死活的な国益にかなうものだと判断した」としています。「死活的な国益」とは なんでしょう?国益のために増派を決定したということでしょうが、「国益」とは本質を隠す曖昧な言葉のように思います。
 この増派によるアフガニスタン戦費は300億ドル(2兆6000億円)だそうです。「オバマ大統領、アフガン新戦略を発表」(AFP 09/12/02)

 今日は反戦イラク帰還兵の会とアーロン・グランツの編著
冬の兵士―イラク・アフガン帰還米兵が語る戦場の真実を紹介します。(少し 長くなりそうなので2回に分けて更新し ます)
 「冬の兵士(WinterSoldier)」 とは、ベトナム戦争中の1971年に、ベトナム帰還兵が戦争犯罪と残虐性を告発した同名の「公聴会」にちなんだものです。

 反戦イラク帰還兵の会(IVAW:Iraq Veterans Against the War)は、
下記の3項目を目 的として、9・11以降の退役軍人らにより04年7月に結成されました。
◇イラクからの全占領軍の即時かつ無条件の撤退
◇すべての退役軍人および現役軍人に対する医療保障その他の給付
◇イラク国民への賠償

 本書はIVAWが08年3月13日〜16日、メリーランド州シルバースプリングの全米労働者大学で行った公聴会での帰還兵、イラク市民、兵士の家族らの 証言をまとめたものです。
 この公聴会の模様はしんぶん赤旗に掲載されています。「戦場で私は怪物だった 帰還兵、占領者として証言 政府発表に挑戦 真実語る」(08/03/24)

 証言は8つの章に収められています。各章ごとの証言を紹介します。

◆第一章「交戦規則」
 戦場だからといって何をしてもよいという訳ではありません。民間人が殺されたりしないために、兵士が拷問や虐待の危険にさらされたりしないために、戦闘 に動員された兵士の行為として法的に許されるものと許されないものが戦争法として規定されています。アメリカ軍でも03年1月に兵士に与えられた「交戦 カード」には下記のように書かれていたそうです。

◇自衛の場合を除き、民間人、病院、モスク、国定記念碑および、その他あらゆる史跡や文化遺産は、標的としたり攻撃してはならない。
◇民間人の居住する地域あるいは建造物は、敵が軍事目的で使用しない限り、あるいは自衛に必要でない限り、発砲してはならない。
 :
◇巻き添え被害を最小限にとどめること。
 :

 こんなもの(交戦規則)があったことが信じられないような行為が日常的に行われていると証言されています。

■ジェイソン・ウォッシュバーン(25)/海兵隊伍長/ライフル兵/03年、04年、05年イランの各地に派遣
 交戦規則はその時の状況と恐怖のレベルに応じてたびたび変えられた。目的地に脅威がある場合、前の部隊が多数の犠牲者を出していたりした場合は撃ちたい ものを撃ってよい「自由発砲地帯」とみなされる。
 大きな袋をさげた女性がこちらに向かってくるように見えた。その女性に向けてMK19自動擲弾銃(てきだんじゅう)をぶっ放した。粉塵が収まると袋の中 には食料品がいっぱい、その女性はアメリカ兵に食べ物を届けようとしていたのでした。

 映画「リダク テッド」に再現されている映像そのものです。

◆第二章「人種差別と非人間化」
 新兵に「殺せ、殺せ、殺せ」と繰り返し唱えるような訓練が行われている。このような敵を非人間化する訓練の「成果」はイラクやアフガニスタンでは毎日見 ることができる。
 例えば「ハジ」とは敵のこと、ハジと呼ばれたら人ではなく、父親でも教師でも労働者でもない。イスラム教徒のにとってハッジュ(巡礼)を成し遂げた人を 指す尊敬の言葉(ハジ)を蔑称として使うことによりイラクの人格を否定する。そのことで自分たちの行為(前章の人殺しのように)を正当化しているのでしょ う。私たちも朝鮮や中国の人たちを自分の下に置くような蔑称を使ってきましたし、ベトナム戦争では南ベトナム民族解放戦線を「ベトコン」と呼んでいまし た。

■アンドリュー・ダフィ(21)/アイオワ陸軍州兵三等軍曹/衛生兵/05年10月から約1年アブー・グレイブ収容所に派遣
 軍事行動ができる男性なら誰でも捕らえられていたから、捕らえられた人をいっぱい乗せたトラックが頻繁に到着します。同僚の衛生兵と収容手続センターで 一人ひとりの健康状態を評価しているとき、ひどく取り乱し酔っているように見える若い男がいました。血糖値を調べると431mg(正常値は80〜120r /100cc)で、以前からインシュリンを摂取していたけれどイラク軍に捕まって4、5日、与えられていなかったそうです。上官に収容所病院への搬送を要 請したところ「ハジだ。たぶん死なない。でも、死んだとしても問題ないだろう」と。再度要請したが再び拒否された。3日目の朝、憲兵は糖尿病性ショック状 況を不服従と取り違え催涙スプレーをかけ屋外の独房に放りこまれ死を待ちました。

◆第三章「民間人の証言 −イラクの犠牲」
 サダム・フセインの残虐な独裁から「解放」されたイラク人の日常生活を想像してみる、自分がイラクにいて子どもを持っていたとつかの間でも想像してみ る。
 毎朝、娘を学校に送り出すときにこんなことを心配しなければならないことを想像してください。車輌爆弾で殺されないか、身代金目当てに誘拐されないか、 アメリカ軍の部隊や地域の武装組織に誤射されないか、単に「路上の障害物」には停車するなと命じられているアメリカ軍の車列に轢かれないかと。

 IVAWは公聴会にイラクの民間人をアメリカに招きたいと計画していたが、ブッシュ政権はほとんどのイラク人への入国ビザの交付を拒否した。拠って映像 での証言となった。

■フダー・ジャッバール・ムハンマド・アリー/1968年生まれ/バグダード、アル=ニダール地区居住
 夫は私の兄弟らといっしょに叔父の運転する車に乗って自宅のある地区に向かっていました。去って行くアメリカの占領軍は無差別に発砲してきました。この 地域で爆発などなかったから信じられないことでした。夫は頭部を撃たれ殺されました。他の兄弟も負傷しました。目の前にいた人を誰でも撃ちました。夫以外 にも6人が殺されました。
 事件のあと、アメリカ軍の駐屯地にいき補償をしてほしいと手紙をグリーンゾーンに持ち込みましたが何一つ補償されませんでした。

◆第四章「分断し、統治せよ −ジェンダーとセクシェアリティ」
 先頭に因るストレスと訓練を通して育成される非人間化の傾向は「敵」に対する残虐行為に現れるだけでなく、自軍の兵士に向けた差別と残虐な行為に現れ る。女性、ゲイ、レズビアンや「軟弱だ」との理由で異性愛の男性がターゲットにされる。
 アメリカ軍の現役兵士の15%と前線に配置されている兵士の11%が女性が占めている。退役した女性兵士の三分の一弱が軍隊にいる間に性的な暴力や強姦 の被害に遭い、71%から90%が性的嫌がらせを受けたという。

■匿名/沿岸警備隊
 バーモント州バーリントンの沿岸警備隊に配属されていたときのことです。06年5月30日に一等水兵からドライブに誘われ強姦されました。
 強姦を告発したら転勤させられました。転勤先では強姦の件は秘密扱いとされず、同僚隊員から「売春婦」「ふしだら女」などと呼ばれ、一人の水兵からは 「おまえ、セクシーだな。俺も強姦したいぜ」と言われた。07年5月には「容認しがたい行為」を理由に名誉除隊となりましたが、服務期間が24ヶ月未 満だったために復員兵援護法による給付金も募集時に約束されていたボーナスを支給されていません。

◆第五章「帰還兵医療の危機と祖国における戦争の犠牲」
 アメリカ軍では毎日18人が自殺している。自殺する帰還兵のほうが国外の戦闘で戦死する兵士より多いとの情報をアメリカ人は知らされていない。
 帰還兵は二度にわたって祖国から欺かれてきた。戦争を始める理由が最初の嘘、祖国に帰還した後は政府が福利厚生を保証するという約束が二つ目の嘘。

■ジェフリー・ルーシー(享年23歳)/海兵隊予備役伍長/03年2月〜7月クウェイトからイラク/04年6月22日自殺
 (証言者:ジェフリー・ルーシーの両親、ジョン&ケビン・ルーシー)
 03年7月に私たちのもとに帰ってきたのは海兵隊員だった息子の体だけでした。心はイラクのどこかで死んでしまった。
 04年にガールフレンドに宛てた手紙には「君にも両親にも言いたくないことがある。心配させたくないから。それに、言ったって、たぶん話を大げさにして いるとしか思わないだろう。戦争にはもう絶対行きたくない。一生頭にこびりついて離れないようなひどいことを見たし、自分でもやった」と書かれていた。ふ さぎこみパニック発作を起こすようになり精神安定剤、抗欝剤の服用するようになった。退役軍人病院は飲酒をしているからとPTSDの診断を拒否しました。 <続く>

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