09/12/14 朝
日俳壇、歌壇より
昨日(13日)付の朝日新聞の俳壇、歌壇より気になった句や歌を紹介します。
◆朝日俳壇
◇被爆者の運ばれし島山粧ふ(広島市・出原知恵:金子兜太、大串章選)
紅葉する島を見て原爆の被害者に思いを馳せられたのでしょう。
広島に原爆が落とされた時に似島(にのしま)という島が救護所(野戦病院)の一つとして使われていたことを、この句を読んで初めて知りました。
似島には日露戦争当時の捕虜収容所跡などの戦争の遺跡があるそうです。一度たずねて見たいところが一つ増えました。
◇小春日の民家チエロ聴く二百人(奈良市・安田玲子:金子兜太選)
選者は「いかにも奈良の里」と評されていますが、句を読んだだけでは「奈良」とはどうしてもわかりません。
投稿句に「奈良町の古民家にて」などの前書があったのでしょうか?私も時々投句するインターネット句会では、投句された句だけを見て互選しますから句の
詠まれた背景は17音でしかわかりません。
山頭火の句などは前書と句が一対として読んでいます。
◇女ひとりコートの内の山河かな(東京都・上野慈雨子:長谷川櫂選)
よく理解できませんが、なんか良いです。
女の人はコートの中に山河を抱えているのでしょうか?
◇日溜りを求めて鴨の移りけり(上尾市・中野博夫:長谷川櫂選)
猫が日向を動きにあわせて移動するCMがありましたが、そのCMを思い出しました。鴨も日向の温もりが恋しいのでしょうか。
◇商戦といふいくさあり十二月(札幌市・岩本京子:大串章選)
世の中は色々の明かりを点けて物売りに励んでいます。歳をとると欲しいものも少なくなり「商戦」の輪に入れない人となりました。
◆朝日歌壇
◇すみませんすみませんといいながら人かきわけて老いてゆくなり(瀬戸内市・児島たつ子:馬場あき子)
人ごみを掻き分けて進むように老いていく。
私は下りのエスカレーターに乗っているようにあまり意識をせずに老いて来たような気がします。老いたことは意識しますが。
◇道を尋ねればわからんと答へて蜜柑を五つ持たせてくれぬ(奈良市・杉田奈穂:馬場あき子選)
自転車で四国霊場を回っていたときに道端にいた人からミカンをお接待にいただいたことがあります。
道を尋ねたのに教えられなかったお詫びの気持ちでミカンをくれたのでしょうか?人情暖かな風情ですね。
◇人生の最後に神がくれしもの右片マヒと猫のぬくもり(東京都府中市・奥和子:馬場あき子選)
病んで後遺症として障害が残ったことを「神がくれしもの」と思うことは私にはできません。病をえた不幸を悔やんで生きるより、神が与えてくれた試練と
思って過ごす人生もあるのですね。
◇電車着く時刻となれば立読みの生徒ら一斉に掛けだしてゆく(長野県:沓掛喜久男:馬場あき子選)
イメージし易い歌です。田舎の駅前の書店で電車を待つ高校生でしょうか。ローカル線に乗ると通学時間帯でも1時間に1本ほどの電車しかありません。通学
も大変だろうなあと思います。
「電車着く」、「電車来る」どちらがよいのでしょうか?
◇路上にもポインセチアの鉢ならぶ日暮れてあかき駅前花屋
(所沢市・栗山雅臣:佐佐木幸綱選)
クリスマスの季節になると花屋の店頭にポインセチアが並びます。ポインセチアの赤がクリスマスをイメージさせるのはなぜでしょうか?夕暮れの花屋が一際
明るくなったような。
◇霜消えて大根を干し、柿を干し、白菜を干す雪虫が飛ぶ(気仙沼市・畠山登美子:高野公彦選)
リズムのよい歌です。霜が消える、寒さが緩む、日が高くなるころになるとしなければならないことがたくさんあります。
いなかの母の若いころを思い出しました。
◇水底に鳥のこえだけ今もするしずかなしずかなふるさとがある(城陽市・山仲勉:高野公彦選)
「水底から鳥の声がする」とはどんな情景なのかと思っていましたが、「ダム湖に沈んだふるさと。水の底から鳥のさえずりが聞こえる。幻想的な表現に哀切
感が漂う」という選者の言葉に納得です。言われるように幻想的な歌でした。
◇早朝のクリスマスツリー光らせる一人着替える私のために(高槻市・有田里絵:高野公彦選)
部屋の中に飾られたクリスマスツリーを着替えのために点すことの意味がわかりませんでしたが、選者は「幼子を起こさないように身支度をする若き母の姿」
と評されています。ああなるほど、でもなぜクリスマスツリーなのでしょう?
◇謎の絵師写楽の如く公田さん歌壇に再び投稿せぬか(流山市・角田勇:永田和宏選)
ホームレス公田さんの歌がしばらく入選していません。投稿もされていないのでしょうか?公田さんを安じた歌でした。
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