10/02/15
朝日俳壇、歌壇より
人様がするスポー
ツを観戦する興味も余りありませんので、新聞の紙面がスポーツで占められることは歓迎できません。テレビなどもっての他です。スポーツ専用新聞や専用チャ
ンネルで報じて欲しいものです。
連続勤務が未だ続いています。フルタイムで働いている若い人の中には腰痛の悪化、眼病、風邪と過労によると思われる症状が出てきています。労災も健康保
険もない無権利の日雇い派遣では病気や怪我は命取りになりかねません。
なぜ、権利を主張しないのか?という見方もありますが、私を含めてこんなところでも働かざるを得ない、首を斬られるよりは未だましなのです。働く場を失
えばもっとひどい状態になることは目に見えていますから。我慢に我慢を重ね、明日は来週はもう少しましになるだろうと根拠のない期待をしているのです。
15日付けの朝日新聞の俳壇、歌壇より気になった句や歌を紹介します。
◆朝日俳壇
◇我輩は猫であるゆゑ寝正月(神栖市・田中陶白:長谷川櫂選)
私の正月も寝正月でした。猫は威張って「猫であるゆゑ」などと言っておられますが、小市民はそのように割り切れません。色々な義理を欠きながらの寝正月
であるのです。
こういう軽妙な句も詠んで見たいと思うのですが、なかなか難しいことです。
◇籾殻に並ぶ見舞ひの寒卵(東京都・市川廉:長谷川櫂選)
この句は現代のことを詠んでおられるのでしょうか?
昔は鶏卵が貴重で見舞いや贈答の品にすることがよくありました。5個や10個なら新聞紙に卵同士が直接触れないようにクルクルと包んだものです。もう少
し多いと句のように菓子折りの空き箱に籾殻を敷いて卵を埋めるようにしたものでした。
5羽ほどの鶏を飼って自家消費するだけでなく、お使い物に使うのですから子どもの口にはなかなか入りませんでした。
◇多喜二の忌鳥打帽の目深かな(岐阜県・野原武:大串章選)
また多喜二の忌日がやっ
てきます。小林多喜二は1933(昭和8)年2月20日特高警察の
拷問により虐殺されました。
鳥打帽(ハンチィング)を被った多喜二の写真は見たことがありませんが、多
喜二にはハンチィングも似合そうです。
日本人は犯した過ちに対して反省も謝罪もしない。特に権力を使った、権力を持った人たちの過ちはキチンと謝罪されたことがありません。多喜二を殺した警
視庁特高係長中川某、須田某、山口某などの実行犯はぬくぬくと寿命を全うしたことでしょう。権力のトップであったヒロヒト天皇も。反省も謝罪もない世界で
は同じ過ちが繰り返されます。
◇妙齢の八頭身の裘(かわごろも)(尾張旭市・古賀勇理央:大串章選)
毛皮のコートでも着た年頃の女性を詠んだ句でしょうか?
「裘(かわごろも)」という漢字を初めて見ました。意味は毛皮で作った衣服の意と、お坊さんの衣やお坊さんを指すこともあるそうです。(大辞泉) と言
うことは、若い女僧を詠んだ句かもしれませんね。
◇除雪にも除雪の美学雪に住む(札幌市・前田豊作:稲畑汀子選)
雪国には程遠いですが、私の生まれた村では毎年3、40センチの雪が何度も積もりました。自宅の敷地の幅だけは各戸が雪掻きをしていました。雪掻き跡に
もそれぞれの家庭の性格が現れていたことを思い出します。
掲句は雪掻きではなく「除雪」とありますから、大きな除雪車による除雪の風景でしょうか?
◇豆撒けど腹の鬼ども居座りぬ(東京都・岡村一道:金子兜太選)
ふたり暮らしでは節分の豆撒きもしませんが、鬼を払っても腹の虫が治まらぬことのなんと多いことでしょう。
政権党のナンバー1、2ともに政治資金の出元に疑いを持たれています。一般の人なら検察が「クロの疑いなし」と起訴しなかったのですから「シロ」といえ
ますが、彼らは自ら「シロ」を国民の前に明らかにすべきでしょう。
◇十字路に黄のチョーク跡息白し(ドイツ・小野フェラー雅美:金子兜太選)
意味がつかめずにいます。道路にチョーク跡といえば、子どもの遊びか、配管工事などのマーキングか、事件、事故での警察の実況見分の死体の位置か。。。
それにしても日本では白いチョークが使われることが多いのですが、ドイツで路面に黄色のチョーク跡は何をするのでしょう。
◆朝日歌壇
◇吹雪止み半島姿あらわせば白き山肌原発を包む(福井県・大谷静子:佐佐木幸綱選)
敦賀半島は周囲を白砂の海岸が続く風光明媚なところです。今では原子力発電関連施設が複数あり半島の背骨を送電線が這っています。「原電立地」の看板と
立派な公民館などが目立つ地域です。
◇今日はもう一日何もしないぞと決めて山崎ハコを聞いている(神奈川県・中沢洋之:佐佐木幸綱選)
山崎ハコさんの歌はよく聞きます。少しかったるく投げやりな歌い方は、この歌のように「もう何もしない」日に聞くのにはよいのでしょう。私は通勤電車の
中で本を読むBGMにして聞いています。
◇アメリカが戦争しない日は来るか太平洋は今日も紺碧(日立市・山野いぶき:高野公彦、馬場あき子選)
選者の一人高野公彦さんは「そういえばアメリカは絶えずどこかで戦争をしている。柔らかい風刺の歌」と評されています。「柔らかい風刺」かどうかは別に
してアメリカは自国の貧しい青年と、他国の市民の命をいまだに奪い続けています。
アメリカという国も反省も謝罪もしない国ですね。例えば、イラクに大量破壊兵器が隠されているとの出鱈目の情報をもとに始めたイラク戦争では数万の人の
命が失われています。過ちに気づき反省し謝罪をしない限り過ちは繰り返されると思います。
◇ひとつ得てふたつ失いひとつ得てみっつ失うそんなこのごろ(福島市・美原凍子:高野公彦選)
美原さんも入選常連の方です。「一歩前進二歩後退、一歩前進三歩後退」的なことでしょうか?得るものよりも失うものの方が多くなる、歳の所為でしょう
か?
◇雪を踏み進む人人それぞれの人の形となりて進めり(熊谷市・内野修:永田和宏選)
「除雪にも除雪の美学雪にすむ」の句と同じように雪道を行く人の足跡にもそれぞれの個性があるようです。
◇浮浪児と呼ばれし日ありそれゆえに公田氏の歌探す月曜(吉川市・上條早苗・永田和宏選)
ひところは朝日歌壇に毎週入選歌が掲載されていた「ホームレス・公田耕一」の名を見なく
なって久しいことです。結核を患っているような歌がありましたので消息が心配なことです。作者のように「浮浪児」と呼ばれていた経験のある方ならこの寒さ
に案じること一層のように思います。
◇本人を証明するもの一つでは足りず二つを求める窓口(新潟市・山田昭義:馬場あき子選)
本人に成りすまして携帯電話の契約をして、手に入れた携帯電話が犯罪に使われることが当たり前になっているようです。本人証明用に公共料金の領収書など
を出すことが義務付けられているようですが、アパートなどの集合ポストから盗み出すようなことまでするようです。
こんな世の中では善意の市民は銀行口座を作るのも、携帯電話を契約するにも大変わずらわしいことです。
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