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10/02/23 朝日俳壇、歌壇より

  昨日(22付)の朝日新聞の俳壇、歌壇より気になった句や歌を紹介します。

◆朝日俳壇
◇薺(なずな)咲き町の素顔の残りをり(茨木市・堀恭子:大串章、稲畑汀子選)
 ナズナは春の七草の一つで別名をペンペン草ともいいますが、派手さも色っぽさもない草花です。ナズナが咲く町の一角に素顔が見えたのでしょうか。

◇宇宙人ふりむかせんと雪女(神戸市・森木道典:大串章選)
 分からない句です。
 宇宙人と自らもいう首相のことを皮肉っているのかとも思いましたが。 

◇人はみな臍と乳あり福笑い(高岡市・四津三樹夫:金子兜太選)
 選者は「臍も乳も大いに揺れるのだ」と評されていますが、臍が揺れるとはよほどの太鼓腹でないと無理なように思います。兜太先生の臍なら揺れるかも知れ ません。

◇紅梅の枝に不満や老庭師(大和郡山市・宮本正勝:長谷川櫂選)
 頑固な庭師は梅の枝振りが気に入らないのでしょうか。植木の枝振りは植木と職人の共同作業だと思います。
 植木屋を営む親戚がいてアルバイトに植木の手入れをして いたことがあります。その時に一緒に働いていた庭師のおじさんは句のような頑固者でしたが、なぜか可愛いところのある人でした。

◆朝日歌壇
◇開鑿(かいさく)の犠牲となりし囚徒らの鎖塚とふ墓に雪 積む(札幌市・清水芳洞:高野公彦選
 原野を開いて道路を作らるのに囚人が使役に使われていた歴史を持つ鎖塚を題の歌でしょう。

 松本清張さんの「不運な名前」(
疑惑」に収録)には北海道月形町にあった樺戸集治監を 題材にしたものです。そ の中に「無期徒刑の囚人には腰に鎖を巻き、長さ二尺の鎖がそこから垂れて、囚人の足の重さ一貫目の鉄丸二個に結ばれる。(略)密林を伐採し、巨木の根を起 こし、石を掘り出し、原野を焼いて耕し、もって移住者を迎えた。」と月形町のパンフレットから引用されています。

◇終電の近きホームに自死ふせぐ蒼き照明冷たく射(さ)せり(横浜市・大須賀理佳:高野公彦選)
 ホーム端の照明は自殺防止ようだったのですね。

◇「国母(こくぼ)」とはゆかしき駅名(えきな)身延線桃の花咲く亡き妻の里(千葉市・田口英三:永田和宏選)
 最近世間を騒がせた「国母」、その騒動とは別に国の母なりとは良い名前だと思っていました。
 身延線の甲府の近くに国母という駅がありました。このあたりは桃の産地で少し赤色の勝った風景は梅林や桜とは違った趣があります。行ってみたいところが 増えました。

◇補聴器を外したままで曖昧な世界にいる人時にほほえむ(三島市・渕野里子:永田和宏選)
 聞こえなくて良いものは聞こえない方がよいですね。
 補聴器を外して音の乏しい自分の世界に入っている人の笑みは多くのことを想像させます。

◇ブレーキを踏むタイミングが少しだけ遅い気がしてわたし疲れる(春日井市・田中絢子:永田和宏選)
 他人の運転でしょうか?自分の運転中にちょっとブレーキを踏むのが遅いと感じられたのでしょうか?
 どちらにしても気になることです。
 適切にブレーキを踏んでもブレーキの効きが少しづれるトヨタ車もありましたが。

◇融けかけたかまくら一つ庭に置き過疎の真昼は静かなり(鹿角市・柳澤裕子:馬場あき子選)
 かまくらを作ったのは誰でしょうか?
 休日に雪見にきた孫たちが作ったかまくらが、静かになった休日明けには融けかけている様子でしょうか?

◇松を摘む瞬時瞬時が過去となり庭師は黒き指もち帰る(三島市・渕野里子:佐佐木幸綱選)

 植木職人(庭師)は松の一芽一芽を掻いていき枝のバランスをとっていきま す。黙々と。
 渕野さんは前掲の補聴器の歌と二首も入選されていました。

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