10/03/29
朝日俳壇、歌壇より
街には自信たっぷ
りな人がいます。
ブランド物の服を着て、ブランド物のバッグを持って、お気に入りの髪型で、念入りに化粧をして、財布には十分な金が入っている、そのように見える人た
ちがいます。どこにも弱点を持たないような。
それに比べて私は、子どものころから一度もあのように自信に満ちた生き方をしてこなかった。外見は着古したジャージーに、踵の減った靴、ポケットには洗
いざらしのハンカチ、軽く十数年は使って色褪せた帆布製のバッグ、財布には数日
が過ごせるだけの金しか入っていません。
なぜ、あのように自信たっぷりで生きていられるのでしょうか?
29日付けの朝日新聞の俳壇、歌壇より気になった句や歌を紹介します。
◆朝日俳壇
◇一瞬の風の形や柳の芽(芦屋市・小杉伸一路:稲畑汀子
選)
見えない風を写真や句に表現したいと思いますが難しいことです。
風の形を柳の芽に見る、いいですね。
◇うぐいすや島では島の声で鳴く(熊本市・永野由美子:稲畑汀子選)
鶯の鳴き声に訛り(方言)があるということを聞いたことがあります。また、鳴き声を練習中のような下手な鳴き声を聞いたこともあります。訛りや下手な鳴
き声も可愛いことです。
◇霏々と降り淡々と消え春の雪(平戸市・辻美禰子:稲畑汀子選)
霏々は「ひひ」と読み雪や雨が絶え間なく降り続く様子を
言うそうです。難しい言葉です。
<ひひとふりたんたんときえ>いいリズムです。
◇雲たれて雨のミモザとなりにけり(奈良市・田村英一:稲
畑汀子選)
◇自己弁護の如く呆けし蕗の薹(南相馬市・江井芳朗:金子
兜太選)
「自己弁護の如く」とはどういう状態でしょうか?選者は「ほうけた蕗のとうには、確かにこんな印象もある」と評されています。
◇発電の大仕事して春の水(富士宮市・若林和司:長谷川櫂選)
ダムは無駄と現政権は言っていますが、水力発電はクリーンなエネルギーです。発電の大仕事を成した後も姿も形も変えず川の流れとなります。何もなかった
かのように。
◆朝日歌壇
◇「よわいひとはやつぱりいぢめられるよね」むじゃきなこ
ゑのえきしやにひびく(佐倉市・横山鈴子:永田和宏選)
選者は「無邪気で悪意のない言ゆえの怖さが、仮名書きに不意を衝かれた作者の驚きが読めよう」とあります。
いろんな意味で「弱い」人が苛められることは世の常なのに、「弱い」人たちが救われることはありません。
◇派遣切り告げられ更衣室に行き脱ぐものを脱ぎ着るものを着る(大阪市・鍛冶屋恵:永田和宏選)
派遣切りにあうのも「弱い」人ではないでしょうか?
生産財の一部のように使い捨てられるニンゲン、ニンゲンは物ではありません。
「脱ぐものを脱ぎ着るものを着る」、何かを吹っ切ろうとしているのでしょうか。
◇四年後のソチを目指すと言えること死など微塵も思わぬ若さ(春日井市・伊東紀美子:永田和宏選)
次の冬季オリンピックを無邪気に目指すというスポーツ選手たち、「死」を思わぬことは若さゆえでしょうか。
◇学校のグランドに続く米軍基地星条旗はためく沖縄の冬(磐田市・伊藤正則:永田和宏選)
沖縄県出身のBIGINに「ハイサイCalifornia」にこんな歌詞があります。
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芝生の丘の上
風になびく星条旗
俺達の星は
何番目だったんだろう?
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沖縄だけでなく、この国はアメリカの属国、51番目の星ができないように。
◇春風の形はどんなどろうかと想像しつつ春の土手(坂戸
市・山崎波浪:永田和宏選)
俳壇には風の形を柳の芽に例えて詠まれていましたが、こちらは土手の上で若草でも摘みながら風の形を思っている。
今日は冬のような冷たい風が吹きすさんでいました。
◇ゆるゆると大型機械の掘る人参異国の人ら黙々拾う(行方市・額賀旭:馬場あき子選)
農業も機械化がますます進んでいるようです。根菜類も機械で掘り出すのですね。その人参を収穫しているのも外国人だと詠まれています。食料自給率はカロ
リーベースでおよそ40%、国内産といえども外国人の力を借りている現状です。
◇息吹けば咲き出しそうな枝ばかりさくら木は今何かを待っている(大阪市・石橋佳世子:佐佐木幸綱選)
今年は咲き出した桜の花が1、2分咲きのままで止まっています。
息を吹きかければ今にも咲き出しそうな蕾は何を待っているのでしょうか。
◇のつそりと大工がしいたけ持ってきて仕事ありませんかと言うて帰れり(埼玉県・小林淳子:高野公彦選)
ドラマの1シーンのような歌です。
愚直な男が仕事の御用聞きに手ぶらでは行き難いと自家で採れた椎茸を持ってきた。男の姿形、風貌、性格までわかりそうな歌です。
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