10/04/07 いのちにも格差
毎年4月1日のサ
ントリーの新聞広告はかつては山口瞳さんが、現在は伊集院静さんが短い文章で新社会人にエールを送っておられます。
ことしも4月1日に紹介したかったのですが。。。
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千載一遇。
汗をかこう。
誇りと品格を持て。
新社会人おめでとう。
この言葉を私は十年、フレッシュマンたちに贈ってきた。
だが今年は少し趣(おもむ)きをかえる。
何十年に一度の不況のときに君は出発する。これを不幸と思うか? 違う。チャンスだ。今この時こそが
”千載一遇”の時だ。(辞書を引きなさい)
今、日本も、世界もさまざまなものが変わろうとしている。
政治のあり方も、経済のとらえ方も、企業の理念さえ揺らいでいる。あらゆるものが見直されている。自分たちだけが富や幸福を得ればいいという考えでは世界
は閉塞するのがわかった。エリートや、特権を持つ人々のやり方は通用しなくなった。では何もかもが変わるのか? 違う。世の中がそう易々と変わるものか。
道に迷ったら元の場所に帰るのだ。初心にかえろう。基本にたちかえろう。皆がしてきたことをやるのだ。
”汗をかこう”懸命に働くのだ。これを君たち若者がダサイと思うなら、君たちは間違っている。真の仕事というものは懸命に働くことで、自分以外の誰かがゆ
たかになることだ。汗した手は幸福を運んでいるのだ。だから仕事は尊いものなのだ。仕事は君が生きている証しだ。ならば働く上で大切なものは何か。姿勢で
ある。どんな? それは揺るぎない。
”誇りと品格を持つ”ことだ。
これを実行しようとすれば、それは夕刻には疲れも出るだろう。そんな夕暮れは、喉に爽風とおるがごときハイボールの一杯で元気をとりもどそう。
君に乾杯。 伊集院静
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働くことが「自分以外の誰かがゆたかになること」とのフレーズがすんなり胸に入ってきませんでした。
働くことは自分やその家族が豊かになるためと偏狭な考えに取りつかれています。大卒の5人に1人が就職浪人という、彼らは数十社もの採用試験を受けてい
ながら内定ももらえなかったとのこと。
彼らの奇麗ごとをいうなという声が聞こえてきそうです。
日本は全国民が公
的保険に加入している皆保険の国と言われています。憲法第25条にも「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」とあります。しかし現状では保険
料の滞納世帯が4百万世帯を超えて全世帯の20%を超えています。(厚労省「平成20年度国民健康保険(市町村)の財政状況等について」)
国民皆保険制度は形骸化しつつあるといえそうです。憲法第25条は、すべて国民に「健康で文化的な最低限度の生活を営む
権利」を保障しています。
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第25条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を
営む権利を有する。
2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
----------------(日本国憲法)
今週の「マガジン9条」で雨宮処凛
さんがコラム(雨宮処凛
がゆく)の中で、民医連(全日本民主医療機関連合会)の「2009年国民健康保険など死亡事例調査報告」というレポートを紹介されています。
この調査は09年1月から12月の期間に民医連加盟の病院や診療所など全事業所で、@無保険もしくは資格証明書交付などにより死亡にいたったと考えられ
る事例、A正規保険証を保持しながらも、窓口一部負担金など経済的事由により受診が遅れ死亡にいたったと考えられる事例が報告されています。
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調査によって、昨年1年間の死亡者数は47名にのぼることが判明したのだ。うち37名は国保料の滞納によって無保険、或いは短期証や資格証明書が交付さ
れていた人。あとの10名は保険証がありながらも、経済的な理由によって受診が遅れたと考えられる人。
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トヨタの期間工だった47歳の男性は「派遣切り」の嵐が吹き荒れた08年末に失業。その後自覚症状がありながらも所持金に余裕がなく国保には加入できな
いまま、癌で亡くなっている。
-------------------(引用)
残日録(10/03/27)でも少し紹介し
た京都民医連第二中央病院のレポート「田中飛鳥井町 いのちのカルテ 」
(門祐輔編)に
も無保険で医者に掛かれないと診療を拒否する人、いのちにも格差のあることなど同じような事例が報告されていました。
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