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10/05/03 映画「密約 外務省機密漏洩事件」

 今日は憲法記念日 です。5月18日には憲法改正手続法が施行されます。自民党崩れの「新」党には自民党と同じように改憲を党是としており自民党の別働隊でしかない ようです。
  4月28日、新憲法制定議員同盟は「新しい憲法を制定する推進大会」を開き、民主、国民新、自民、公明、みんな、新党改革の6党代表があいさつをしたそう です。明確に改憲にNOといっているのは共産党と社民党だけです。

 地域で9条の会に携わっている知人は「昨年の政権交代で改憲の危機は遠のいたとの気分がどこかしら運動を低調にしているようだ」と聞きました。
 私には改憲の動きは相変わらず「元気」そうに思えます。

 読売新聞に各党が憲法記念日にあたり出した談話が掲載されていました。
憲法記念日、与野党が談話」(読売新聞 10/05/03)
◇民主党
 「現行憲法に足らざる点があれば補い、改めるべき点があれば改めるべきと考えてきた」「まず各党の中で議論を行い、各党間で議論できる環境整備をめざ す」
◇自民党
 (憲法審査会が機能していないのは)「国会の不作為責任が問われるべき事態だ」「品格ある国家を目指し、新憲法制定に取り組んでいく」
◇公明党
 (加憲が)「最も現実的で妥当だ」
◇共産党
 (憲法改正の動きが低調になった)「この状況に深い確信を持とう」
◇社民党
 「憲法9条改悪の地ならしをするための憲法審査会を動かさないよう注視していく」
◇国民新党
 「所要の見直しを自主的に行うべき」
◇みんなの党
 「改める、加えるべき所を真摯(しんし)に議論する」
◇新党改革
 「憲法審査会を一日も早く機能させねばならない」
◇たちあがれ日本
 「憲法改正という根本課題から逃げ続けることは許されない」

 ゴールデンウィークに人並みにサイクリング仲間と一泊のポタリングに出かける予定をしています。
 今日は自転車のメンテナンスをやりました。集合住宅のベランダでの作業は真夏並みの暑さでした。

  外務省機密漏洩事件、沖縄密約事件また西山事件とも称される事件は山崎豊子さんの小説「運 命の人」のモデルとなっています。

 事件の概要は、1971(昭和46)年、佐藤栄作政権とニクソン政権の間で沖縄返還交渉において公式にはアメリカが支払うことになっていた地権者への原 状回復費400万ドル(時価約12億円)を日本政府が肩代わりするという密約を結んでいた。このことを裏付ける電信文のコピーを毎日新聞政治部の西山太吉 記者が入手した。72年(昭和47)年衆議院予算委員会で社会党の横路孝弘衆議院議員らが電信文のコピーを見せながら密約の有無を質した。
 国は密約の存在を認めないばかりか、西山記者が情報入手の目的で外務省の女性事務官と「密かに情を通じ」た上、女性事務官を唆し電信文のコピーを入手し たとし て女性事務官を国家公務員法(機密漏洩の罪)、西山記者を同教唆の罪で逮捕・起訴した。
 一審では女性事務官は有罪(控訴せず確定)、西山記者は無罪となったが、控訴審では有罪、最高裁は被告側控訴を棄却し有罪が確定した。
 国民の知る権利を男女の下半身のスキャンダルと摺り替えた情報操作が功を奏した事件である。

 さて、紹介する映画「密約  外務省機密漏洩事件」は1978(昭和53)年にテレビ朝日でテレビ映画として作られた作品です。通常テレビ映画は16ミリフィルムで撮影され るものだそうですが、この作品は当初より劇場公開を計画されていたそうで劇場映画と同じ35ミリフィルムで撮影されていたそうです。88年に一部劇場で公 開されたものが今年になって全国の劇場で公開されています。
 原作は裁判を傍聴されていた澤地久枝さんのノンフィクション作品「密 約―外務省機密漏洩事件」です。

 32年前の作品とは思えない見ごたえのある映画でした。俗物な私は新聞記者が肉体関係にある女性を自分の名誉欲のために使ったのではと の思いもありました。
 女性事務官が機密漏洩が明らかになってからは誰かの思惑どおりに悲劇の女性を演じているように思えました。裁判では「早く世間から忘れられたい」と言っ ていたものが判決後は週刊誌に手記を発表するなど不可解な行動をしています。

 こんなときにマスコミなどに官房機密費が密かに使われたと思うのは勘ぐりすぎでしょうか?

 78年当時、テレビ朝日のドラマは沖縄県では放映されな かったそうです。今回の映画は沖縄でも上映されるそうです。先日の残日録で紹介した沖縄県北部の辺戸岬にある「祖国復 帰闘争碑」の碑文の後段の文章を思い出しました。

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<前略>
一九七二年五月十五日 沖縄の祖国復帰は実現した
しかし県民の平和の願いは叶えられず
日米国家権力の恣意のまま軍事強化に逆用された
しかるが故に この碑は
喜びを表明するためにあるのではなく
まして勝利を記念するためにあるのでもない
闘いを振り返り 大衆を信じ合い
自らの力を確かめ合い 決意を新たにし合うためにこそあり
人類が永遠に生存し
生きとし生けるものが 自然の摂理のもとに
生きながらえ得るために 警鐘を鳴らさんとしてある
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 出演者の顔ぶれは懐かしい方ばかりでした。
 政治部記者石山に北村和夫さん、外務省の女性事務官に若かりし吉行和子さん、澤地久江さんと思われる女性に大空眞弓さん、石山の上司に永井智雄さん、女 性事務官の上司に滝田裕介さん、裁判長に信欽三さん、、、、
 クロード・チアリさんのテーマ曲もいい雰囲気を出していました。

 最後に澤地久枝さんのメッセージの一部を紹介しておきます。

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朝日新聞支局襲撃、記者の殺傷という事件に象徴されるように、政治が右旋回するときに標的となるのは「言論」です。半歩でも後退すれば、テロリストたちの 意図は達成されます。
問題の本質はなんであるのか、確認し直視しつづける姿勢をいまほど求められていることがあったろうかと思います。そのよきテキストとしての映画「密約」を 一人でも多くの人々に見ていただきたいと思います。
西山記者の弁護団中最年少であり、ドラマ化にあたって献身的な補佐をしてくださった西垣道夫弁護士が若くしてガンで斃れた悲しみをかさねて、生きている人 間のなすべきことを熱い思いで考えています。
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映画「密約・・・」公式サイト、レビュー「怒りと悲しみ」よ り
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