10/07/07 向田邦子「無名仮名人名簿」
◆昔の名前で出てい
ます
政治家とは破廉恥で節操のないものですが、昨年の総選挙で落選した輩が自民党や亜自民党から出馬しています。
国会議員とはよほど美味しい職業のようです。
ちなみに自民党から立候補している元衆議院議員は下記のとおりです。
他にも亜自民党の国民新党、新党改革、たちあがれ日本、みんなの党からも厚顔な輩が立候補しています。
猪口邦子/片山さつき/木村義雄/佐藤ゆかり/中野正志/平田耕一/福岡資麿/松浪健四
郎/宮沢洋一/安井潤一郎/安井潤一郎/渡辺具能
◆マッチポンプ
電車に乗ると車内広告に、サラ金と過払い利息を取り返すという法律事務所の広告が並んで掲出されています。
皮肉な演出と思えてなりません。また、貸金業法の規制強化は新たに街金、ヤミ金の市場を生み出すことでしょう。
保険会社はガンなどで高額な先進医療は健康保険が利かないと煽っています。
国の無策を哂っているようです。国は高額医療のすべてが健康保険の範囲外だ誤解を生む宣伝を取り締まり、正しい知識を国民に知らすべきです。
最近は時間はあるのに長編小説や堅い内容の本は途中で読みきれず、短編やエッセイ集が性にあっているようです。これも頭の老化かと思うと寂しいものです。
脚本家の向田邦子さんの「無名仮名人名簿」を紹介しま
す。
週刊文春で連載された同名のエッセイのうち50余編が単行本(1980年)になり、文庫化(1983年)されたものです。
全編、ユーモアやペーソスに満ちた人間観察の話です。その中の気になった数編を紹介します。
◆お弁当
世の中の中流意識は学校給食の影響ではないかと言われています。
向田さんは1929(昭和4)年生まれで私とおよそ20歳違うのですが、私と同じような経験をされているのに驚きました。
アルミ(アルマイトといったよう?)の弁当箱に麦飯に紫蘇の粉をふりかけ、申し訳程度に玉子焼きと漬物などのおかずが入った弁当でした。弁当の蓋を湯飲
み代わりに使っていました。
そんな小学生時代に鹿児島に転校されたときのこと。
小学4年生のとき、隣の席の子の弁当のおかずは茶色い見慣れない漬物だけだった。その子は貧乏なのを恥じているらしくいつも蓋で隠してたべていた。ある
とき、その漬物を一切れもらったら美味しかったそうです。鹿児島名産の壷漬だったのです。
帰りに「うちに寄ればうんとご馳走してあげる」といわれついていった。ちゃぶ台のほかに家具ひとつない貧しいうちだった。甕の蓋に手をかけたところに母
親が帰ってきた。「何をしている」ときつく叱責する母親に向かって「東京から転校してきた子がこれが美味しいといったから連れてきた」と言って泣き出し
た。
帰ろうとする向田さんをちゃぶ台の前に座らせ、丼いっぱいの壷漬を振舞ってくれた。
38年ぶりに鹿児島で同窓会があり、この人に逢いたいと思ったが叶わず、まだお礼を言わずじまいになっているとのこと。
◆マスク
15、6年前(1960年代初めでしょうか)のクリスマス・イブのこと。
ラジオのディスク・ジョッキーの原稿を書いて暮らしておられたそうです。
遅れた原稿を印刷所に届けることになった。地図を頼りに行くと、家内工業的な下請けのそのまた下請けの内職にタイプを打つ人の住まいだった。薄暗いしも
た屋のようなからマスクをかけた女の人が出てきて原稿を受け取ったあと「あんたねえ、帰ったら先生に言って頂戴よ。あんたのとこの先生の字は、すごく読み
にくいのよ。打つほうの身になって、もう少し判りやすい字で、書いてくださいって、そう言ってよ」と怒鳴られた。普段着のまま出かけてきた向田さんを使い
の人と間違えているらしい。
「申し訳ありません」という向田さんに気がついたようでお茶を入れるという。
ストーブからやかんを下ろそうとしたら把手が熱くなっていたようで、かけていた黒く汚れたマスクをはずしそれで把手をつかみお茶を入れてくれた。化粧気
のない二人の女がうすいお茶をすすっていた。
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気障(きざ)な言い方だが、「聖夜」という言葉を感じたクリスマスは、このときだけである。
------------------(引用)
◆唯我独尊
キエ子という友人が評判の高いお店に食事にご招待されたときのこと。
鮑のグラタンを食べていたらガツンと異物を噛んだ。貝殻の破片でも入っていたのかと判らぬようにナプキンに受けて見ると金冠だった。カウンターの奥にい
るシェフの入歯に違いないと思ったが、主人側にも同じく招待客にも気を使い何も言わずに帰ったが腹立ちに眠れない夜を過ごされたそうです。
ところが朝になり葉を磨こうと口に水を含んだら奥歯のあたりが沁みる。金冠は自分のものであった。
キエ子氏にはこの類の失敗がたくさんあるそうです。ちなみにキエ子の本名は邦子だそうです。
◆席とり
自由席の劇場に行くのにエレベーターを待っている。
エレベーターに乗り込むとき、前に並んでいた人が奥に入り後ろに並んでいた人がドア近くに乗ることになる。ということは後ろに並んでいた人から順に劇場
に入ることができる。なにか納得できない。
向田さんは席取りが苦手であるそうです。私も同様に人を掻き分けてまで座りたくありません。
倉敷に絵を見に行かれて帰りのこと、新幹線に飛び乗ったら通路までギュウ詰めの超満員、そんな中、五十がらみの男が大きな声で一人一人の下車駅を訊いて
いき大阪で降りる客の席を予約していた。
この男の人を見て、こんなことを思われてそうです。
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この人も多分、結婚、就職をキチンとやり、家を建て、定期預金をしているに違いないと思った。その人は鞄の手紐を手首に二重に巻きつけ、早くも寝息を立
てていた。
------------------(引用)
争って席を取ったり、抜け目のないように世間を渡らないと定期預金もなかなかできないのでしょう。
もう少し紹介しようと思っているのですが、次回に。
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