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10/07/17 映画「BOX 袴田事件 命とは」

 アメリカで普天間 基地の辺野古への移転についての日米の実務者間で協議されているそうです。
 参議院議員選挙では沖縄選挙区に候補者も立てず(立てられず)、沖縄県民を裏切り続けている民主党政権は、地元への説明をしないまま相手国との協議だけ を先行させて、既成事実を積み上げ辺野古沖への「移設」を強行しようとの企みでしょう。
 国の強権で民を押さえつけようとする態度は許せません。

  死刑制度に反対です。
 犯罪被害者や残された人の恨みを晴らすために加害者の命を奪えば一件落着するのでしょうか?
 死刑になりたいと人を殺す輩が出てくる世の中で、
人を殺せば死刑になるという犯罪の抑止力になるのでしょうか?
 戦争と同様に国が人を殺すことを認めたくありません。

 そして人が裁く裁判では冤罪の可能性がゼロではなく、無実の人を国が殺すという過ちを起越す可能性もゼロではありません。

 映画「BOX 袴田事件 命とは」 は、その冤罪事件の一つの袴田事件を扱ったものです。
 1966(昭和41)年静岡県清水市で起こった一家4人強盗殺人放火事件です。この事件では物的証拠が警察の捏造の可能性が高く、容疑者として逮捕され た元ボクサーの袴田巌さんの警察の直接、間接の拷問により得られた自白が主たる証拠だという典型的な冤罪事件です。

 静岡地裁でこの事件の裁判官として死刑判決に関与し袴田さんは無罪、冤罪事件だと公表した
元裁判官・熊本典道さんを実名 モデルとした映画です。

 死刑を執行する刑務官の苦悩は映画
休暇」や大塚公子さんの「死刑執行人の苦悩」で描かれていましたが、無罪だと思っていても合議で行われる判決で有罪(死刑)の判決に与 しなければならなかった人間の苦悩も深いものです。

 
自白主義だった戦前の旧刑事訴訟法から、1948(昭和23)年施行された新刑事訴訟法 は物証主義になったから20年近く経った袴田事件でも自白偏重がまかり通っていました。
 当時の静岡県警では拷問王といわれた紅林麻雄(くればやし・あさお)警部の人脈による拷問、自白、冤罪が繰り返されていたようです。
 九州から司法修習生として上京する熊本さんと、プロボク サーを目指して浜松から上京する袴田さんが偶然同じ列車に乗っているプロローグや、雪原を彷徨する熊本さんと幻想の袴田さんの姿のエピローグは少々臭い演 出でした。
 また、元ボクサーである袴田さんの回顧シーンでボクシングの試合の場面が何度か出てきましたが、ボクシングをしている二人の体は緩々でとてもプロボク サーの体だとは思えませんでした。もう少し体を絞らないとリアリティに欠けます。
 映画の出来としてはまずまずこれくらいでした。袴田さんの母親役で吉村実子さんが好演でした。

 冤罪事件を見聞きするたびに思うことは、どうしてこんな簡単な物的証拠の捏造を検察官も裁判官もマスコミも見抜けなかったのだろう、取調官に迎合して二 転三転する自白をなぜ疑うことがされなかったのだろう。

 袴田さんは74歳、身柄を拘束されてから40余年、毎日死刑執行に怯えながらの長い拘禁から精神に異常をきたされているそうです。
 死刑判決は、死刑を執行されない死刑囚に毎日、毎日大きな刑罰を与えているのです。

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