10/08/08
朝日俳壇、歌壇より
暑い8月は戦争、
原爆など平和を考えることの多い月です。
7月26日に発せられたポツダム宣言の受諾がなぜ8月14まで時間がかかったのかは昨年来抱いている疑問です。
小森陽一さんの「天皇の玉音放送」(未だ読みきれていません)によると、裕仁天皇は国体護持(天皇制の維持)が保障されないと
降伏できないと考え、また、天皇の正当な継承者の証とされる三種の神器をどこに護るかと腐心していたそうです。
決して国民の生命や財産を護るための時間ではなかったのです。少なくともヒロシマ、ナガサキの悲劇は回避できたのです。
8日付けの朝日新聞の俳壇、歌壇より気になった句や歌を紹介します。
◆朝日俳壇
◇水上を氷上のごとあめんぼう(久留米市・田中淳也:大串章選)
水上と氷上の取り合わせがいいですね。
◇出来ごとはみな過去のこと夕涼み(桐生市・杉戸乃ぼる:稲畑汀子選)
こういうのいいですね。
出来ごとはすべて過去のものですものね。
◇骨脆くなりて生き抜く原爆忌(長岡市・内山秀隆:金子兜太選)
作者は被爆者なのでしょうか?
◆朝日歌壇
◇語り出す「学徒動員」それからを生き抜いて来し声の静かさ(福島市・美原凍子:高野公彦選)
戦争や原爆、悲惨な体験の語り部はみな静かに話されます。
その落ち着きが悲惨な状況をよく伝えます。
◇色褪せてゆく紫陽花の傍らに色褪せてゐる公約実行(熊谷市・内野修:高野公彦選)
アジサイの花は散ることがなく色褪せていくだけです。
民主党の政権公約もずいぶん色褪せてきました。国会議員の定数減や高速道路無料化などのやってほしくない公約が優先されて後期高齢者医療制度の廃止など
は手付かずのままです。
いっそ、散ればいいものを。
◇黒人を殺めし白人警官の判決待ちて我が町静まる(アメリカ・古田パーキンス和子:馬場あき子選)
これは09年1月1にカリフォルニア州オークランドで起こった白人警官が黒人男性の背中を撃って死亡させたオスカー・グラント事件を指すのでしょうか?
白人警官擁護派と白人警官を非難する人たちの対立が続いているそうです。
町中が緊張しているのでしょうね。11月に判決がでるそうです。
◇さし出されるマイクをさけてエビ漁に出られぬ男が船べりを打つ(アメリカ・ソーラー泰子:馬場あき子選)
評者は「どういう場面だろう。エビ漁に出られないのは海の汚染などだろうか。漁民は世界どこでも同じ。『船べりを打つ』にその無念がにじむ」と評されて
いますが、これはメキシコ湾の原油流出事故をさすのではないでしょうか?
人災だけに無念さも一入でしょう。
◆敗戦忌
佐佐木幸綱さんの選で戦争体験を詠った歌が多く入選していました。
しっかり読んで悲惨な戦争を忘れないようにしたいものです。
◇その母の背中の赤子がこの私引揚げ船は横浜に着く(横浜市・松村千津子)
◇お前らは口惜しくないかと絶叫せし若き士官ありて終戦日来る(相模原市・中村健次)
◇復員し六十五年色褪せし歩
兵操典(ほへいそうてん自分史に載せる(奈良市・吉田淳一)
◇転戦のたび潜水艦に
追はるる夢遠き今も哀
し「海の日」は(東京都・村瀬寛純)
◇少年時特攻で自爆するが夢老いて世界の平和なるが夢(狭
山市・黒後輝夫)
◇空からは岩に見えよ
とうずくまる機銃掃射
(きじゅうそうしゃ)未だ見る夢(横須賀市・矢田紀子)
◇予科練の「整列」に似る
群雲(ぐんうん)をわれは見放くる生き存(ながら)えて(新潟市・伊藤隆)
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