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10/09/06 朝日俳壇、歌壇より

 アナログテレビの 画面は、四六時中早くデジタルにしろ、アンテナはどうするこうする、分からなけりゃ××に電話しろと煩いことです。私はアナログ放送が終わればテレビを見 ない「確信犯」です。どうぞお構いなく。

 民主党の代表選挙がテレビジャックをしているようです。
 菅直人が勝てば、マスコミの世論操作の勝利といえるでしょう。

 8月末の毎日新聞の世論調査では消費税増税に賛成する人が51%、反対する人が44%だったそうです。
 この国には金持ちがなんと多いのでしょうか?
 マスコミの垂れ流す「税収が少ないから福祉の財源を確保するためには消費税を増税しなければならない」との煽りを信じる人が多いのか、どちらにしても施 政者には楽な国民であります。

 消費税は金持ちには甘く、物言わぬ貧乏人から吸い取るという税金です。騙されてはなりません。


  6日付けの朝日新聞の俳壇、歌壇より気になった句や歌を紹介します。

◆朝日俳壇
◇国難のごとき猛暑日つづきけり(さいたま市・藤井健治:大串章/金子兜太選)
 選者の大串章さんは「今年の猛暑はけたはずれ、38度を越す日も何日かあった。まさに『国難のごとき』猛暑」と、金子兜太さんは「誇張も時に真」と評さ れています。
 「国難」かどうかはさて置き、熱中症とかで死ぬのは貧しい老人、所在不明の高齢者も元を辿れば貧しさからの「所在不明」です。このことが「国難」だと思 います。

◇冷房に頼り過ぎたる暮しかな(久留米市・谷川章子:稲畑汀子選)
 今年の暑さに電力会社から「電力の消費を抑えるよう」との呼びかけはなかったようにです。何年か前にはマスコミがそんな提灯記事を流していたように思い ます。
 冷房に頼る生活が普通になってきましたが、私は貧乏なこともあり電力にあまり頼りたくないとの気持ちから今年は冷房も扇風機もなしで過ごしました。電力 会社(関西電力)は発電量の約半分が原子力発電でクリーンエネルギーだとCMを流しています。それならせめて原子力の部分を使わないで生活できないでしょ うか?

◇雨脚に一瞬蝉の声絶ゆる(金沢市・今村征一:稲畑汀子選)
 蝉は雨が降りかけると一斉に鳴くのを止め、上がると一斉に鳴き出します。
 蝉の中にコンダクターがいるようにいるように思えます。

◇敗戦忌上野に在りて漂(ただよ)へり(東村山市・清藤武義:金子兜太選)
 8月15日を敗戦記念日と呼ぶか、終戦記念日と呼ぶかは大きな違いだと思います。「終戦と呼ぶ人は信用しない」といった人がいました。そこまではないで すが、どちらかというと「敗戦」を支持します。
 選者は「上野という地名と絡んで複雑な感銘が残る。いま、浮浪あるいは職探しの状態にある作者か。思い入れか」と評されています。
 敗戦直後の上野駅の地下通路は孤児や浮浪者で溢れていたと読んだことがあります。そんな時代と自分の身を重ねて詠まれた句でしょうか?

◇生ましめんかなヒロシマの蝉の穴(横浜市・大井みのる:金子兜太選)
 あの日、やっと羽化して飛べるようになった蝉も焼き殺されたことでしょう。現代に行きとし生けるものはみんな健やかに生を全うしてほしいものです。

◇鯖鮨の届かぬ秋となりにけり(日立市・加藤宙:長谷川櫂選)
 鯖鮨を作って送ってくれた人が亡くなったのか、秋になって美味しい鯖が手に入り難くなったのか浅学の身にはよく分からない句でした。

◆朝日歌壇
◇背負われて楢山行きし「おりん」かな背負う人なき百歳いずこ(高槻市・奥本健一:高野公彦選)
 姥捨て伝説を題材にした深沢七郎さんの「楢山節孝」は映画にもなっています。おりんを演じた坂本スミ子さんのことを今でも覚えています。村田喜代子さん の「蕨野行」も姥捨てがテーマでした。
 働けなくなった老人を口減らしのために山に捨てるという社会システム、現在の姥捨ては社会システムから弾き出された人たちの悲劇、現代の方が悲しみは深 いように思います。

◇失業し金がないから棚経を読みに来るなと電話のかかる(三原市・岡田独甫:高野公彦/永田和宏選)
 お布施を用意できないからお盆のお参りに来てほしくないという電話をよこす貧しいけれど律儀な檀家。親が死んでも葬式代がないから遺体をそのまま放置 し、親に支払われる年金を生活のために使ったという話が多いこと。役所は「年金の不正受給を防がねば」と言うが、そうまでしなければ生きてゆけぬ世の中が 狂っているのではないでしょうか?

◇パンの耳捨てしを恥じぬみみだけで一日生きしとふ歌人いづくに(成田市・神郡一成:永田和宏選)
 「ホームレス歌人」公田耕一さんの入選歌が途絶えて久しい、その公田さんを詠んだ歌でしょうか。
 8割、9割の人には飽食の時代であっても1割の人にはパンの耳が命を繋ぐ大事な食糧となっています。飽食の時代、食べ物が人の口に入るならまだしも、コ ンビニ弁当のように食品が大量に捨てられています。

◇語る人眠る人読む人人それぞれに夜明けを待てる駅舎のベンチ(伊達市・手塚春世:佐佐木幸綱選)
 昔の鉄道の駅はのんびりしていて、冬はストーブが焚かれ、夏は開け放たれた窓から夜風が入るような風情があったものです。今ではこの歌のように夜明けを 待って語る人、眠る人、本を読む人を駅のベンチは受け入れてくれるのでしょうか?
 夜行列車の少なくなった今は、最終が出れば例え数時間でも客を追い出しシャッターを閉める駅が多いように思います。こんな駅では用事がなくても人の訛り を聞いているだけでも楽しいそうです。

◆河野裕子さん追悼歌
 今週の朝日歌壇には先日亡くなられた河野裕子さんの追悼歌が多く入選していました。
 河野裕子さんをよく知りませんが、追悼歌の数だけ親しまれていたのでしょう。
 河野さんの夫である永田和宏さんは講評欄で下記のように書いておられます。

 「私事を書く場ではないが、選歌をしながら何度も泣いてしまった。二百通近い河野裕子を悼む歌が寄せられ、驚き、感謝している。河野は亡くなる前日まで 口述で歌を作っていた。選歌も最後までやり遂げた。歌に択ばれた歌人だった。歌人としては幸せな一生だったが、家族としての喪失感に見合う言葉はまだ出て こない」

◇ブラウスの中にけぶりし乳房(ちちふさ)よ子を打ちし掌(て)よ河野裕子さん逝く(春日井市・伊東紀美子:高野公彦選)

◇置いて死ぬわけにいかないその人を残して逝きぬ河野裕子は(名古屋市・森有佳里:永田和宏選)

◇三歳で母失いし永田故母にもなると教室で聞く(姫路市・清水千登世:永田和宏選)

◇紅さんあなたが子を産むまでは死ねないのそう歌いし母は逝きたり(高岡市・森平恵子:永田和宏選)

◇月出るまへの七つのしづくと詠みたりし人逝くひとの悲しみ多く(岡山市・小林道夫:永田和宏選)

◇コスモスの花咲くまではせめてせめて生きてほしかった河野裕子さん(相模原市・尾崎裕美:馬場あき子選)

◇あらためて歌集を見つつ胸せまるどどつぼ土鳩も今日は昏し(東京都・狩集祥子:馬場あき子選)

◇山にそよぎ白き葉見せるはマタタビと亡き河野裕子さんの歌で知り足り(川越市・土屋富子:佐佐木幸綱選)

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