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10/11/18 朝日俳壇、歌壇より

 働き始めて2ヶ月 余り、少し疲れが溜まったようです。季節の変わり目と重なり倦怠感が抜けません。感度が低くなっているのか俳句もどきにも迫力がありません。また、この Webサイトの更新も滞りがちです。

◆一票の格差裁判
 17日、東京高等裁判所で今年の参議院議員選挙での一票の格差について「違憲」とする判決、「合憲」とする二つの判決がありました。

 「違憲」とした判決は「一票の格差」を放置してきた国会の怠慢を叱責するものであり、「合憲」とした判決でも「大きな不平等があること」は認めており 「国会で喫緊の国民的課題として速やかに投票価値の平等の重要性を踏まえ、検討することが望まれる」とだったそうです。
参院定数訴訟 『一票の格差』正すとき」(東京新聞 10/11/18 社説)

 判決は参議院議員選挙の都道府県単位の選挙区選挙についてのものです。衆議院議員選挙での小選挙区選挙も同様のことです。民主党のいう比例区の定数削減 などもってのほかです。


◆裁判員裁判による死刑判決
 裁判員の参加する裁判で初めて死刑の判決が下されたそうです。死刑制度があり死刑を含む重要犯罪の裁判に裁判員が参加していれば、いずれは死刑判決がで ることは当たり前のことでした。
 しかし、でも、なんとも後味の悪いことです。

 その裁判で裁判長は被告に「控訴」を進めたそうです。死刑を言い渡しながら上級審に改めて判断をしてもらえとは異例のこと。
 死刑判決が裁判員(6名)、裁判官(3名)の全員一致でなかったことが伺えます。

 判決後に会見に応じた裁判員の一人は「
『何回も涙を流した』と裁判にかかわった苦しさを語り、裁判長と同じく『控訴して ください』と胸の内を明かした。『被告は遺族に何かをしたいという状態になっている』とも語り、やはり控訴を勧めた[裁判員初死刑判決]なぜ控訴を促したのか」(沖縄タイムス 10/11/17)

 国民に人殺しの片棒を担がせるような裁判に参加させ、自分は死刑に反対したとしても死刑判決が下されれば一生苦しまなければならないようなことが国民の 義務だろうか?死刑制度を廃止するか、裁判員制度を止めるかすべきではないだろうか。


  14日付けの朝日新聞の俳壇、歌壇より気になった句や歌を紹介します。

◆朝日俳壇
◇金木犀母の腋毛を見る少年(入間市・峠谷清広:金子兜太選)
 選者は「微妙に美しい色気」と評されていますが、こんなエロチックな句が詠めるのですね。凡人には「金木犀」から「母の腋毛」への連想が沸きません。
 今年はなぜか、木犀の香りが鼻について出しゃばった嫌な匂いに感じられました。

◇姥捨山へそつぽ向きたる捨案山子(盛岡市・草花一泉:金子兜太選)
 案山子の捨てられる季節です。転がされた案山子が姥捨山にそっぽを向いている。次の句も案山子を詠んでいます。

◇アルプスの山を見てゐる案山子かな(大阪市・徳永由紀子:稲畑汀子選)
 こちらの案山子は山を見ている。こちらの句の方がわかり易く親しみやすい。

◇旅人のやうな顔して冬来たる(神戸市・大塚英登:長谷川櫂選)
 選者は「どこからかどこかへ行く旅人、そんな顔をしているのは四季のなかで冬だけだろう。冬の初めには芭蕉忌もある」と評されていますが、春も夏も秋も 飄々と旅人のように現れて旅人のように去って行くように思えます。
 春はちょっと太目のおじさん、夏は真っ赤な洋服を着たお姉さん、秋は神経質そうなお兄さん、冬は白髪のおじいさん風な旅人でしょうか。

◇流れ行く雲の隙間の秋高し(盛岡市・飯塚柚花:長谷川櫂 選)
 白い雲の間から見える青い空を「秋高し」と詠む、私には発想できません。今週は長谷川櫂さんの選に同期しました。

◇新宿やビルに貼りつく鰯雲(さいたま市・上村酔象:長谷川櫂選)
 高層ビルのガラス窓に映る雲を見てこんな句ができるのですね。すっきりとした一句です。

◇棒のごとよぎる速さの鼬かな(熊谷市・時田幻椏:大串章選)
 鼬の走る速さを「棒の如く」とはうまいです。

◆朝日歌壇
◇疲れての旅のおわりの大垣に芭蕉に代わり酒すこし飲む(八王子市・相原法則:馬場あき子選)
 芭蕉の「奥の細道」の最終地・大垣に旅されたのでしょう。芭蕉を思って「酒すこし飲む」がなんともいえずによいです。うわばみの私などは大垣で酩酊とな ります。

 今年の秋には野生動物が里に下りて来て、怪我人まででる騒ぎになっていました。佐佐木幸綱さんの選10首のうち8首がそのような野生動物を詠んだ首が入 選していました。
 佐佐木幸綱さんは「さまざまな場所に出てきた野生動物の歌である。親子づれの熊、キャベツを食う野兎、鉄棒で遊ぶ猿、彼らと共生する方法を見つけたいも のである」と書かれています。
 山を削って彼らの居住地に侵入したり、彼らの食べ物のもとの植物や小動物が住めなくしたのは人間です。少しは遠慮しながら住むくらいの謙虚さが必要かも しれません。

◇市街地をじゃれて歩きし二十分後射殺されたる羆(ひぐま)の親子(稚内市・藤林正則:
佐佐木幸綱選
 今までじゃれていた親子の熊が射殺される。この秋何頭の熊が殺されたのでしょう。

◇菜園のキャベツ野兎に食べられてスーパーに行くマンガのような(石岡市・武石達子
佐佐 木幸綱選
 今度は可愛い野兎、野兎にキャベツを食べられて人間が食 べる分はスーパーに買いにいくという。まさに共生です。

◇猿二頭わっさわっさと木を揺らす廃屋なればそれさえうれし(飯田市・草田礼子:馬場あき子/佐佐木幸綱選)
 猿が遊ぶのさえうれしい寂しい廃屋の姿、過疎と過密の両極端しかないようです。

◇廃校の鉄棒に来て小猿めが夕日を蹴りてくるりとまわる(宮城県・須郷柏
佐佐木幸綱選)
 今度も猿、「小猿め」に優しさを感じます。

◇イノシシが処かまわず掘り返すそのひもじさを当り散らす がに(西海市・前田一揆佐佐木幸綱選
 猪の食事跡を見て「ひもじさを当り散ら」しているようだと。

◇うかうかと博物館に棲みついた狸見たさに博物館へ(大阪市・灘本忠功
佐佐木幸綱選

◇猿が食い猪(しし)が荒して残したる虫食い栗を食うはせ つなし(四万十市・島村宣暢佐佐木幸綱選
 共生の歌。猿も猪も食い残した虫食いが人間の食べ物です。

◇生きるため街に出てゆく熊に似た父を見送る出稼ぎの朝 (佐倉市・内山明彦佐佐木幸綱選
 この歌はちょっと違った熊の歌、暮らしを守るために出稼ぎに行く父を街にでる熊と重ねる、考えさせられる一句でした。

 さて、野生動物の歌はここまで。
◇恋話いつも聞き役わたしには失恋さえも眩しいひびき(八 王子市・青木凪:高野公彦選)
 若い女性の歌、良いですね。若い人は。

◇白子干(しらすぼ)しに蛸まじりゐて職場の個性豊かな友思はしむ(東京都・上田国博:高野公彦選)
 ちりめんじゃこに入っている蛸や海老の混ざり物をちりめ んモンスター(ちりもん)と呼ぶようです。
 そんなちりもんを発見して、個性的な友だちを思い出すとは良い友だちですね。

◇突然にこおろぎ橋に行きたいと降り立つ君はあの時のまま(神奈川県・中沢洋之:永田和宏選)
 こおろぎ橋は北陸・山中温泉にあるこおろぎ橋でしょうか。
 突然に温泉に行きたいと言い出す物語とは
どんな物語なのでしょうか?

◇ゼロ磁場とふ分杭(ぶんぐい)峠の走り根に座してもみぢの天蓋あふぐ(飯田市・岡田まつ子:永田和宏選)
 ゼロ磁場とは「N極とS極がお互いに打ち消しあって・・・」、難しいからわかりません。長野県伊那市にある分杭峠がゼロ磁場でパワースポットの一つと言 われているそうです。
 そんな峠の走り根に座って空を覆う紅葉を見ているとは、スケールの大きな歌です。

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