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10/12/22 朝日俳壇、歌壇より
  20日付けの朝日新聞の俳壇、歌壇より気になった句や歌を紹介します。

◆朝日俳壇
◇雑踏の手提げ袋がクリスマス(大阪市・竹内宗一郎:長谷川櫂選)
 この季節には、手提げの紙袋のデザインが緑と赤のクリスマスカラーになります。先日買った中華の持ち帰り専門店の粗末な紙袋までヒイラギの葉の緑と実の 赤のクリスマスデザインになっていました。
 クリスチャンでもなく、消費力もない私には関係ないことですが。

◇逃れたる熊の母子やねたらうか(広島市・金田美羽:長谷川櫂選)
 やさしい句です。
 今年は野生動物が里に下りたとニュースになっていました。彼らは害獣として駆除される運命、その人間の手を逃れた親子の熊はうまく逃げ遂せて今頃は安ら かに眠っているだろうか。元はといえば彼らの方が先住者なのに。

◇人の来て鳰の安らぎ乱しけり(浜田市・田中由紀子:大串章選)
 鳰(にお)はカイツブリのこと。前句と同じように野生動物と人間の怪しい関係が詠まれています。

◇裏山の仔細は聞かず牡丹鍋(市川市・竹内空夫:金子兜太選)
 これもまた、野生動物と人間の関係。この句では裏山の猪は牡丹鍋として人間に喰われてしまう。
 「裏山の仔細」がなんとも言えず、うまいと思いました。

◇雪国を捨て来し母の日向ぼこ(名古屋市・江部幸夫:金子兜太選)
 故郷を捨てた人間にしか分からない哀しさがあるような。いや、きっとある。女は生家(故郷)を出なければならない宿命?そして次三男坊もまた故郷を出る (捨てる)もの。

◆朝日歌壇
◇少年の闇推量(はか)るがに目をを閉じて若い裁判員訥訥(とつとつ)と告げる(石巻市・須藤徹郎:佐佐木幸綱選)
 先週の朝日俳壇の入選句<少 年に判決下る寒さかな 森田進>と同様に殺人を犯した少年に裁判員裁判で死刑判決が出されたことが詠われています。
 取手の事件のように厭世的な犯罪に死刑が抑止力になるとは思えません。

◇スーパーが斎場となる改装の突貫工事何を急ぐや(行方 市・鈴木節子:佐佐木幸綱選)
 廃業したスーパーを買い取って葬儀場にする。人間が生きるために食べる、そのために食料品を売るスーパーが、人間の死を当て込んだ葬儀場に生まれ変わ る。皮肉なこと。
 ある街で、教会の傍に連れ込みホテルがあったのも可笑しな取り合わせと思ったことがありました。

◇東京の夜の長さをいぶかしみそうだ奈良には地下鉄がない(奈良県・多昭彦:永田和宏選)
 東京は夜の長さより、夜の猥雑さの方が気になります。

◇着弾などなければ一生知らぬ名の延坪島を覚えてしまう(神戸市・林田ふく:永田和宏選)
 武力で物事を解決しようなどと馬鹿なことを考える連中がいて、武器を作って戦争を煽る連中がいる。どちらも自らは安全なところにいる連中だ。

◇声あかきずわい売り子の間にゐて黙つて海鼠売る大男(金沢市・前川久宣:馬場あき子選)
 赤いズワイガニを売る人は赤い声、黒っぽくグロテスクなナマコを売る男は黙っている。対比がうまい。赤い声の主は若い娘のよう、ナマコを売るのは「大 男」でなくてはならないような。

◇体色を石に変えたる雨蛙死者の名もなき石塔に住む(三原市・岡田独甫:馬場あき子選)
 天王山は私の散策コースですが、山中に無縁仏の石塔が散在しており誰が世話をするのか水や花が供えられています。
 名もない兵士の生きていた存在した証でしょうか。
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