11/02/25 朝日俳壇、歌壇より
私のフォローしているTwitterの話題は、沖縄県東村高江で沖縄防衛局が強行しているア
メリカ軍のヘリパッド建設工事、山口県上関町で中国電力が強行している原発建設工事、それぞれに反対している人たちからのツイートで溢れています。しか
し、マスメディアはほとんど報じない。試しにYahooでもGoogleでもキーワードに「高江 ヘリパッド」と
入れて検索してみると、沖縄タイムス、琉球新報などの沖縄地元紙の他には、しんぶん赤旗が報じている程度です。この国のメディアは独裁者に支配された国の
言論統制を語る資格はありません。
21日の朝日新聞の俳壇、歌壇から気になった句や歌を紹介します。月曜日の新聞記事を金曜日の夜に紹介するという体たらく。
◆朝日俳壇
◇節分の鬼を恐れぬ齢となる(北海道鹿追町・高橋とも子:長谷川櫂選)
年を重ねれば鬼など怖くないもの。馬鹿な施政者による悪政が怖い。
◇雪消えてただの枯木に戻りけり(秦野市・加藤三朗:長谷川櫂選)
雪を被った枯れ木は花咲爺さんの木のように花を咲かせたように見えるがそれは仮の姿、雪が消えれば元の枯れ木に戻ってしまう。元の姿に戻った枯れ姿に安
堵する。
◇流氷を映すテレビの古びけり(茨木市・瀬戸順治:大串章選)
ブラウン管テレビに作られた天地の余白(余黒)に四六時中「あなたのテレビはアナログだ」と脅迫するテロップが流されている。放送業界、家電メーカーと
大手の家電量販店だけが儲けるための馬鹿馬鹿しい施策のためにいくらの税金が投じられているのでしょうか。そんな我が家のアナログテレビも7月までの命で
す。
◇湯たんぽも母も単純明快なり(福岡市・伊佐利子:金子兜太選)
兜太先生の選、難解な句です。単純明快なのは何なんでしょう?
「こうしたズバリ言い切りの利いた句では、相手の言葉が勝負手。湯たんぽとはお見事」と選者は評されていますが。
◇河内より暗峠(くらがり)越えて恋の猫(大阪市・森田幸夫:金子兜太選)
暗峠は河内平岡から南生駒をつなぐ国道308号線の難所、サイクリング(坂)愛好家の間では有名なところです。私は奈良県側から大阪府に抜けたことがあ
りますが、大阪側は斜度20%以上の劇坂です。
そんな坂を越えて恋する猫が通うのでしょうか。
◇熟女とはいへど裸身の白き葱(羽村市・安元ふみき:金子兜太選)
「熟女とはいへど裸身の白き」と読み進めるとドキッとしましたが、その裸身の白さは「葱」だったと大どんでん返し。参りました。
◆朝日歌壇
◇円(まどか)なる光の中にうずくまり老いを演ずる若き芸
人(横浜市・田口二千陸:佐佐木幸綱選)
幾通りもの物語りを想像できる短歌が好きです。
この歌も、円な光の中とはどんな風景、野外、舞台、若き芸人とは?と色々な物語を想像することができます。
◇老体の開口部みな緩みきてあふれでるものみないとほしき(川崎市・仁科光雄:高野公彦選)
目、鼻、口、肛門、排尿器などから涙、鼻汁、涎、尿などがコントロール甘く出てくるもの、締りがないということ情けないことだが加齢では致し方ないとあ
きらめるより他ありません。作者のように愛しいとまではまだいきません。
◇一人食む食事は餌と言いあいてシングル三人(みたり)鍋囲みおり(秩父市・畠山時子:高野公彦選)
宿直の夜はコンビに弁当とカップ味噌汁、粗末な食事を粗末な部屋で一人食べています。まさに餌です。女の人はたまには友達と食事ができますが、老いた男
は一人安酒を飲むくらいしかできません。
◇覚えない打ち身のようにういてくる思い出といふも時に残酷(瀬戸内市・児山たつ子:永田和宏選)
この頃思い出すのは苦い思い出ばかり、もう少し、あと少し、ああすれば、こうすればと悔いることばかりです。
共感できる一首。
◇寒中の水平線は雲が決め対岸の原発雲に隠れる(福井県・大谷静子;永田和宏選)
大谷さんは原発を詠んだ歌で入選を重ねられています。敦賀半島には「電源立地」の看板があちこちにあり、原発事故の恐怖と交換したものは何でしょう?声
高に原発反対と詠まなくても静かな歌が強いメッセージとなっているように思います。
◇「百歳も疲れますよ」といふ母に介護士笑みて頷いてをり(糸島市・大江俊彦:馬場あき子選)
百歳(も)疲れますよ、「も」がいいですね。
◇異星人のごとき干し蛸はりつけにされて曝さる寒風の浜(福山市・廣本貢一:馬場あき子選)
日に干すことによって旨みを増す食物は多いですが、蛸もそのひとつ、蛸飯にするには干し蛸を使うのが一番です。
乾いた風の冬の瀬戸内海では竹ひごでパンパンに伸ばされた蛸が異星人のような姿を晒しています。ちょっと不気味でちょっとユーモラス。
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