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11/03/10 山本昌代「居酒屋ゆうれい」
 日本国民を、沖縄 県民を侮辱したアメリカ国務省のメア日本部長が更迭されたとマスコミは報じていますが、その実態は国家安全保障会議(NSC)アジア部長に昇格する人事 だったと天木直人さんのブログに書かれていました。
 嘗められたものです。

 さて、66年前の今日(3月10日)未明、東京下町はアメリカ軍の無差別攻撃により10万余の命が奪われました。武器を持たない市民を殺戮することは明 らかに国際法に違反する蛮行です。

 漫才師の内海桂子さんは当日の様子をTwitterで下記のように体験を語られています。

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 三月十日の東京大空襲で下町の人間は誰しもが死ぬ可能性 があった。私達家族四人は日に日に激しくなる米軍の空襲に荷物をまとめて何時でも逃 げられるようにしていたが、まさかこれほど激しい攻撃を予想も出来ず焼夷弾が落とされてからは何処を見ても火の手が上がり逃げていく方向すら見出せないで いた
 国際通りの交差点に来ると日本刀をかざした褌一丁の男が 「逃げるな」と叫んでいた。我々は近くにあったブリキで火の粉を避けて数時 間そこでうずくまって火が通り過ぎるのを待っていた。近くの隅田川に逃げた人達は川に飛び込んでも身動きできず焼死、溺死数万人。私達は褌の人に助けられ た。
 夜が明けて何となく市中が見えてきたが、黒い塊があちこ ちに散乱していた。最初は分らなかったが皆焼死体で、まだ焼け焦げの匂いで腐った匂 いではなかった。申し訳ないが自分達の事で精一杯、兎に角その辺から一歩でも静な方に逃げていきたかった。いつ何時空襲が始まるかそれだけが心配で。
--------------------(内海桂子さんのTwitterより)

 一夜にして10万人の10万個の人生がアメリカ軍によって焼き尽くされました。
 こんなことを二度と起こさせないためには”戦争を知っている人は伝えること。知らない人は学ぶこと”と、東京大空襲の被災者である作家の早乙女勝元さん は言われています。
 「今、平和を語る:東京大空襲を語り継ぐ作家・早乙女勝元さん」(毎日新聞 10/02/22)


  古本屋で買った山本昌代さんの 「居酒屋ゆうれい」を紹介します。
 ストーリーは下町の居酒屋夫婦に起こる幽霊騒動を軽いタッチで描いています。このような軽い読み物ならすんなりと読みきることができます。

 舞台は横浜の反町(たんまち)という下町、路地の奥にある居酒屋・かずさ屋は千葉から出てきた壮太郎の父が始めた店、父の死後壮太郎が店を継いでいる。

 その店はこんな風に書かれています。
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 薄っぺらの古ぼけた卓が二つ、そのまわりに背もたれのない赤いビニール皮の椅子が、それぞれ三本の黒くて細い脚を伸ばして並んでいる。十五、六人でいっ ぱいになるほぼ真四角の店の、入口から見て左の奥が酒置き場と調理場、とはいってもあんまり手のかかる肴はつくらないが、右の奥が一段高くなって四畳半の 畳敷になっており、その奥に二階へ上がる階段が横向きについている。
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 そんな居酒屋の二階には末期の癌に冒され死を待つだけの妻のしづ子が寝ている。
 壮太郎はそんな妻のことを「どうせ死ぬと決まったものなら、いっそさっさと死んでしまえばいい、・・・」そうすれば病人も看ているものも楽になると思っ ている。
 妻を愛していてもそう思う夫、看る者と看られる者、どちらにも負担は重く大きいものです。壮太郎の思いはよくわかります。

 しづ子の死後再婚はしないと約束した翌朝、しず子は亡くなった。しづ子との約束を忘れかけたころ兄嫁の世話で里子という女と再婚してします。

 壮太郎と里子の幸せな新婚生活にしづ子の幽霊が二人の寝床に現れ、おかしな三人?の生活が始まります。
 夫婦の営みを覗かれてしづ子を罵る里子だったが、二人はよく似た境遇に育ったこともあり次第にウマが合い姉妹のように過ごしています。壮太郎は犬嫌い だったしづ子を追い出すために仔犬をもらってきたりしますがうまくいきません。

 三人?の奇妙な暮らしがこれからも続くようにエンディングに書かれています。
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 こいつらは明日(あした)からまたベタベタとくっついて、前にも増して仲よしになるのだ。まあいい、勝手にさしておけばいいんだ、どうせこっちの知った ことではないのだから。壮太郎は鼻を鳴らした。そしてモゾモゾと押入れの方に向き直って、首まですっぽり布団を被(かぶ)ると、自分でもあれと思うくらい すぐさま眠気がさして、明くる日の昼過ぎまで夢も見ないでぐっすりと眠った。
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 巻末の種村季弘さんの解説によれば、三遊亭圓生の「三年目」という演目を下地にしているようですが、圓生の「三年目」を聞いたことがありませんのでよく わかりません。

 また、萩原健一主演で映画化もされていますが、
テレビで放送されたのを観たような気もしますが曖昧な記憶しかありませ ん。
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