11/11/01 朝日俳壇、歌壇より
10月の現代俳句
協会のインターネット俳句会に投句していましたが、私の五句は相変わらずの成績でした。3点句×1、1点句×1、選外×3句でした。
選句した一句<あなたとは違う栞で夏閉じる・林六茶>が高得点を得られていたのがせめてもの救いでした。
今、読んでいる本の一つに織田淳太郎さんの「精神医療に葬られた人びと」があります。この本はヒップホップグループRHYMESTERの宇多丸さんがラジ
オ番組で紹介していて読み始めましたが、プロローグに3月11日の東京電力福島第一原子力発電所の事故が出てきます。
当時の報道を見ていて、老人介護施設での出来事と思っていたのが「双葉病院事件」ともいわれる精神病院に「社会的入院」をしていた老人が、生きたままな
のか、死を看取られてからなのか、病院に置きき去りにされたことを知りました。
あまりにも衝撃的な書き出しにショックを受けています。
10月31日付けの朝日新聞の俳壇、歌壇より気になった句や歌を紹介します。
◆朝日俳壇
◇君が代に饂飩(うどん)のびるや秋うらら(奈良県田原本町・小林博明:金子兜太選)
君が代とは、天皇の御代という以外の解釈のしようがありません。
その君が代(という歌)はうどんが伸びるほどに、うららかな秋の日のように退屈なものと読みました。
うどんは伸びないうちの食べたいものです。
◇初の字の朱を入れてあり秋刀魚買ふ(筑西市・大森薫:金子兜太選)
「初秋刀魚」と初の字が朱書されていたのでしょう。この朱
の一文字で食欲が沸きます。それもワープロの文字でなく金釘流の文字であれば最高です。
◇秋深く人は何かと淋しがり(神戸市・矢田武久・長谷川櫂選)
秋思なんて言って、秋はもの思う季節と刷り込まれた脳は、とにかく淋しがります。
◇掃けば落ち掃かねば落ちぬ落葉かな(備前市・石田みち女・稲畑汀子選)
掃くから落ちるのか?掃かねば落ちないのか?
きれいに掃くと落葉が目立ち、そのままの落葉の上には落葉は目立たぬということを、俳句にするとこういう具合になるのですね。
◆朝日歌壇
◇くたくたな寝袋たたむ被災地に別れを告ぐる日もう冬のにほひ(埼玉県・小林淳子:馬場あき子選)
被災地のボランティアとして寝袋での生活を重ねてこられたのでしょうか?春先に起こった事故は何ら収束の気配も見せずに冬に入る。悔しさと空しさ。
この歌のとなりに<妹が笑った顔で眠ってる笑った顔のクマ抱きしめて>と<登校班ハイソックスをぎゅっと上げななめの風に吹かれて進む>と富山市の松田
梨子さん、わこさん姉妹の無邪気な歌が並んでいるのも皮肉なことです。
◇風評を避けて秋刀魚がやって来た瞠れる眼に血を滲ませて(岐阜県・棚橋久子:馬場あき子選)
今のところ海産物の放射能汚染は報道されませんが、汚染は深く静かに進行していることと思います。
何度も書きますが、汚れた食べ物は原発を止められなかった、放射能感受性の低い年寄りが食べましょう。
◇どんぐりもこのこたけのこ好きな熊原発事故を知る術も無く(福島市・伊藤緑:佐佐木幸綱選)
野生動物の被曝の影響は何時、どのようにして出てくるのでしょうか?
ヒトを含めた生態系をも壊す放射能です。
◇列長いポイント五倍のスーパーでミートソース缶二つだけ買う(厚木市・前田千晶:佐佐木幸綱選)
「ポイント○倍デー」になるとなぜレジが混むのでしょうか?スーパーのポイントはスーパーで使うものです。消費者の囲い込み成功ですね。
家電量販店も競ってポイントサービスをしています。あの如何わしさに最近気がつきました。
◇木犀の香にふわぁんと包まれて放射能からふっとはなれる(福島市・美原凍子:高野公彦選)
美原凍子さんの歌はリズム(音)が良い。
◇きのうまでは夏だったのにと言いながら日の射すほうへ椅子を動かす(東京都・江川森渉:永田和宏選)
季節の移ろいはアナログ時計の短針のようなもので、じっと見つめていても変化はわかりませんが、少し目を離すと何時の間にか元の位置には無いものです。
◇獅子舞の獅子の口から「噛みましょうか」お願いしますと千円を出す(松坂市・山本公策:永田和宏選)
私の生れ育った地方では、正月に三重県から獅子舞が来ていました。在所の
外れの我が家には未だ気合の入らぬ獅子が舞っていました。
子どもには頭からガブリが定番でした。
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