11/11/13 橋下徹氏のレトリック
大阪府知事選挙の
期日前投票をしてきました。
かって大阪には「憲法を暮らしに生かす」黒田府政がありました。
今こそ25条を含む日本国憲法が国民の生活に生かされる、そんな政治になること願わずにはおられません。
第
25条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。 |
天性の詐欺師のように言葉をたくみに使い分け、幻想を与えている橋下徹氏が大阪市長選挙に立候補しました。
大阪市をよくする会の推す渡司考一さんが、反橋下の市政を実現するために立候補を取りやめたために、市長は平松、知事には梅田という構図で選挙戦が闘わ
れています。
橋下前知事の言動は、小泉純一郎元首相のワン・フレーズ・ポリティクスと言われる元気の良い、空虚な言葉使いに人気の集まったことを思い出させます。
橋下氏の言葉使いを、北海道大学準教授の中島岳志さんが解説してくれています。「橋下徹の言論テクニックを解剖する(その1)(そ
の2)」(マガジン9条)
中島さんは橋下氏の著書「図
説 心理戦で絶対負けない交渉術」が、「比喩」「前言撤回」を繰り返しながら人々を翻弄する言論戦術を解剖するには非常に参考になると書かれてい
ます。
孫引きも含めて中島さんの記事を紹介します。色地の囲みは引用です。
◆仮想の利益
交渉において相手を思い通りに動かし、説得していくには、はっきり言って三通りの方法しかない。
“合法的に脅す”“利益を与える”“ひたすらお願いする”の三つだ。そのなかで、最も有効なのは“利益を与える”ことである。
この場合の利益には二通りある。一つは文字通り相手方の利益。もう一つは、実際には存在しないレトリックによる利益だ。不利益の回避によって感じさせる
“実在しない利益”とも言える(6頁)。 |
相手を思い通りに動かすには「脅す」「利益を与える」「ひたすらお願いす
る」の3つだそうです。やくざがみかじめ料をとる手段と同じでしょう。
大
きな利益を得た、と相手方に感じさせるように、こちら側の苦労を強調するのである。その演出に、タフネゴシエーターは
腕をふるっている。詐欺にならな
い程度に、ではあるが(10頁)。 |
まさにやくざそのものではないでしょうか?
◆すり替え
橋下氏は知事就任時に職員への訓示で、大阪府は破産会社である。給与カットなど当たり前と言い、退任時には「大阪府は有料会社」と言いぬける。
しかし、大阪府の地方債残高(借金)はおよそ4年間の知事在任期間で増えているそうです。逆に大阪市は減っているそうです。
よ
く聞けばおかしな話も交渉では有効に作用する。(36頁)
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本人は百も承知で「ウソ」を吐いているのです。まさに詐欺師の真骨頂で
す。
中島さんは、「橋下氏がたとえ話を用いたときは、立ち止
まって考えてみる必要がありそうです」と言われています。たとえ話は政治の素人にもわかり易い、耳に入り易いから余計に注意が必要です。
◆前言を撤回する「ずるいやり方」
交
渉において非常に重要なのが、こちらが一度はオーケーした内容を、ノーとひっくり返していく過程ではないだろうか。まさに、詭弁を弄してでも黒いもの
を白いと言わせる技術である。"ずるいやり方"とお思いになるかもしれないが、実際の交渉現場ではかなりの威力を発揮するのだ。(32頁)
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自分で「ずるいやり方」「詭弁」を使って「黒を白」と言いくるめるのだ
と。
一度なされた約束ごとを覆す方法論は、交渉の流れを優位に運ぶ重要なものだと考えている。(32頁) |
前言撤回、約束を翻すことが交渉では重要なことと、彼の「公約」など信じ
るわけにはいきません。
ズバッと一見毒をもつような言葉を吐いては、明らかにあるいは徐々に否定していって内容を変えてしまうのです。
例えば、一時大騒ぎしていた府市の水道事業の統合を撤回し責任を平松さんに転嫁しているそうです。
◆不毛な議論をふっかける
交
渉の流れが不利になってきたら、不毛な議論をふっかけて煙に巻く。(90頁) |
自分の発言の不当性や矛盾に気がついても、相手に無益で感情的な議論を
吹っかけるとも書いてあるそうです。
そんな例として、08年私学助成の大幅削減に反対する高校生と議論したときのこと、「橋下さんの話は、結局は自己責任になるじゃないですか」と問い詰め
られ、「今の日本は自己責任が原則、おかしいというなら
国を変えるか、自己責任を求められる日本から出るしかない」と答えて相手の女子生徒を泣かせたそうです。
◆最後の手段は「お願い」
お
願いは非論理的な手段。相手の価値観に訴える効果的な内容を考える。(27頁) |
お願いをする相手はこういう泣き落としを理解してくれるような人であることが前提になる。 |
市町村長を集めた会議で泣いていた橋下氏を思い出しますね。あれも戦術
だったとはトホホ。
■脅し、言い訳、スキを与えない、味方との交渉……
自分に非がある場合でも、上手な言い訳をして、ピンチを切り抜ける!(75頁) |
相手が揺らぎだしたら考えるスキを与えず、一気に結論に持っていく(86頁) |
本当の落としどころは、相手方はもちろん、味方にも秘密にする(42頁) |
交
渉の見立てを慎重にして味方とのやり取りにも勝つ(43頁) |
ここまで教えてもらえれば「あなたも明日からハシモトトオルになれるか
も。
最後に中島さんの締めの言葉を紹介しておきます。
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本質から目を逸らしたままの、つくり出された「熱狂」に酔うのでなく、
冷静な目での検証と判断を!
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