11/12/11 朝日俳壇、花壇より
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月１１日付けの朝日新聞の俳壇,、歌壇より気になった句や歌を紹介します。
◆朝日俳壇
◇風花の風を残して消えにけり（横須賀市・佐藤博一：大串章／長谷川櫂選）
選者の一人、大串章さんは「ちらついていた雪片は消え、風が吹きつけるだけ。『風を残して』が上手（うま）い」と評されていました。
確かに風花から花を引くと「風」だけ、「風を残して」は思い浮かびません。
◇眠らむと山粧ひを解きにけり（東京都・宮内曳光：大串章選）
緑に被われていた山容が赤く色づき、やがて枯れ山になるのは眠るための準備だったのかと納得しました。
◇藁塚に凭れて乳をやりしこと（京都市・久世幸子：大串章選）
句を読んで藁の匂いを思い出しました。三反百姓の次男坊だった私は藁で作られた畚（ふご）（生れた地方ではツンダメと呼んでいました）に入れられて田ん
ぼに連れて行かれたような思いがします。藁の匂いは母の乳の匂いに通じるのかも知れません。
◇何もかも忘れたき日の落葉掻（神戸市・玉手のり子：稲畑汀子選）
最近、消費税増税、年金減額、医療費負担増、派遣法改悪と何もかも忘れたい日が続きます。
鬱々としていてもしようがない、庭でもあれば落ち葉掻きでもして汗を掻きたいものです。
◇十二月八日想えば髪白し（東京都・三笠比呂史：金子兜太選）
選者は「真珠湾奇襲から七十年。長い。髪白さを加え、全てに記憶ゆるむ。この虚（むな）しさ」と評されています。
作者は戦前戦中を生きて来られた方でしょうか。
◇柿食つて飾らぬ人となりにけり（伊賀市・福沢義男：長谷川櫂選）
政治家を初め、私のような庶民の周りにも飾る人の多いことです。
素の自分に自信が無いのでしょうか？そんなに肩の凝るようなことをせず素直に生きましょう。
◇何か落ちあとは音なき冬の闇（神戸市・矢田武久：長谷川櫂選）
こういう句が好きです。
ヒューヒューと鳴る虎落笛も冬の音ですが、木の実が一つコトリと落ちた後の静寂は前のコトリが一層際立ちます。
◆朝日歌壇
◇たらちねの母の言葉は遠慮がち「フクシマノコメモラッテケッカイ」（平塚市・三井せつ子：高野公彦選）
米を作る農家の人たちが自分たちの収穫物を遠慮がちに「貰ってくれないか」という情けなさ。
東京電力福島第一原子力発電所が事故を起こしその放射能で汚した、農林水産物は東京電力の責任で汚染度を調べさせなければなりません。無主物などと戯けた
ことを言わしておいてはなりません。
そして、全てを明らかにした上で、放射能に汚れた食べ物は原発を許してきた大人たちが食べましょう。そして、子どもたちには汚染されていない物を食べさせ
ましょう。
◇店先に見つけし零余子（むかご）炊き込めば俳句のような味がするなり（新座市・中村偕子：高野公彦／馬場あき子選）
一読した時には零余子の炊き込みご飯の匂いかと思いましたが「俳句のような味」でした。
さて、俳句のような味とはどんな味なのでしょう。
◇ぶらんこの鎖の匂ひになつた手を樫の隙間の夕日が照らす（和歌山市・植田陽子：永田和宏選）
こんな歌も好みです。ブランコから手のひらについた鉄の匂いは血の匂い、夕日に照らされた血の匂い。
色んな物語が生まれそうです。
◇ムササビは空飛ぶべしと思い立ち猫は思わず昼寝などする（東京都・野上卓：永田和宏選）
私など惰眠を貪る猫以下の存在です。
◇両の手に桃の実そつとつつむごと合掌をせるブータンの王（鳥取県・中村麗子：馬場あき子選
ブータンの国王夫妻が国賓として来日していましたが、滞在中マスメディアは無邪気な提灯報道ばかりでした。あの笑顔の影で何十万の「ブータン」国民が異
国で難民生活を強いられているのでしょうか。この歌のように、この歌が入選しているといるとことは、権力の走狗となったマスメディアとブータン国のプロパ
ガンダは成功したようです。
◇荒れしままの被災地映像被災者のあいつぐ自殺告げつつ流る（横浜市・土屋美弥子：馬場あき子選）
まとめなければなりませんが、被災地、被曝地の自殺率は相当上がっていることでしょう。
未だに３０００余の人たちが「行方不明」と扱われています。自殺者も不明者も東電の被害者。
◇返さるる履歴書ばかりの日を重ね子は一歳の父となりゆく（鹿児島市・篠原廣己：馬場あき子選）
身につまされる歌です。
一児の父となろうと職業欄は「無職」と書かざるを得ない、売り手と書い手のミスマッチなどというレベルの問題ではありません。
◇足音で帰りがわかると母は言う匂いで夕食をあてる私に（東海市・成田真帆：佐佐木幸綱選）
足音って指紋などのように人物特定に使えないでしょうか？足音は特徴が出るものです。
二人の関係が羨ましい。
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