12/01/10 朝日俳壇、歌壇より
更新が滞っています。
興味の話題を咀嚼できません。脳を初めとした老化の頂点近くに差し掛かっているのでしょうか?
◆インターネット俳句会
現代俳句協会の主催するインターネット俳句会に12月も5句投句したのですが、1点句が一つという散々な結果でした。
約1000人が5句ずつ投句、凡そ400人が5句ずつ選句、ざっくり言えば2000点の内の1点を頂戴したということ、ど素人にはありがたいことです。
まあ、ボツボツ精進いたしましょう。
◆海鳴り
藤沢周平さんの「海鳴り」が好きで何度も読み返している一冊ですが、「海鳴り」と言うものが具体的にどういうものか知りません
でした。
先日、大阪の朝日放送のバラエティ番組(探偵ナイトスクープ)で、視聴者からの「海鳴りを聞いて見たい」という投書に応えて津軽海峡まで聞きに
行っていましたが自然の音は聞くことはできず、結局は音収集家が沖縄の島で録音したものを聞くことが出来ました。
テレビではその音は十分に伝わってきませんでしたが、腹に響く重低音のようです。
藤沢周平さんは江戸の町で老境にさしかかった新兵衛とお
こうの関係にその重苦しさを重ねて書かれたのでしょうか?
9日付けの朝日新聞の俳壇、歌壇より気になる句や歌を紹介します。
◆朝日俳壇
◇大寒や七味ふりこみ伊勢うどん(三重県明和町・西出孝:
長谷川櫂選)
伊勢うどんには豪快に一味や七味を「ふりこみ」のが似合うようです。辛味で身体を温めるのでしょう。
先日、越前蕎麦を食べに行ったばかりなのに麺好きには伊勢うどんの甘めのたれに七味をぶっかけて食べて見たくなりました。
◇塵焼いて寒晴の空汚しけり(長浜市・東野了:長谷川櫂選)
塵は何の塵なのでしょうか。人に見せられないものを燃やして、真っ青な空を汚してしまったということでしょうか?
塵を「燃やす」のではなく「焼く」がそのように感じさせました。
◇福島のコメが泣いてる寒さかな(香取市・関沼男:長谷川櫂/金子兜太選)
北関東から東北一円の農産、水産物はみんな放射能で汚されています。全量を検査し全て公表すべきです。国民に判断の材料を示すべきだと思います。
先日も会津若松産の椎茸から720ベクレル/kgが検出されたと報じられていました。それも既に流通してから、国民の体内に入ってから分かったとは、収
束宣言などしている場合かと思います。
◇朝市や白菜の山くづれさう(福岡県福智町・大久保幸子:大串章選)
私が想像する輪島や高山、呼子の朝市の雰囲気と違いました。これらの朝市ではどちらかと言うと重さの割に値の張るものを商っていたように思いましたが、
白菜のように重くて嵩張るものを扱う朝市もあるのですね。
◇やうやくに先の見えきし落葉掻き(西予市・武知洋子:稲畑汀子選)
ようよう、先が見えたと頃に強い風が吹いてハラハラと落ち葉が舞う、あゝ元の黙阿弥なんてこともよくあること。
やっととの作者の思いが伝わりました。
◇原発や七十億人捨案山子(横浜市・大井みるく:金子兜太選)
我らは捨てられた案山子の同然、世界には一体いくつの原子炉や核兵器があるのでしょう。
◆朝日歌壇
◇「鮨は嫌い」米寿の母が初めて言う祝宴の事前協議に(松
江市・田中勝美:佐佐木幸綱選)
米寿を迎える母が初めて自分の好き嫌いを言った、この年代の女性は嫁して姑姑に使え、老いて息子の嫁に従うような苦労をされてきた方が多いようです。
もっと我侭になりなさいと我が母にも。
宴の相談を「事前協議」とはいささか硬い表現のように思いました。
◇赤と黄に燃えるためのみ生きてきた緑に生まれ一年かけて(西条市・眞鍋ユカリ:佐佐木幸綱選)
何度読み返してもよくわかりませんでした。が、一枚の葉っぱの生涯と読めばスラスラと入ってきました。
◇焼き鳥を食べに行く日はワンピース たくさん食べて笑いたいから(さいたま市・五十部麻:高野公彦選)
今週は小中学生と思われる方の歌が数多く入選していました。この作者も少女のようです。
いっぱい食べていっぱい笑いたいからウエストを締め付けないワンピースとは中々の達人です。少女にしては焼き鳥は渋いで
すね。焼肉より焼き鳥の方がオトナなように思います。
麻さんという名前もいいですね。先日、女優の室井滋さんが書かれた「しげちゃん」という絵本を孫娘に買ってやりました。
室井さんは「シゲル」という男の子のような名前を就けられ悲しかった、大きくなったら名前を変えようと思っていたのですが、そんなことはできないことで
した。両親がどんな思い出名前を付けたかを知った時から「シゲル」に誇りが持てるようになられたそうです。女優となって芸名として違う名前を使うこともで
きたのですが「シゲル」で通されているとのことでした。
◇肺への転移疑いありと告げられる「疑い」は医師の配慮なるにや(岡山市・小林道夫:永田和宏選)
「疑いあり」とは思いやりなのでしょうか。
ガンと聞くと2011年12月19日に入選されていたこの歌を思い出します。
<現役の頃のコートの肩濡らし癌を抱きて夫帰り来る>(横
浜市・中川節子)
◇チョッキ着たダックスフントとすれ違う「先生オハヨ」今日休診日(川崎市・藤田恭:永田和宏選)
井伏鱒二の「本日休診」を思い出しました。
◇ほだげんちょ、ふくしまの米、桃、りんご、梨、柿、野菜、人も生ぎでる(福島市・美原凍子:馬場あき子選)
美原凍子さんの歌。
福島の野菜、果物、どっこい「人も生ぎでる」ぞの叫べが哀しい。
◇憎き酒旨酒泣き酒笑ひ酒酔ひ忽々の亡夫と在りにき(東京都・鈴木淑枝:馬場あき子選)
酒毒に冒されている私など妻から見れば「憎き酒」でしかないのでしょう。
◇失敗はもう齢だからと許されて人格が徐々に崩されてゆく(筑紫野市・岩石敏子:馬場あき子選)
老いた人が粗相をしても老人だから致し方ないと「許される」悲しみ。こうして人格が壊されて行くのでしょう。
老いても惚けても、一人の人間として扱えと言いたい。
◆第28回朝日俳壇賞
俳壇、歌壇のページに昨年の俳壇賞が発表されていました。
大串章選の森木さんの<万緑や空を歩いて見たくなる>がすんなり入ってきました。
◇稲畑汀子選
虎落笛さへも絶えたり津波跡(芦屋市・酒井湧水)
◇金子兜太選
樹下に居て天思ふ音梅雨に入る(熊谷市・時田幻椏)
◇長谷川櫂選
七十億の二人と思ふ夜長かな(弘前市・千葉新一)
◇大串章選
万緑や空を歩いて見たくなる(神戸市・森木道典) |
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