12/05/30 朝日俳壇、歌壇より
先日、朝のラッシュ時のことです。二十歳前後と思われる女性がディパックを背負った
まま乗車してきました。満員に近い混んだしゃないですから背中のバッグが押されます。すると明らかに敵意のある顔を後ろに向けてきました。左後ろにいた私
と右後ろの中年女性は「困ったものだ」と顔を見合わせました。
注意すべきか悩みましたが、結局無視することにしました。やはり注意すべきだったと反省です。
芸人の母親の生活保護受給に関して、自民党の片山さつき議員が鬼の首でも取ったようにこんなことを言っているそうです。
「町内会や自治会にもっと権限を与える。それで孤独に亡くなる方も早期に発見し」「その両方でみんなで監視すると、いうふうに持って行くべき」と、国民
が相互監視の社会を作ると言うようです。
自衛軍の創設や基本的人権を制限するような憲法改正案をつくる自民党の議員らしい発想です。
自民党は戦争がしたい、戦前戦中の社会を待望しているのです。そうなった時、彼らはどの位置に立つのでしょう。殺される側か?殺す側か?殺させる側か?
5月28日付けの朝日新聞の俳壇、歌壇より気になった句や歌を紹介します。
◆朝日俳壇
◇原子炉の全て止まりぬこどもの日(東京都・吉竹純:長谷川櫂/大串章選)
作品は類型句が山とあるよ
うに思います。そんな中でこの句が入選、お二人の選に入ったことはどこが類型句と違うところなのでしょう?
北海道電力の泊原発3号機が定期検査のために5月5日止まりました。これで54基の原発の全てが止まりました。いま原子力に頼らない生活が二十数日続い
ています。原発の発電する電力に30%も頼っているなんて大嘘だったのです。
◇沖縄のながき従属また梅雨に(岡山市・今井操庵:長谷川櫂選)
「沖縄のながき従属」は今も続きます。解かれる見込みもないままに。
沖縄は「復帰」後もアメリカ軍基地があり、アメリカ軍兵士による犯罪も絶えません。
沖縄だけでなく、日本がアメリカから独立していないのです。日米安保条約という不平等条約を一日も早く破棄しなければ真の独立は得られません。
「日本国憲法はアメリカから押し付けられた憲法だから自主憲法を」という国会議員の多くが日米安保堅持、対米従属的行動をするのは何故でしょう?
◇沖縄の梅雨荒きことかの年も(沖縄県国頭村・和田静子:長谷川櫂選)
「沖縄戦」は1945年3月から6月までの沖縄の梅雨の時期と同じなのですね。
砲弾が鉄の雨のように降り、焼き殺され、銃弾に撃たれ、自ら命を絶った人のことを思う時、戦争とは軍隊とは一体誰のために行われたのかを考えずにおられ
ません。
◇全容を見せし白山夏立てり(金沢市・今村征一:稲畑汀子選)
女性的な山容の白山は金沢市内からも望めるでしょう。
高校になって初めて3000メートル級の山に登ったのは、山岳部の顧問だった金沢大学山岳部OBに連れられて登った白山(2,702m)でした。
もう一度登りたいと思いますが、老い過ぎましたか。
◇短夜や産む者もなき汗臭さ(神戸市・豊原清明:金子兜太選)
一読では。かっての農業を営んでいて米や麦、薯に豆と生産していたが、今は働き手もいなくなったという歌かと思いました。選者によると「出産の人のいな
い産院の汗臭い停滞感。消費ばかりの世に似たり」と評されているように作者は産科の医者であるらしい。17文字以外の情報を持つものと持たずに鑑賞するも
のとは感じ方が違うものです。
◇フクシマの蝶がモスラになる悪夢(八王子市・樋口雄二:金子兜太選)
悪夢ではないようです。放射能の影響で突然変異する生物が現れるかもしれません。
モスラとなって人類を救って欲しい。怪獣モスラは善?悪?
◆朝日歌壇
◇セメント町硫酸町の名を残し町も工場も消えて久しき(山陽小野田市・淺上薫風:馬場あき子選)
企業城下町に残る企業縁の町名は企業が去ってからはただ寂しいだけです。
山陽小野田市には有帆(ありほ)、神帆(かみほ)、後潟(うしろがた)、烏帽子岩(えぼしいわ)、叶松(かのうまつ)などと風情ある町名がたくさんある
のに、片や歌のようにセメント、硫酸(りゅうさん)があります。昔の町名に大工町、魚屋町などがあるのと同じなのでしょうか?企業城下町の最たるものはト
ヨタの豊田市、大阪府泉佐野市が市の名前を売り出したのも笑っていられません。
町外れに鋳物工場ができるという時に「住所を○○町字鋳物に」といった騒動がありました。当時、町役場の下級吏員だった父が猛烈に反対していたことを思
い出しました。既に近隣に「鋳物師(いもじ)」という古い地名がありました。
◇原発の世に千の御手差し延べて立木観音の深きまなざし(福島市・美原凍子:高野公彦選)
若輩浅学の身では未だに御仏の眼差しに愛を感じることはありませんが、そんな日が来るのでしょうか?
モスラが救ってくれるのか、千手観音が救ってくれるのか、モスラなら呼ばねばならす、御仏なら祈らねばなりません。
美原凍子さんに関連する記事がありました。朝日新聞の福島県版に「みつばちの目」というコラムの4月13日付けに「2度目の故郷喪失」で<戻れない道のかなたに一本の白樺(しらかば)の木と風の棲(す)む家>という美原さん
の歌が紹介、美原さんの人生の一端が書かれていました。福島出身の美原さんは30代で結婚のため夕張の炭鉱長屋で暮らし初め、夫の死後、雪下ろしもままな
らずに故郷福島に戻られたとのこと。夕張は財政破綻の町となり、福島は放射能で汚された町となりました。
滋賀の生まれの私には立木観音と言えば瀬田川下流の立木観音を思い浮かべますが、福島の美原さんには福島県会津坂下町の立木観音堂のことでしょう。観音堂の本尊
は十一面千手観音だそうです。左のリンクに観音像の写真がありますが、お顔ははっきりと見えませんでした。
◇ラーメン屋の香りが好きなつばくろめ来て早々に巣をつくろへり(八王子市・瀧上裕幸:高野公彦選)
ラーメンの匂い好きの燕がいるのか、燕に臭覚があるのか知りませんが、燕の好きな軒先があるように思います。貧しい家の軒先にも富める家の軒先にも営巣
するのですから。
◇「どうしろって言うんだよ」と吐き捨てるそれを考えてほしかったずっと(東京都・上田結香:高野公彦選)
上田結香さんの歌には物語がある。若くて利発で多感で都会的な女性の物語がある。今までに何首か取り上げてきた歌を羅列すると掌篇がいくつか書けそうな
気がします。(才能があれば)
<思い出など聞いてやらない私もう脇役人生など歩かない>
<「なぜ家に遊びに来ない?」と言う人よそれがわからない人だからだよ>
<物っ
てさ考えてみたら不思議だね愛は終わっても指輪ここにある>
<思い出の沿線にまだ住んでいる君をさらって銀河鉄道>
<休み
中渋谷などに行かぬよう」そこは私のふる里ですけど>
<こんな日に出て来てくれる友がいてロシア料理屋の窓に降る雪>
◇耳栓でプールの喧騒かき消してさあ一匹の魚になろう(大和市・若宮裕子:高野公彦選)
先日、若い人と一緒にサイクリングをしましたが、「若い」というだけですばらしいことです。若さを大切に生きて欲しいと願います。
◇火の加減しなかったのかと火葬場の職員に問う母の骨ぼろぼろ(平塚市・西一村:高野公彦選)
職員を問い詰めるほどに母上の遺骨はぼろぼろだった。病と闘ってこられたのでしょうね。
◇雨の日の池上線のほの暗しドアにもたれて思い出す歌(仙台市・江川森歩:永田和宏選)
青春の思い出の歌は誰にもあるようです。甘く、酸っぱく、苦い思い出の歌。
西島三恵子さんの「池上線」 ♪古い電車のドアのそば、、いい歌ですね。チェウニさんの「池上線」も味があります。
◇わかってる病気がそれを言わせてるでもね母さん辛いよ私(広島市・井上雅世:永田和宏選)
哀しいですね、結句の「辛いよ私」が辛い。
◇震災からお前は何か変わったかと聞かれて窮す変わりようもなし(平塚市・西一村:永田和宏選)
変わりようもありませんが、学んだことは多かったようです。例えば政治家は明らかなウソを吐くなど。専門家、有識者は学問の為にではなく金のために発言
するなどと。
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