12/10/29 朝日俳壇、歌壇より
臨時国会が始まりました。野田首相の所信表明演説(文字おこし:http://www.twitlonger.com/show/jqhqbc)
は「今日より明日は必ず良くなる」などとペラペラの薄っぺらいものでした。
人は自分にないものを欲して発言するのでしょうか?スピーチライターは野田政権がどんな政権か、何をしてきたのかを知った上での作文をしたのでしょう
か。
「明日への責任・・・」「明日への挑戦・・・」「明日の安心」とうんざりするほど(33回も)出てきます。とりわけ「明日への責任」というフレーズは
20回も使われています。これは「明日のことを責任をとらない」と同義と思うのは根性が曲がっているのでしょうか?
29日付けの朝日新聞の俳壇、歌壇
より気になった句や歌を紹介します。
◆朝日俳壇
◇頻尿の月の明かりも物悲し(高岡市・野尻徹治:金子兜太選)
加齢とともに尿の回数も増えてきます。小便に起きて月明かりに照らされた縁を見るなんて風情があることです。集合住宅では望むことはできません。
◇春眠に勝る秋眠ありしかも(三木市・酒井霞甫:金子兜太選)
この頃、秋眠にハマっております。春眠は若者のもの、秋眠は老人のものとしたいものです。
◇彼岸花陵辱と言ふ歴史あり(和歌山市・佐武次郎:金子兜太選)
句意を間違えているかも知れません。
先日の沖縄の強姦事件だけでなく、女性を始めとする弱者に戦争という最大の暴力に陵辱されているのではないでしょうか。
◇松茸は裂くべし酒は二合まで(青梅市・市川山猿:長谷川櫂選)
酒呑みは二合などと言いながら、美味しいいあて(肴)があるとついつい酒が進むものです。
ところで福島産や東北産の茸は放射能に汚染されていて食べない方が良いかとも思います。庶民は中国産などの安い松茸で我慢しましょう。
◇結局は百日草も枯れにけり(安城市・稲垣雄二:長谷川櫂選)
こういう句がいいですね。百日草と言えどもいずれは枯れる運命です。時実新子さんが「まだ咲いている
夾竹桃の馬鹿が」と詠んだ夾竹桃だってもう咲いていない。
命あるものはやがて死ぬ、石原だって、橋下だって、金持ちだって、貧乏人だってやがて死ぬ。身一つで産まれてきた時と同じように身一つで死んでいくので
す。
◇誇らかな子のてのひらのばつたかな(大津市・高村哲雄:大串章選)
選者は「てのひらのばったを得意げに見せている子」と評されていますが、しっくりときません。
誇らしく見せたいバッタは生きていなければならないように思う。その辺を元気に跳び跳ねていたのを掴まえたから誇らしいのではないでしょうか?
ところがそのバッタは、手のひらにちょこんと乗っている。そんなはずはないと思う。だから、両の手で包むように持っているバッタを見せ
るのではないでしょうか?
◇病院を終の住み処に冬近し(大村市・小谷一夫:大串章選)
厚労省の統計では自宅で死亡するひとは1割強、ほとんどが病院などで死んでいます。
この句のように、ある年齢に達しての入院は病院を終の棲家と思うのが妥当な考えなのでしょう?
◆朝日歌壇
◇ひと駅は乗り越すつもり我が肩に程好き重さ置かるるゆゑに(多摩市・谷澤紀男:永田和宏選)
この歌のような光景を先日のラジオ番組でも投稿を紹介していました。居眠りしている隣の客に肩を貸すことを良しとするひと、しない人がいるようです。私
もよしとしませんが。
選者は「妙齢の女性の頭が作者の肩に、という情景か。ひと駅で済めばいいが」と評されていますが、隣の客が妙齢でもなく、女性でもなかったとした
ら・・・。
◇できるだけあなたの側で過ごしたいあなたがあなたでいられるように(佐倉市・山田明子:永田和宏選)
難しい歌です。
女性が側にいることで「あなたがあなたでいられるように」とは。無粋なものには分かりようもありません。
◇字余りが効果を生みし短歌(うた)もあるそんな老後でゐたい私(筑紫野市・岩石敏子:永田和宏選)
字余りの人生、確かに私の今も字余りか?ちょっとひっかかる字余りでいたいと思う。
◇梨食めば梨の音して身の内に梨染み透るひとりの夜を(福島市・美原凍子:馬場あき子選)
久しぶりに凍子さんの歌です。
「ナシハメバ、ナシノオトシテ、ミノウチニ、ナシシミトオル、ヒトリノヨルヲ」とリズムがある歌です。
酒飲みの私には、歯に染み透る酒と過ごす夜長です。
◇わが詠みし短歌(うた)を待つ人居てくれる何て幸運(ラッキー)な奴なのだ俺(アメリカ・郷隼人:佐佐木幸綱選)
懐かしい名前を見つけました。カリフォルニアで獄につながれている朝日歌壇の常連入選者です。
選者は「昨年四月以来の久々の郷隼人氏の投稿歌である。待望する声がアメリカの獄中にも届いたのだろう。新聞歌壇の原点を思い出させる一首」と評されて
います。
◇飲み会の時間きみには早く過ぎ待つわたしには進まぬ時計(武蔵野市・平田マキ:佐佐木幸綱選)
女性でも男性でも人を待つ時間は長いものです。酒席の人の時間は早い。
◇お社の横手の靴の修理店閉じてなお三叉路に灯ともす(国立市・鍛冶勝:高野公彦選)
きっと、職人である主人が老いて廃業されたのでしょう。物を修理して使うことは節約(エコノミー)でもあり、環境保護(エコロジー)でもあります。こう
いう町の職人を大事にして若者が職人に憧れ後継が絶えないような社会にしなければなりません。
私は禁煙を始めて1ヶ月、3ヶ月などの節目に自分を激励するために褒美をと思いウォーキングシューズを買いました。http://yoshim.web.fc2.com/zanjitsu_041202.html
もう、3代目になりますが2足の靴の底を張替たり、踵を補修剤で修復したりして履いています。先日も何回目かの修復をしました。エコなものを買うより、使い続ける方
がエコですよ。
◇聞き流し見ぬふりをして生きたきを悲しみはしかと足首つかむ(神奈川県・神野志安代:高野公彦選)
鋭い。他人の悲しみを見て見ぬ振りをしてやり過ごすことはできます。作者は心優しいから足首を掴まれてしまったのでしょう。
自分が経験していない他人の痛みを簡単に分かり合えるものではありません。それを分かろうとするには想像力が必要なのです。ジョンが歌うように。http://www.youtube.com/watch?v=DCX3ZNDZAwY
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