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14/04/24 寮 美千子編「空が青いから白をえらんだのです ―奈良少年刑務所詩集」

 先日(4月22 日)の文化放送の「大竹まことゴー ルデンラジオ!」でこんなことが放送されているのをPodcastで聴きました。

 内容は、大竹まことさんの鞄に入っていた
空 が青いから白をえらんだのです ―奈良少年刑務所詩集」 という本が話題でした。
 この本は奈良在住の童話作家・寮美千子(wikipedia)さんが奈良少年刑務所の矯正教育を担当された時に受刑者の初年たちの生み出した詩集で す。

 出演者の方が一編ずつ、好みの詩を紹介されていました。
 まずは、真鍋かをりさんの選ばれたものから。

青バッジ

 きょうの空は 一面のあでやかな青
 この空を見てみんなは
 何を思い
 何をするのだろう
 ぼく自身は 今日の空のように
 バッジの色は青
 いつまでも青バッジでいられたら
 気分は青空

【編者の解説】
 受刑者の胸には、バッジがついています。
 生活態度次第で、黒、赤、青、青、黄色、白、と格があがっていきます。
 上に行けば行くほど、刑務所内での自由度があがります。
 この日、Iくんは、赤からやっと青になることができました。
 Iくんは、それがうれしくてたまりません。
 でも、口論などの問題行動を起こすと、すぐに格下げ。
 いつまでも青バッジでいられたら、という願いは、
 ケンカしたくても、ぐっと我慢をする助けになります。
 Iくん、がんばれ、つぎは黄色だよ。

 青バッジを得てすぐの喜びの言葉でしょう。未だ未だ黄色まで意識がいかないのだろう。素直な感情の表現。

 次にアナウンサーの太田英明さん。

おかあさん

 あ だれかくる
 おんなのひとだ!
 だれかの おかあさんかな?
 もしかして・・・・・・ぼくのおかあさん?

 きれいなひとだなぁ
 ぼくのおかあさんも きれいかな

 しごとは なにをしているのかな
 やさしくて ふわふわなのかな

 どんなこえかな
 ぼくに にてるのかな

 でも・・・・・・

 どんなかおをしてても
 ふとってても
 いじわるでも
 はたらいていなくても
 ゴツゴツしていても
 おとこみたいなこえでも
 おかあさんは おかあさん

 いちどでいいから
 かおをみせてよ おかあさん
 だきしめてよ おかあさん
 いちどでいいから
 ぼくのなまえを よんでよ おかあさん

 そしたら
 ぼくから つたえたいことがあるんだ

 「うんでくれて ありがとう。」

 この少年は母の顔を見たことがないのだろうか?読んでいると切なくなる。

 最後は大竹まことさん。
 

ゆめ

 ぼくのゆめは・・・・・・・・・

【編者の解説】
 こんな作品、見たことがありません。
 「詩」の概念に、揺さぶりをかけられたような気がしました。
 「ゆめは・・・・・・」といったまま絶句してしまった彼の心。
 表現しないといないことで、こちらにより強く問いかけてきます。

 作者のFくんは重い罪を犯して、長い懲役で服役中。
 この詩を書いて、教室で朗読をすると、
 どうしても書けなかった「・・・・・・」の部分を、自ら語りだしました。
 「ぼく、競艇の選手になりたいんです。
 小さいころ、よくおとうさんに連れて行ってもらって、好きになりました。
 試験を受けたんですが、落ちてしまいました。出所したら、また受けたいです」
 世間の風は冷たく、差別もあり、悪い仲間もいます。
 どんな未来が、Fくんを待ちうけているのでしょう。
 あたたかく受けいれる社会であってほしいと、心から願います。

 書きかけても、話しかけても次の言葉が見つからないもどかしさ。夢はあってもいろんな制約を考えると言い出せないのだろう。

 そして私からの一編は。

誓い

 幼い頃 ぼくは心に誓った
 母さんを守ろうと
 いろんな人たちから
 とくに父さんから

 小さなぼくは 父さんに向かっていった
 その攻撃の矛先を ぼくに向けたくて

 けれども どうすることもできず
 殴られる母さんの体の下 ぼくは泣いた
 なにもできない自分が悔しくて

 母さんは 殴られても殴られても じっと耐え
 涙もみせず やさしい声で ぼくに言った
 「だいじょうぶ ずぐに恐くなくなるからね」

 いつか強くなって ぼくが母さんを守るんだ
 って思ったのに ごめん 遅すぎたね
 母さんは 天国へ逝(い)ってしまった

 やっと 強くなれたよ
 だから この力で守っていくよ
 これからは ぼくの大切な人たちを

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