14/11/04 朝日俳壇、歌壇より
先週の朝日歌壇で
紹介した水辺あおさんの作品<過失者を隙なく責むる口舌より痛みを分かつ沈黙が欲し>を紹介しましたが、何
か近年、他人に不寛容になってきていると思うことが多々あります。
電車内での押した押さないの小競り合い、子どもの鳴き声などへの苦情、幼稚園や保育園の近隣への建設反対等など、キリがないほどです。
自分に寛容な人ほど、他人には不寛容なような気がします。
さて、前回紹介した白井聡さんの「永続敗戦論」を読みかけています。
ぼんやりした頭には少々手ごわい本でした。今読んでいる第一章では3・11の福島の原発事故への国(政府)の対応を大江健三郎さんの「私らは侮辱のなか
に生きている」という言葉をひいて書かれています。
三度ほど読み返さないと紹介できないでしょう。ぼちぼちと読むことにしましょう。
11月3日付けの
朝日新聞の俳壇、歌壇から気になった句や歌を紹介します。
◆朝日俳壇
◇人去つて村中の柿熟れしまま(東京都・我妻勝美:大串章選)
人に捨てられた村や田んぼがどれほどあるのだろうか。
私のふるさとは人は住んでいるのに熟れた柿は誰も取らずに気に実ったままです。
◇秋晴の空気やつぱり旨かりし(芦屋市・田中節夫:稲畑汀子選)
最近、積極的にウォーキングをするようになって秋の空気の旨さに気がつきました。
◇秋冷や一票投じ彷徨へる(相馬市・鹿又一武:金子兜太選)
福島県知事選挙でしょうか?
私など毎度のこと、町会議員の選挙以外では当選するはずもない候補者に一票を投じています。
◇秋鹿やとつとと呆けろとつととな(土浦市・茂手木皓介:金子兜太選)
呆けてしまえば良いのでしょうが、自分で呆けていくのが分かっているのはつらいだろうなあ。
◇生き難き世間に生きて温め酒(長崎市・田中正和:長谷川櫂選)
温め酒もよし、冷もよし、熱燗なおよし。
◆朝日歌壇
◇右へ向く国にはびこる排外思想「帰れ」「殺せ」の声まで聞こゆ(大阪府・金忠亀:高野公彦選)
金さんの作品は久しぶりのよう。
「帰れ」「殺せ」の言葉の向けられた当事者だけに、まさに差別主義者、ヘイトスピーチの被害者ですから言い尽くせないことがあるでしょう。
◇バタバタと引越し屋さんがとりあえず配置した家具の部屋でもう五年(東京都・上田結香:高野公彦選)
こういうふうに生活を切り取って歌にされるのですね。
私も何年か前に家具を入れた部屋で、何年か前の配置のままで過ごしています。
◇「平和賞」平和を祝う賞でなく平和を願う賞なのだなぁ(横浜市・中の麻保:永田和宏/佐佐木幸綱選)
佐藤栄作の受賞はどうだったのでしょう。
◇三本立て映画見てから四十円のラーメン食べた青春時代(沼津市・岩城英雄:永田和宏選)
私の中高生の頃は、田舎町にも映画館が3館もあり1館は東映のチャンバラの三本立てだったような。
そして、黄色い麺に和風の出汁のすそば(かけそば)十五円だった。ネギだけの具でも食べられることが嬉しかった。
◇大阪に遊びに来ると言ったのにカレイを煮付けて帰っていく母(大阪市・安良田梨湖:馬場あき子選)
母親とはそのようなものなんだろうと。我が母も顔を見るたびに何かをもって帰らせようとします。
◇これからの農を語れる壇上の人の白き手コップをつかむ(笠間市・北沢錨:佐佐木幸綱選)
日に焼けた無骨な手を持つ人が脳を説けば信憑性は高くなるのでしょうが。
大いなる皮肉。
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